カイラード⑪
第一王子、第二王子の失脚に伴い変わって王太子に指名されたのは大公家の息子だった。 黄金色の髪を持つこの男は実は、国王が結婚前に侍女に手を出し作らせてしまった庶子だった。その侍女は大公家の縁のある貴族の令嬢だったにもかかわらずほんの隙をついて王に手を出されてしまったのだ。そのたった1回で孕んでしまったため、父からも母からもいらぬ子として消されそうになっていたところを大公家が引き取って養子として育てていたのだ。
カイラードは学園に入る前、親戚の兄のように思っていた彼から理不尽な喧嘩を吹っ掛けられその事実を知った。けどユーリスはそのことは知らずただの親戚だと見下していた。
側妃が正妃から降りたのも自分との婚約中に真実の愛という子爵令嬢を侍らしておきながら平然と庶子をつくるような男に尽くすのが嫌になったからだった。
そんな男のため苦労が伴う王妃業などやってられるかとその座を王妃に熨斗を付けて押し付けたのだ。まあ王妃は真実の愛が勝ったのだと思っていそうだが。
カイラードがあの日会いに行った一人の男が実はこの人物だった。
「おい、聞いてないぞ」
「まあ、いいじゃないか。君なら優秀だし、きっと良い国王になれるよ」
「あのくそ国王に一泡吹かせたくないか?なーんて言葉に騙されたぜ」
あの断罪劇で側近たちの後ろでカイラードに似た黄金色の髪をなびかせて立っていたのは、何を隠そうこの彼だ。
その結果、王太子なんて微塵もやる気のなかった彼が立太子することになってしまったのだ。彼からすればカイラードに対して苦言を申してもばちは当たらないだろう。
「ま、あのくそじじいが俺を王太子に任命してきたときは心底いやそうな顔してたけど、それを見ただけでも溜飲が下がったわ」
そういって異母兄は痛快に笑った。
そう、国王は皮肉にもいらない子として始末しようとした息子に王座を明け渡す羽目になったのだ。これもまた因果応報というべきか。
そんな彼にカイラードは一言アドバイスをする。
「困ったことがあればユーリスを使えばいいよ」
「ユーリスか…、そうだな、あれはまだ使える駒だ。そうするよ」
自身を見下していた男を駒扱いできる立場になったことで異母兄は上機嫌になった。
結局、王太子簒奪に失敗したユーリスは、王宮に残ることもできず、さりとて実母の実家である公爵家にも、アルティエの侯爵家にもすでに正当な嫡男がいたため、居場所を失った。
そんな彼にあてがわれたのは、かつてラステロウ侯爵家が形ばかり所有していた領地のない子爵位。
それを手に念願だったアルティエと婚約した。卒業したらすぐ籍を入れる手はずになっている。
最愛の女をその腕に抱いたユーリスは、さぞ満足そうな顔をしていたという。だが…
(あれだけ純王族としてちやほやされて生きてきたプライドの高いあのアルティエが、たかが子爵夫人に満足できるのか?)
そう思うがもはやカイラードの気にするところではなかった。
まあ、あの観衆の中で披露された『真実の愛』だ。またお互いの親もそれ以外の道はないとしている。破棄することはできないだろう。
「さてと。じゃあ、私はもう行くよ」
「あ、もう行くのか? しかし、お前のお姫様は本当にお前のことを待ってんのかよ」
「それを聞かれると、正直つらいところだけどね……。待っててくれなんてあの時は言えなかったから…」
異母兄の容赦ない言葉に、カイラードの眉がハの字に下がる。
「彼女はかわいいし、性格もいいし、魅力的だから…、あーやばい、早く行かないと他の男に取られそうだ」
「ククッ、もし玉砕したら慰めてやるよ。しかしお前、チョロいんだからあんまり転がされんなよ?」
「……チョロいって、人聞きが悪いな」
「だってそうだろ。初恋があのプライドお化けの性悪女で、その次が甘言しか言わない罠女で、その次が傷ついた心を包み込んでくれた癒し系とくれば、男としてチョロいとしか言えないだろ」
「そうだけどさ……」
的確すぎる指摘に、カイラードはぐうの音も出ず、子供のように小さく口を尖らせた。
それを見た異母兄は腹を抱えて笑った。
異母兄がひとしきり笑い終えるのを待って、カイラードは気を取り直して王宮の扉を後にした。
後2話で終わります。明日と明後日は1話づつ投稿します。
◆ちなみに異母兄君の裏話
異母兄に母は酔った国王に真実の愛の王妃(当時は子爵令嬢)と間違われてうっかり手を出されてしまいました。かわいそうな方です。
国王はその時のことをうっすらとしか覚えておらず、抵抗されてもいやよいやよも好きのうちと思い
無理やり…です。異母兄の母は当時婚約間近の恋人がいましたが国王の御子がいるとわかり先王が無理やり産ませました。そのせいで異母兄の母は異母兄を産んで発狂しました。母親が異母兄をコロコロしそうになりこりゃやばいと親子を引き離し、母親は恋人のもとへ嫁がせ今は貴族社会にはいません。
(心病んでるから夫婦で領地に下がってます。多分今は幸せなはず)
国王は自分の失態を認められず異母兄を自分の子じゃないと言い張り、こっちも異母兄をコロコロしちゃおうとしますが先代の国王、王妃に阻止されます。
けど王太子のいうこと聞いてやっちゃいそうなやつがいたので、御子を王宮では守れないかもしれないと大公にお願いします。
大公も自分の知っている娘の子なのと、当日エスコートしていたのが自分で、目を離したすきに手を出されてしまったので負い目があり引き受けます。
大公は先代国王の年の離れた弟です(王弟殿下)なのでカイラードとは従叔父になるのかな?
その辺はよくわからないので親戚としました。
彼は実はユーリスよりも政治的素質があり頭でっかちのユーリス君より国王向き←カイラードは仲がいいのでなんとなくそのことに気づいてます。
ちなみに外見が一番似ているのも異母兄。国王にとっては自分の失態が目の前にさらされ続ける罰…




