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第64話 「それぞれの個性と、“ぶつかる瞬間”」


朝・いつも通りのはずが


「それ、ちがう!」


⸻


珍しく、桜(さくら)が少し強めに声を出した。


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桃佳(ももか)が持っていたおもちゃを引っ張る。


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「ももかの!」


⸻


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すぐにぶつかる二人。


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颯(はやて)はその間に立つ。


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(どうする……)


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⸻


変わったはずの関係


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これまでは、どこかで調整されていた。


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でも今日は違う。


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どちらも譲らない。


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衝突


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「かして!」


「やだ!」


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お互いに手を離さない。


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少しずつ、声が大きくなる。


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颯の選択


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颯が口を開く。


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「……いっしょに――」


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言いかけて、止まる。


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(今回は、違う)


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親の介入


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桃華がゆっくり近づく。


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すぐには止めない。


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まず、二人を見る。


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「どうしたの?」


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桜が言う。


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「さくらが、つかってた」


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桃佳がすぐに言い返す。


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「ちがう!ももか!」


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“それぞれの主張”


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どちらも、自分が正しいと思っている。


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桃華は頷く。


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「そっか」


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否定しない。


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見える化


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「じゃあ、順番に話して」


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桜から聞く。


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次に桃佳。


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二人とも、少しずつ落ち着いて話し始める。


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颯の役割


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颯は横で聞いている。


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今回は、無理に入らない。


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“見守る”という選択。


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判断ではなく整理


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桃華がまとめる。


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「どっちも使いたかったんだね」


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二人は黙って頷く。


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解決の選択


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「どうする?」


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すぐに答えは出ない。


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少しの沈黙。


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小さな妥協


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桜が言う。


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「……あとで、いい」


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桃佳が少し考えて、


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「……いま、ももか」


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バランス


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桃華は頷く。


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「じゃあ、今は桃佳」


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「そのあと桜ね」


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二人とも納得する。


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颯の理解


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颯はその様子を見て思う。


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(全部、自分がやらなくていい)


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“関わる”だけが役割じゃない。


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夜・振り返り


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子どもたちが寝たあと。


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桃華が言う。


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「今日、よかったね」


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颯太が頷く。


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「ちゃんとぶつかった」


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“ぶつかる意味”


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桃華は静かに言う。


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「ぶつからないと分からないこともある」


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「我慢だけじゃ育たない」


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颯について


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颯太が続ける。


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「颯も分かってきてるな」


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「引く時と、出る時」


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締め


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それぞれの個性。


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ぶつかるからこそ、


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理解できる。


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桃華が小さく言う。


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「いい関係になってきたね」


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颯太は頷く。


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⸻


「これからもっと変わるぞ」


⸻    


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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