第63話 「兄妹の関係と、“それぞれの役割”」
朝・三人の距離感
「これ、ぼくの!」
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桃佳が元気に声を上げる。
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その隣で、桜は少し控えめに手を伸ばす。
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颯はその様子を見ている。
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以前なら、何も言わずに譲っていた。
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でも――
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小さな変化
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「……ちょっとまって」
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颯が口を開く。
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桃佳が振り向く。
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「さくらも、つかいたいって」
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その一言。
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“自分のため”ではなく、
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“誰かのため”の言葉。
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桜の反応
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桜は少し驚く。
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「……いいの?」
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颯は頷く。
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「いっしょにやればいい」
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桃佳の選択
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桃佳は少し考える。
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「……じゃあ、いっしょ」
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三人で一つのおもちゃ。
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少し窮屈。
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でも、楽しそうに笑っている。
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親の視点
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その様子を見ていた桜井桃華。
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「見た?」
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水上颯太に小声で言う。
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颯太は頷く。
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「ああ」
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“役割”の芽生え
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桃華は静かに言う。
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「颯、変わってきたね」
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颯太も同意する。
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「ただ我慢するだけじゃなくなった」
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「間に入れるようになってる」
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午前・保育園でも
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先生が話す。
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「最近、颯くんが間に入ってくれることがあって」
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「トラブルになりそうな時に、声をかけてくれるんです」
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桃華は少し驚く。
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(そんなことまで)
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“長男”という立場
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颯太は帰り道で言う。
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「長男って、自然とそうなるんだよな」
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桃華は少し考える。
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「でも、背負わせすぎないようにしないと」
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夜・三人のやり取り
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おもちゃの片付け。
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桃佳が言う。
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「これ、いや!」
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桜は困った顔。
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颯が言う。
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「じゃあ、ぼくやる」
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すぐに手を出す。
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バランス
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それを見た桃華が止める。
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「颯」
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颯が振り向く。
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「それ、優しいね」
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「でもね」
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少しだけ目線を合わせる。
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「桃佳も、自分でやる練習しよう」
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役割の修正
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桃佳を見る。
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「一緒にやろ?」
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桃佳は少し不満そうだが――
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「……うん」
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手を動かす。
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理解
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颯はその様子を見ている。
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“全部やる”のが正解じゃない。
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“手伝う”と“任せる”の違い。
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締め
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子どもたちが眠ったあと。
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桃華が言う。
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「役割って、自然にできてくるね」
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颯太は頷く。
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「でも調整は必要だな」
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桃華は笑う。
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「またそれ」
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最後
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三人それぞれの個性。
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そして、その関係性。
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家族は、“役割”を持ちながら、
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少しずつ形を作っていく。
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