表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/18

第8話「初めてのデート、そして小さな事件」


「変装、どうする?」


待ち合わせ前日の夜。


通話越しに、桜井桃華が少し楽しそうに言った。



「帽子とマスクは必須かな」


「あとメガネも」



「そんなに必要?」


「必要」


即答だった。



「私、一応“バレたらまずい人”だからね?」



少し冗談っぽく言うけど、その言葉の重さは知っている。



「……分かってる」



「でも」


彼女が少しだけ声のトーンを変える。



「ちゃんとデートしたい」



その一言に、胸が熱くなる。



「俺も」



短い言葉。


でも、それで十分だった。



当日


休日の昼。


人通りの多いショッピングモール。



「……颯太くん?」


小さな声。



振り向くと――



そこにいたのは、帽子にマスク、そして伊達メガネをかけた女性。



でも――



「桃華?」



「正解」



少しだけ笑う。


その目元だけで、分かる。



「……なんか、スパイみたいだな」



「でしょ?」



「でも、ちょっと楽しい」



そう言って、彼女は隣に並んだ。



ほんの少しの距離。


触れそうで触れない。



「どうする?」



「映画とか?」



「いいね」



普通の会話。


普通の選択。



それが、何より特別だった。



映画館


暗い館内。


並んで座る二人。



上映が始まっても、内容はあまり頭に入らなかった。



隣にいる存在が、近すぎて。



「……ねえ」


小さな声。



「うん?」



「手、貸して」



一瞬、驚く。



でも、そっと差し出す。



すると――



指先が、軽く触れる。



そして、少しずつ――



繋がる。



(……)



心臓が、やけにうるさい。



でも彼女は、前を見たまま。



「これくらいなら、バレないよね」



小さく囁く。



「たぶん」



それだけのやり取り。



でも――



それだけで、十分すぎた。



映画後


フードコート。


人の多い場所。



「こういうとこ来るの、久しぶりかも」


桃華が周りを見渡しながら言う。



「普段は来れない?」



「うん、ほぼ無理」



少しだけ苦笑する。



「だから今日、ちょっと嬉しい」



その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。



「もっと色々行こう」



「……うん」



その時だった。



「あれ?」



後ろから声。



二人同時に、体が固まる。



「もしかして……」



振り向くと、そこにいたのは――



大学の同級生。



「颯太じゃん!」



(やばい)



心臓が、一気に跳ね上がる。



「こんなとこで何してんの?」



視線が、隣の桃華に向く。



「え、彼女?」



その瞬間。



桃華が、一歩前に出た。



「違います」



落ち着いた声。



「サークルの先輩で、ちょっと相談乗ってもらってて」



自然すぎる言い訳。



「へぇ〜」


同級生は少し疑うような目をする。



「まあいいや。じゃ、また大学でな」



そう言って去っていく。



数秒。



二人とも、動けなかった。



「……びっくりした」



桃華が、小さく息を吐く。



「ごめん……」



「なんで謝るの?」



少しだけ笑う。



「夫婦でしょ?」



その言葉に、少しだけ救われる。



「こういうのも、一緒に乗り越えるんだよ」



その一言で、さっきの緊張が少しだけ和らいだ。



帰り道


少し人の少ない通り。



「ねえ」



「うん?」



「今日、楽しかった?」



その問いに、迷う必要はなかった。



「めちゃくちゃ楽しかった」



彼女は、少しだけ照れたように笑った。



「私も」



そして――



「また行こうね」



「絶対」



そう約束した。



“普通のデート”。



それは、簡単なようで。



この二人にとっては、とても特別な時間だった。    



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ