第53話「それぞれの成長と、“すれ違う時間”」
朝・分かれていく動線
「……行くぞ」
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水上颯太はリュックを背負いながら声をかける。
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颯、桜、桃佳は保育園へ。
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桃華は仕事の準備。
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颯太は大学へ。
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完全に“同時に同じ場所にいる生活”ではなくなっていた。
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「いってらっしゃい」
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桃華が玄関で言う。
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「そっちもな」
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颯太が軽く手を上げる。
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午前・それぞれの時間
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颯太は講義室。
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ノートを取りながらも、ふと考える。
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(今ごろ保育園か)
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一方、桃華。
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スタジオでの軽い打ち合わせ。
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「スケジュールはこのくらいで」
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マネージャーの岸田ほのかが言う。
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桃華は頷く。
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「はい」
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だが、その表情は少しだけ違う。
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“時間のズレ”
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昼。
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颯太は学食で一人。
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桃華は別の場所で軽く食事。
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同じ時間を共有していない。
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(今、何してるんだろ)
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そんな考えが、ふとよぎる。
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午後・ズレの実感
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颯太は帰り道、スマホを見る。
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桃華からのメッセージ。
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(今日は少し遅くなりそう)
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「……そっか」
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返信する。
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(了解。迎え行っとく)
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夕方・保育園
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颯太が一人で迎えに来る。
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三つ子はすぐに気づく。
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「今日はパパなんだね」
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先生が笑う。
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「はい」
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颯太も軽く笑う。
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家・一人の時間
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子どもたちを寝かしつける。
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リビングに戻る。
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静か。
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「……こういう日も増えるな」
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夜・帰宅
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玄関の音。
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「ただいま」
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桃華が帰ってくる。
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少し疲れた顔。
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「おかえり」
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颯太が迎える。
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“すれ違い”の会話
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桃華はソファに座る。
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「今日どうだった?」
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颯太は簡単に答える。
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「普通」
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逆に聞く。
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「そっちは?」
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桃華は少し考える。
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「……普通、かな」
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でもその“普通”は少し違う意味を持っていた。
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微妙な距離
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沈黙が少し流れる。
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同じ家にいるのに、
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“共有していない時間”が間にある。
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桃華がぽつりと言う。
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「なんかさ」
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「ちょっと距離できた感じするね」
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颯太は否定しない。
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「時間がズレてるからな」
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調整の必要性
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桃華は頷く。
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「これ、ちゃんと調整しないとダメだね」
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颯太も頷く。
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「崩れる前にやるか」
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夜の確認
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桃華は少しだけ笑う。
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「じゃあさ」
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「ちゃんと“二人の時間”も作ろう」
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颯太は即答する。
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「賛成」
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締め
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三つ子の寝息。
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静かな家。
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その中で、夫婦の距離もまた変化している。
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“家族”としては安定している。
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でも“夫婦”としては調整が必要。
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桃華が小さく言う。
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「次はそこだね」
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颯太は頷く。
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「だな」
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