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第54話「夫婦の時間と、“再び向き合う距離”」


夜・静かなリビング


三つ子が眠ったあと。



家の中は、久しぶりに“完全な静けさ”に包まれていた。



ソファに座る桜井桃華。



向かいに立つ水上颯太。




少しだけ、間が空く。




「……なあ」



颯太が口を開く。




桃華が顔を上げる。



「なに?」




颯太は少し迷ってから言う。



「今日、時間あるよな」




桃華は頷く。



「あるけど……どうしたの?」




颯太のお願い



颯太は少しだけ視線を外す。



そして、はっきりと言った。



「“斉藤もも”として、時間作ってくれないか」




一瞬、空気が止まる。




桃華の表情がわずかに固まる。




「……それ、本気で言ってる?」




颯太は頷く。



「本気」




桃華の迷い



桃華は視線を落とす。




「それって……仕事として?」




颯太は首を振る。



「違う」




「俺と、お前のために」




その言葉に、桃華は少しだけ黙る。




もう一つの願い



颯太は続ける。



「あと……」




少しだけ照れながら言う。



「二人で風呂、入らないか」




「その……ちゃんと向き合いたい」




桃華の決断



桃華はしばらく何も言わなかった。




“桜井桃華”としての自分。



“斉藤もも”としての自分。




その両方を、目の前の男は受け入れている。




「……ずるいね」



小さく呟く。




颯太が聞き返す。



「何が」




桃華は少し笑う。



「断りにくいお願いするところ」




そして、ゆっくり立ち上がる。




「分かった」




「やるからには……ちゃんとやる」




浴室



湯気が立ちこめる空間。



静かな水音。



互いの裸が見え合う。



二人きり。




最初は少し距離があった。




桃華が一歩近づく。




「こういうの、久しぶりだね」




颯太は小さく頷く。



「だな」




“役”ではない時間



桃華はふっと表情を変える。



“斉藤もも”としての空気を纏う。




でも、それは完全な“演技”ではない。




颯太はその違いに気づいていた。




「……無理してないか?」




桃華は首を振る。



「してない」




「今は、ちゃんとここにいる」




再接続



距離がゆっくり縮まる。




軽く触れる手。




そして、自然に重なる唇。



互いに裸になり、恥ずかしながらも桃華は…


“ 斉藤もも ” として颯斗にいつもテレビ撮影でしたいる姿で演技じゃなくて…


好きな気持ちを全部受け止めてももで受け止めた。




それは長くはない。



でも、確かに“夫婦としての確認”だった。




桃華が小さく息を吐く。



「……こういうの、必要だね」




颯太は頷く。



「だろ」




夜の整理



風呂から上がる。



リビングに戻る。




さっきまでの微妙な距離は、もうない。




桃華がソファに座りながら言う。



「ちゃんと戻った感じする」




颯太も隣に座る。



「最初から離れてはなかったけどな」




締め



三つの寝息。



変わらない日常。




でも、その中心にある二人の距離は、



確実に“再接続”されていた。




桃華が小さく言う。



「またズレたら、こうやって戻せばいいね」




颯太は頷く。



「それでいい」


⸻  


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