第46話「子どもの成長と、“親としての実感”」
朝・水上家
「……もう、3人とも動き回るようになったな」
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水上颯太はリビングを見ながら呟いた。
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三つ子――颯、桜、桃佳。
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ついこの前まで“泣いているだけ”だった存在が、
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今は手足を動かし、声を出し、互いに反応し合っている。
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「成長早いね」
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桜井桃華が微笑む。
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颯太は少し笑う。
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「一瞬で変わるな、子どもって」
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育児の完成度
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朝のルーティンは完全に安定していた。
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* ミルク
* 着替え
* 遊び時間
* 昼寝
* 片付け
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「もう戦争じゃないね」
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桃華が言う。
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颯太は頷く。
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「作業になってきた」
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阿利佐が笑う。
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「それが一番いいのよ」
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午前・変化の瞬間
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リビング。
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颯が初めてしっかりとした声を出す。
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「……あー」
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颯太が動きを止める。
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「今の聞いた?」
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桃華も目を見開く。
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「喋った?」
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桜と桃佳も反応して笑うように声を出す。
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空気が一瞬だけ変わる。
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“親としての実感”
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颯太はゆっくりしゃがむ。
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三人の前に手を出す。
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「……お前ら、ちゃんと生きてるな」
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桃華はその横で静かに見ている。
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「当たり前だけど、当たり前じゃない感じするね」
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颯太は頷く。
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「“自分の子ども”って実感って、こういう瞬間なんだな」
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午後・日常の延長
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買い物帰り。
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ベビーカーを押す颯太。
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桃華は横を歩く。
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通り過ぎる人がちらっと見る。
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でももう気にならない。
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「普通に見えるよね、私たち」
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桃華が言う。
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颯太は笑う。
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「もう普通だろ」
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夜・静かな時間
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子どもたちが寝る。
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リビングに静けさ。
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桃華はソファに座る。
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「ねえ」
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颯太が隣に座る。
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「ん?」
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桃華は少し笑う。
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「私、母親になれてる?」
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颯太は即答する。
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「なれてるに決まってる」
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「むしろやりすぎなくらいだろ」
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桃華は少し笑う。
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「それ褒めてる?」
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「褒めてる」
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“実感”の正体
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桃華は少し黙る。
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そしてぽつりと言う。
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「なんかさ」
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「前は“守られてる側”だったのに」
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「今は“守る側”にもなってる気がする」
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颯太は静かに頷く。
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「それが親だろ」
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変わった関係
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二人は少しだけ見つめ合う。
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もう“恋人”でも、“オタクと推し”でもない。
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“家族”という形に変わっている。
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桃華が小さく言う。
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「ちゃんとここまで来たね」
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颯太は頷く。
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「まだ途中だけどな」
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でもその声は穏やかだった。
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夜の締め
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三つの寝息。
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静かな家。
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その中心にいるのはもう、
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“問題を抱えた二人”ではない。
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“子どもを育てる家族”だった。
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