第37話「外の世界との再接続と、再び動き出す“斉藤もも”」
朝・水上家
静かなはずの朝だった。
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しかし、テレビをつけた瞬間――
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『速報です』
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画面いっぱいにテロップが出る。
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「人気AV女優・斉藤もも 活動復帰へ」
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「……は?」
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水上颯太が固まる。
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リビングに空気が一瞬止まる。
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桃華の手が、わずかに止まる。
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テレビ報道
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アナウンサーの声が続く。
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「体調不良により活動を休止していた斉藤ももさんが――」
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「本日、活動再開を発表しました」
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映像が切り替わる。
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公式発表文。
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インタビュー映像。
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画面に“斉藤もも”の名前が大きく表示される。
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SNS・同時多発
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スマホが一斉に鳴る。
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* X(旧Twitter)
* LINEニュース
* Yahooニュース
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すべて同じ話題。
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「え、復帰!?」
「ガチ!?」
「待ってた」
「引退じゃなかったの?」
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コメントが流れる速度が異常だった。
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数分後
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コメント数:30,000件超え
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さらに増え続ける。
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颯太はスマホを見たまま呟く。
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「……やば」
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桃華は静かに画面を見る。
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何も言わない。
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母・阿利佐
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「何これ……すごい騒ぎね」
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テレビを見ながら普通に言う。
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颯太は一瞬固まる。
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「……あ、うん」
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阿利佐は続ける。
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「有名な人なのね」
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桃華は小さく頷く。
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「……はい」
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(※もちろん“それ以上”は知らない)
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空気の違和感
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テレビでは騒がしい。
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SNSでは爆発的な拡散。
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ニュースは次々更新される。
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でもこの家の中だけは――
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静かだった。
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颯太がぽつりと言う。
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「戻ってきたな」
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桃華は少しだけ笑う。
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「うん」
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でもその笑顔は、少しだけ固い。
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仕事側の動き
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ほのかからメッセージ。
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(復帰発表、想定以上の反響です)
(スケジュール再調整入ります)
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颯太は返信する。
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「無理はさせないで」
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即返信。
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(了解です)
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午後・外の空気
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買い物帰り。
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少し遠回りして歩く二人。
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「すごいことになってるね」
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颯太が言う。
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桃華は少し空を見る。
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「うん」
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「怖い?」
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颯太が聞く。
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桃華は少し考えてから答える。
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「怖いというより」
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「現実って感じ」
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颯太は頷く。
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「だよな」
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夜・再びテレビ
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ニュースはまだ続く。
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「復帰理由は明かされていませんが――」
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阿利佐は普通にお茶を飲んでいる。
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「人気者ねぇ」
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颯太は苦笑する。
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「まぁ……そうだね」
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桃華は小さくつぶやく。
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「戻ってきたんだなって思う」
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でもその目は、どこか遠くを見ていた。
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静かな決意
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夜。
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子どもたちが寝ている。
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颯太が言う。
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「これからまた忙しくなるな」
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桃華は頷く。
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「でも」
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「今度は逃げないでやる」
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颯太は少し笑う。
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「俺も」
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外の世界はまた動き出した。
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でもこの家の中心は変わらない。
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三人の子ども。
二人の親。
そして――
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“戻ってきた現実”。
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