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第33話「三つの命、誕生の瞬間」


分娩室・夜


「深呼吸してください」



医師の声が、静かに響く。

桜井桃華は、シーツを握りしめる。



「……っ、颯太くん……」



もういないはずの名前を、何度も呼びそうになる。


でも―― ここは、彼女だけの戦いだった。



廊下


「……っ」


水上颯太は壁にもたれかかる。


心臓の音がうるさい。



(今、中で……)



想像した瞬間、息が詰まる。



「大丈夫だ……」



何度も繰り返す。


「絶対、大丈夫……」



分娩室



「一人目です!」



医師の声。



「力を抜いて!」



桃華の目に涙が滲む。



「……っ!」



長い時間のあと――


「産まれました!」



一瞬の静寂。



そして――


「元気な男の子です!」



外の世界



その言葉は、廊下には届かない。

でも颯太は、なぜか分かった気がした。


「……っ」


拳を握る。



分娩室・続き



「次、いきますよ!」



医師の声。

桃華は呼吸を整える。


もう一度、力を込め… 時間がゆっくり流れる。



そして――


「産まれました!」


「女の子です!」



廊下



颯太は天井を見上げる。


「……よかった」


声にならない声。


分娩室


「最後です!」



桃華の呼吸は荒い。

でも目は開いている。



(あと一人……)


「もう少しです!」


医師の声。



そして――


「産まれました!」


「女の子です!」





数秒の沈黙



そして――


「おめでとうございます」



医師の声。


廊下


扉が開く。


看護師が出てくる。


「無事に三人、産まれました」




颯太の動きが止まる。


「……ん。」


「男の子1人、女の子2人です」




一瞬、世界が静かになる。


「……っ」


颯太はその場に座り込む。


「……よかった……」



声が震える。




桃華は天井を見ている。息が荒いまま。



でも――涙が流れる。



「……産まれた……」




その瞬間。


外から声。


「大丈夫でした!」


看護師の声。



桃華は小さく笑う。


「……うん」




数分後… 赤ちゃんが並ぶ。


男の子1人に女の子2人の3つの小さな命たち。


「……こんなに」



桃華が呟く。

その時、颯太が入室許可を得る。


ゆっくり入ってくる。


そして―― 止まる。



「……これが」



声がかすれる。


「俺たちの子……?」



桃華は頷く。


「うん」




颯太はゆっくり近づき… 小さな手に触れる。


「……やばいな」



涙が落ちる。


「ほんとに、家族じゃん……」



桃華も笑う。


「最初からそうだよ」




静かな病室に三つの命。

そして… 二人の未来。



そして―― ようやく完成した“家族”。



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