第26話「回復の兆しと、動き出す現実」
ここの話はちょっとR18があります。
写真集に関してです。颯太の持ち物が… の話なので、
気にしないで楽しめる回になってます。
病室・朝
「……あれ」
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目を覚ました瞬間。
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桜井桃華は、少しだけ違和感に気づいた。
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(昨日より……楽かも)
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体の重さはある。
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でも――
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“慣れてきた”。
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それが一番近い感覚だった。
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「……これが、生活になるのかな」
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小さく呟く。
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入院してから数日。
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最初は不安しかなかった。
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でも今は――
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(三人と一緒に生きてる感じがする)
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お腹に手を当てる。
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その瞬間。
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(……ぽこっ)
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「……また動いた」
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自然と笑みがこぼれる。
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午前・病室
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看護師がカルテを見ながら言う。
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「少しずつ安定してきてますね」
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「ほんとですか?」
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「はい」
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安心できる言葉。
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「でも」
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少しだけトーンが変わる。
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「三つ子なので、引き続き安静は必須です」
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「……はい」
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現実は変わらない。
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でも――
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“前に進んでいる”実感はあった。
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一方その頃
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颯太・街中
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「……ここ、いいかも」
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スマホを見ながら立ち止まる。
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物件情報。
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でも――
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普通の“同棲用”ではない。
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(メインはホテル生活だけど)
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それでも――
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「ちゃんとした場所、必要だよな」
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考えているのは、“二人の拠点”。
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颯太の考え
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・普段はビジネスホテル
・でも、落ち着ける場所が必要
・誰にも見られない空間
・そして防音空間
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そして――
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(思い出、全部置ける場所)
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頭の中に浮かぶもの
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・斉藤もものDVD
・斉藤ももの水着写真集
・斉藤ももの初期写真集
・斉藤もものノーブラ写真集
・斉藤ももの裸写真集
・斉藤ももの握手会チケット30枚
・斉藤ともの等身大フォト
・斉藤もものキスシーン写真(颯太とももの唇に)
・斉藤ももの寝顔写真集
・雑誌の切り抜き
・ファン感謝祭でのイベントの写真
・記念キーホルダー
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「……全部、大事だからな」
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ただの“オタクグッズ”じゃない。
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それは――
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自分が彼女に出会うまでの時間。
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そして――
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今の関係に繋がった証。
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「ここなら……」
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小さめの部屋。
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人目につきにくい立地。
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(ちょうどいいかも)
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スマホにメモする。
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病室・昼
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「ねえ」
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桃華がスマホ越しに言う。
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「物件、探してるの?」
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「うん」
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颯太の声。
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「どんなとこ?」
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少し楽しそうな声。
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「秘密基地みたいな感じ」
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「え、なにそれ」
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思わず笑う。
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「誰にもバレない場所」
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「……ああ」
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すぐに理解する。
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「いいね」
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「だろ?」
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少し誇らしげな声。
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颯太の本音
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「ちゃんとさ」
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少し真面目なトーンになる。
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「二人の場所、作りたい」
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その言葉に、桃華は静かに聞く。
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「帰れる場所」
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「安心できる場所」
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「……うん」
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自然と頷く。
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病室
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「楽しみだね」
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桃華が、優しく言う。
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「うん」
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「退院したら、行こう」
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「うん」
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その後
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通話が終わる。
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桃華は、静かに天井を見上げる。
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「……家、か」
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まだ実感はない。
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でも――
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(ちゃんと、未来あるんだ)
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そう思えた。
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颯太の夜
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自室。
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机の上。
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また一枚、DVDを手に取る。
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「……」
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画面の中の“斉藤もも”。
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見慣れているはずなのに――
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今は、違う。
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(この人が、俺の奥さんで)
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(今、子供がいて)
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現実が、何度も上書きされる。
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「……すごいよな」
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小さく笑う。
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でもその目は、真剣だった。
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病室・夜
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静かな空間。
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桃華は、ゆっくりと目を閉じる。
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「……守れてる」
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確信はない。
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でも――
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“間違っていない”という感覚があった。
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日常は、大きく変わった。
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でも――
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その中で、少しずつ“未来”が形になっていく。
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