↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/180

閑話⑱ 「“記録する視線”と、切り替わる被写体」


“斉藤もも”という存在は、もはや外側だけの現象ではなくなっていた。

SNSやニュースの中だけにいる偶像ではなく、颯太と桃華の生活の中に、当たり前のように混ざり込んでいる。


それでも颯太は、その姿を「残したい」と思った。

記憶ではなく、曖昧な感情でもなく、“形として残るもの”として。


それはファンとしての欲望ではなく、

もっと個人的で、もっと静かな執着に近いものだった。


そして桃華は、その願いを拒まなかった。



■夜・静かな部屋


夜の部屋は静かだった。


⸻


テレビはついていない。

照明は少し落とされている。

外の音も遠い。


⸻


その中で、水上颯太はカメラを手にしていた。


⸻


⸻


■お願い


⸻


颯太はゆっくり言う。


⸻


⸻


「……なあ」


⸻


⸻


桃華が顔を上げる。


⸻


⸻


「“斉藤もも”として、もう一回ちゃんと撮らせてほしい」


⸻


⸻


一瞬だけ間が空く。


⸻


⸻


■理由


⸻


颯太は続ける。


⸻


⸻


「今までのももを、“形として残したい”」


⸻


⸻


「スマホじゃなくて、ちゃんとした写真で」


⸻


⸻


そこには欲望というより、記録に近い意図があった。


⸻


⸻


■桃華の反応


⸻


桃華は少しだけ視線を落とす。


⸻


⸻


(また“切り替え”か)


⸻


⸻


でも今回は違う。


⸻


⸻


“仕事”でもなく、“外の顔”でもない。


⸻


⸻


もっと個人的で、もっと静かな要求だった。


⸻


⸻


■了承


⸻


桃華は小さく息を吐く。


⸻


⸻


「……いいよ」


⸻


⸻


そして、ゆっくりと眼鏡に手をかける。


⸻


⸻


カチリ。


⸻


⸻


■変化


⸻


その瞬間、


⸻


空気が変わる。


⸻


⸻


桜井桃華から、“斉藤もも”へ。


⸻


⸻


だが今回は派手な切り替えではない。


⸻


⸻


むしろ“静かな移行”。


⸻


⸻


■撮影開始


⸻


颯太はカメラを構える。


⸻


⸻


ファインダー越しに見る世界。


⸻


⸻


そこにいるのは、ただの人物ではない。


⸻


⸻


“斉藤もも”という存在。


⸻


⸻


■1枚目~9枚目


⸻


シャッター音。


⸻


カシャッ。


⸻


撮影の時の “ 斉藤もも ” の姿


(この時の彼女の水着姿可愛い………)


⸻


光と影のバランス。


⸻


⸻


自然な表情。


⸻


⸻


■10枚目~19枚目


⸻


少し角度を変える。


⸻


“ 斉藤もも ” のセミヌード姿…


10枚目から15枚目までは正面からのセミヌード。


16枚目から19枚目までは後ろ姿のセミヌード。


⸻


髪が落ちる瞬間。


⸻


⸻


視線が外れる瞬間。


⸻


⸻


■20枚目~29枚目


⸻


ももが軽く椅子に座ったり、ベッドに横になったり…


⸻


20枚目から24枚目はヘアヌードで正面から見た姿


25枚目かや29枚目は後ろから見た姿のヘアヌード。


⸻


手の位置、足の角度。


⸻


⸻


“作られていない瞬間”。


⸻


⸻


■30枚目


⸻


最後の一枚。


⸻


全身 “ 斉藤もも ” 全てを曝け出したヘアヌード。


⸻


ももはカメラを見ていない。


と言うより夫が持っているカメラの方を見れない。


心の中で恥ずかしい気持ちで


⸻


⸻


しかし確かに“撮られていることを知っている顔”。


⸻


⸻


それが一番自然だった。


⸻


⸻


■沈黙


⸻


シャッター音が止まる。


⸻


⸻


部屋が静かになる。


⸻


⸻


ももが小さく言う。


⸻


⸻


「これら(の写真は)、どうするの?」


⸻


⸻


颯太はカメラを下ろす。


⸻


⸻


「残す」


「全て、カメラの中にある “ 斉藤もも ” を全部記録する。」


⸻


⸻


⸻


■意味の変化


⸻


それは記録ではなく、


⸻


“証明”でもなく、


⸻


⸻


ただの「存在の保存」だった。


⸻


⸻


■ももの視線


⸻


ももは少しだけ笑う。


⸻


⸻


「変な人だね」


⸻


⸻


颯太は軽く首を振る。


⸻


⸻


「今さらだろ」


⸻


⸻


■締め


⸻


カメラの中には、


⸻


30枚の“斉藤もも”が残る。


⸻


⸻


しかし本当に残ったのは、


⸻


シャッターの数ではなかった。


⸻


⸻


“見られていた時間”そのものだった。


⸻


⸻


ももがぽつりと言う。


⸻


⸻


「これ(この時間)、ちゃんと覚えておいてね」


⸻


⸻


颯太は静かに答える。


⸻


⸻


「(絶対)忘れ(るはずは)ないだろ」


⸻


⸻


その夜、


⸻


“記録する関係”がまた一つ深くなる。


⸻


写真というのは、本来「過去を切り取るもの」だ。

だがこの夜に撮られた30枚は、過去でも記録でもなかった。


それは“現在を固定する行為”だった。


桜井桃華でもあり、斉藤ももでもあるその存在を、

どちらにも寄せすぎず、どちらからも切り離さずに残す。


颯太はただシャッターを切り続けた。

桃華はただそこに在り続けた。


そしてその行為そのものが、

二人の関係をさらに曖昧で、同時に確かなものへと変えていく。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。