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第85話 「“飲み会の中の非日常”と、静かに増える理解者」


■居酒屋・空気の安定化


時間が少し経つと、店内の騒ぎは完全な混乱ではなくなっていた。


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“理解できないまま受け入れる空気”。


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それがゆっくりと形成されていく。


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⸻


グラスが再び持ち上がる音。

笑い声が少しずつ戻る。


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■それでも消えない中心


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ただ一つだけ違う。


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テーブルの中心にいる存在。


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“斉藤もも”。


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⸻


その存在だけが、普通の飲み会の構造を少し歪ませていた。


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⸻


■サークル内の会話


⸻


「いやこれ夢じゃないよな?」

「現実ってこんなことある?」

「颯太の知り合いってレベルじゃない」

「距離感バグってる」

「でも普通に喋ってるの怖い」

「逆に落ち着いてきたのやばい」


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⸻


■ももの観察


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ももはグラスを手に取りながら周囲を見ている。


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⸻


(こういう“集まり”は、こうなるんだ)


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驚きよりも観察。


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⸻


その視線はすでに“芸能人”ではなく“参加者”のものだった。


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■先輩女子の再接近


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さっき話しかけた先輩女子がもう一度声をかける。


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「やっぱり、現場って緊張しますか?」


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「あと、続けるモチベーションとか……」


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ももは少しだけ考える。


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そしてゆっくり答える。


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「緊張はします」


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「でも、それ以上に“見てくれる人の記憶に残ること”が大事です」


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その言葉に、周囲が静かになる。


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■颯太の視点


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颯太はそれを聞きながら思う。


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(言葉の使い方が、もう“現象側”だな)


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■静かな変化


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最初は騒ぎだった空間が、


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少しずつ“理解の場”に変わっていく。


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恐怖でもなく、興奮でもなく。


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ただの“受容”。


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■一部の学生の気づき


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桜井桃華を知る数人の学生。


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(あれ……さっきと雰囲気違う)


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(でも同じ人に見える瞬間ある)


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(どっちが本当なんだろう)


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その疑問は口に出されないまま沈む。


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■ももの小さな動き


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ももは颯太の方を見る。


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ほんの一瞬だけ。


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そしてグラスを置く。


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■小声


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「ねえ」


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颯太が見る。


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「今日、ちょっと疲れたね」


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その言葉は軽い。


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でも“共有”の意味がある。


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■颯太の返答


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「まぁ、想定よりはな」


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それだけ。


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■理解者の増加


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周囲の学生の中に、


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明確な“敵意”はもうほとんどない。


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代わりに増えているのは


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「理解できないけど受け入れる」という態度。


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■締め


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居酒屋の時間は続く。


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グラスの音。

笑い声。

少しのざわめき。


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その中心にいる“斉藤もも”は、


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すでに“異物”ではなくなりつつあった。


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ただし完全に“日常”でもない。


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その曖昧な状態が、


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逆にこの夜を成立させている。


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⸻


ももが小さく言う。


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「こういうのも、悪くないね」


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颯太は短く笑う。


⸻


⸻


「だろ」


⸻    


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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