3.4 路地裏の陰謀
東地区は、ギルドのある中心街とは全く雰囲気が違った。街の入り口を抜けると、そこはまるで別の街のようだ。道は舗装されておらず、泥だらけの場所も多い。建物は古く、窓ガラスが割れている家も目立つ。洗濯物が、色褪せてひっそりとぶら下がっている。人々の表情もどこか暗く、活気がない。子供たちの姿も少ない。時折、物乞いの子供が、俺たちに手を伸ばしてくる。
リリアの「探索」スキルを借り、俺たちは少女の足跡や気配を探し始めた。ミナがよく遊んでいたという公園や、友達の家を訪ねて情報を集める。公園の遊具は錆びつき、子供たちが遊ぶ姿は見えない。友達の家も、扉は固く閉ざされている。しかし、東地区は入り組んでいて、細い路地が複雑に絡み合い、なかなか手がかりが見つからない。まるで、迷路のようだ。
「くそ、どこに行ったんだ……」
焦りが募る。時間が経てば経つほど、ミナの身が危険になる。その時、薄暗い路地裏から、ひそひそと話す声が聞こえてきた。それは、まるで獣が獲物を狙うかのような、不気味な声だった。
「おい、あのガキ、どこに隠した? 早くしないと、買い手が待ちくたびれるぞ」
「うるせぇな、もうすぐ買い手が来るんだ。大人しくしとけ。いい金になるんだから、文句言うな」
嫌な予感がした。子供の売買。この世界にも、そんな闇があるのか。俺とリリアは顔を見合わせ、音を立てずに路地裏に近づいた。そこには、見るからに柄の悪い男たちが二人、小さな少女を囲んでいた。少女は恐怖で震え、今にも泣き出しそうだった。その瞳は、絶望に満ちている。ミナだ。間違いない。彼女が着ている服は、母親が教えてくれたものと全く同じだった。




