39. ブタがいた教室
第29階層は、活火山ステージ。
マグマの海から火山スライムが現れ、俺達に攻撃を仕掛けてくる。
「火山スライムしか出てきませんね……」
「そうだな。しかし、この階層はスライムステージの気がする」
「ミスリルスライムを超える経験値を持ったスライムは、出てきますかね」
「可能性としては、高いな」
「そうですかね」
「俺の見立てだと、あの活火山にいると思うんだが」
「正気ですか……あの、噴火してる火山に登るんですか?」
「ああ」
「あんな所に登ったら、めちゃくちゃ暑いですよ!」
「俺は暑くないし」
「だから、それはご主人様が、骨だからですよ!」
「そしたら、マフラー型の氷枕を作ったらどうだ? 首筋を冷やすと身体全体が涼しくなるらしいぞ!」
「ハイハイ! 作りますよ! 作ればいいんでしょ! そして、僕は暑さで干からびるんです!」
シロは、ブツクサ言いながらも、セッセッとマフラー型氷枕を作り、首に巻いた。
「本当だ! とても涼しいです!
これなら、火山に登れそうです!」
「そうだろ! 首筋には、身体全体を通る頸動脈という太い血管があるんだ!
その血管を冷やすと、身体全体が冷えてくるんだ!」
「ご主人様は、脳ミソが無いのに博識ですね!」
相変わらずシロが、俺を無意識にディスってくる。
まあ、俺には、脳ミソどころか血管も無いんだけど。
そんなおバカな話をしていたら、いつの間にか火山の中腹まで登っていた。
「ご主人様、これ以上登るのは無理ですよ!
マグマが足元に流れてますし!」
「確かにな……この階層には、火山スライムしか居ないのかもな……」
と、俺が諦めかけてると、
「アッ……! ご…ご主人様! 何か居ますよ!」
と、シロが、慌てて話しかけてきた。
俺は、急いでシロが指差す方を見てみると、そこには見た事のないスライムが、ボーッと、こちらの様子を伺っていた。
「金色? いや、銅色か? 黄銅と言った方がいいのか?」
「アレって、ご主人様が言ってた、オリハルコンスライムじゃないですか?」
「かもな……」
俺も、オリハルコンの実物を見た事がないので、黄銅のスライムがオリハルコンスライムかどうか分からない。
俺は急いで、鑑定で調べてみる。
[オリハルコンスライム、とても貴重なオリハルコンを主食にしてるスライム、倒せれば、莫大な経験値を手に入れられる]
どうやら、オリハルコンスライムで間違いないようだ。
「ご主人様! アレって、オリハルコンスライムですよ!」
シロも、副眼の鑑定眼で鑑定したようである。
「シロ! 捕獲しろ!」
「ハイ!」
シロは、オリハルコンスライムに向けて、糸を発射する。
しかし、オリハルコンスライムは、鬼の速さで、全ての糸を避けてしまう。
「ご主人様! 捕まえられません!」
「だな……」
見れば分かる。
オリハルコンスライムの速さは、異次元の速さなのだ。
というか、俺にはオリハルコンスライムの残像しか見えない。
「シロ! アイスランスを放ってみろ!」
「了解です! 第3階位水属性魔法、アイスランス!」
シロがアイスランスを放つと、オリハルコンスライムが、ピタッ! と、止まった。
そして、普通に当たった。
「やりましたよ! ご主人様!」
「ああ、当たったな……だけど、全くダメージを受けて無さそうだぞ……」
オリハルコンスライムは、何故か気持ち良さそうな顔をしている。
「もう一度、当てて見ろ!」
「ハイ!」
パキーン!
シロが放ったアイスランスに、またオリハルコンスライムが当たった。
またまた、オリハルコンスライムは、気持ち良さそうな顔をしている。
「これはアレだな……」
「ハイ……僕のアイスランスが、冷たくて気持ち良いんですね……」
オリハルコンスライムは、シロの方を見て、もっとアイスランスを当てて欲しそうな顔をしている。
「シロ! 作戦変更だ! 火属性魔法を放ってみろ!」
「了解です! 第3階位火属性魔法、ファイアーアロー!」
ドカーン!
シロが放った、ファイアーアローが、思いっきり、オリハルコンスライムにヒットした。
しかし、オリハルコンスライムには、全く効いてなさそうだ……。
「ご主人様……僕には、倒すの無理そうなんですけど……」
確かに、シロの魔法は全く効いて無い。
という事は、シロよりレベルが低い俺が いくら頑張っても、オリハルコンスライムは倒せないという事だ。
「無理だな」
「無理ですね」
俺とシロは、オリハルコンスライムを倒すのを諦めて、そのまま下山したのだった。
「で、何でそいつは、シロに着いてきてるんだ?」
「知りませんよ! 勝手に着いて来るんですから!」
俺は試しに、ゼロ距離から、オリハルコンスライムに向けて、エアーバレットを放ってみた。
パキン!
俺の必殺のエアーバレットは、見事に弾かれた。
「効いて無いな……」
「そうですね……」
オリハルコンスライムは、遊んでくれたと勘違いしてるのか、ピョンピョン飛び跳ねている。
「シロ、そいつを山に帰して来い!」
「エッ! 僕がですか?」
「お前は、俺の下僕だろ?」
「それはそうですけど、あの山、暑いんですよ」
「そうだろうな」
シロは、あの暑い活火山に戻るのが嫌そうだ。
「ご主人様、それより、このオリハルコンスライム、僕達に懐いてるようだから、ペットにしたらいいじゃないですか!」
シロが、頭のおかしな事を言っている。
「シロ……。お前、何言ってるか分かってるのか?
そいつは経験値の塊なんだぞ!
ペットなんかにして愛着を持ってしまったら、そいつを殺せなくなってしまうだろ!
それに、オリハルコンはとても貴重で、とても高いんだぞ!
そいつを殺せなくなったら、俺達は、大損するだろ!」
俺は、シロに正論を説いてやる。
「確かにそうですね……。
でも、その貴重なオリハルコンスライムを手元に置いてたら、僕達がオリハルコンスライムを倒す実力が付いた時、いつでも倒す事ができますよ!」
シロも、それなりの正論で返して来た。
「そうかもしれないが、やはりペットにする訳にはいかんだろ!
俺は、昔、『ブタがいた教室』という映画を見て、悲しすぎて泣いた事があるんだよ!」
「僕は『ブタがいた教室』が、どんな話で、どんな内容だか知りませんけど、
次に この階層に来た時、この子を見つけられるとは限りませんよ!」
シロは、つぶらな瞳のオリハルコンスライムを抱っこして、俺に突き付けてくる。
確かに、
俺達がまた、オリハルコンスライムを見つけられるとは限らない。
ここで、オリハルコンスライムを逃がして、次に見つけれなかったら間抜けである。
これは、シロの考えが正しいかもしれない。
「仕方が無い……オリハルコンスライムは、貴重だからな」
「どういう事? この子を飼っていいって事?」
シロは、期待に満ちた表情で、俺の顔を見つめてくる。
「ああ、次にこの階層に来た時、見つけれなかったら間抜けだからな」
俺はシロに、ご主人様としての余裕と威厳を見せてやった。
「そしたら、ご主人様! この子の名前を付けていい?」
「だから、そういう事はダメだからね!
名前なんか付けたら、愛着が湧いて殺せなくなるから!」
俺は、この後、『ブタがいた教室』の映画の内容を、シロに詳しく聞かせたのであった。
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