帰りましょう
もういいかしら?
帰っても……。
やっぱり、屋敷の方がいいな……。
私は、小さく溜息をついた。
「リリア」
「はい?」
首をかしげているリリア。
「私、そろそろ舞踏会を抜け出そうと思っているだけど……リリア。あなたは、どうする?」
リリアは、驚いていた。
「えっ? シンデレラ様は、もう帰ってしまうのですか?」
「えぇ。疲れたから……」
「 なら、私も一緒に帰ります!」
リリアは、そう言い出す。
私は、彼女に気を使わせてしまったようだ。
「いいのよ、リリア? 私に、気を遣わなくても……」
私が、彼女にそう言うが、リリアは、首を横に振る。
「いいえ。そんなことありません! 私も疲れたので、帰ろうかと考えていたんですから」
リリアが断言したので、私は苦笑する。
「そうなの? じゃあ、一緒に帰りましょうか」
「はい!」
リリアが、満面の笑みで返事を返してくる。
でも、このまま帰るわけにはいかないので、お母様達に伝えてから帰ることにした。
「でも、誰かに言っておかないとね。お母様達は、どこかしら?」
周りを見渡すが中々見つからない。
「あれは、エレナ様ではないでしょうか?」
リリアが、先にお母様を見つけたようだ。
「どこ?」
私がそう尋ねると……リリアが、指を指している方を見る。
庭園がある窓側の所で、若い男性の方とお母様が話していた。
「ほら、向こうにいますよ 」
「本当だわ」
私は、頷いて見せる。
「行きましょうか」
「えっ? リリア⁉ 」
私は、リリアに手を引っ張られながら、お母様の所に向かって行った。
私達が、お母様の下に着いた時には、相手の方とお話を終わった所だったようだ。
相手の男性は、私達に気がつくと、挨拶を交わして去っていく。
あの方、どこかで会ったかしら?
なぜか、その方にそう感じたのだ。
その方の後ろ姿を見ていて、お母様に声をかけられたのに気づくのが遅れてしまった。
「シンデレラ? 」
お母様は、私達に気づいて笑いかける。
「あっ! ごめんなさい。お母様」
視線をお母様に向けた。
「リリアも久しぶりね」
「エレナ様、お久しぶりです!」
リリアは、笑顔で答え返していた。
「どうかした?」
お母様は、私達に問い返した。
「あのね、お母様。私達そろそろ屋敷に帰ろうと思いまして」
「そうなの?」
お母様は、私に聞き返す。
「お母様は、どうしますか?」
私は、お母様にこの後のことを聞いてみた。
「私も一緒に帰ろうかしら?」
私は、驚いてしまう。お母様は、いつもだったら、もう少し長く参加しているから。
「いいんですか?」
「えぇ。用は終わったのよ」
「じゃあ、行きましょうか」
いつの間にか、リリアが先に行ってしまっている。お母様と私は、リリアの後を追う。
「あの、お姉様達は一緒に帰らなくていいんですか?」
お姉様達のことを聞くが……。
「あの2人は、大丈夫よ。居なくても、相手の方が送って下さるから」
苦笑いをするお母様。
確かに……。
アンナお姉様も、マリーナお姉様も送ってくれそうだわ……。
「そうですね」
私もクスリと笑う。
リリアに追いつき、馬車に乗り込む。
こうして、世話しなく賑やかだった舞踏会を後にする。
心にはクロウを思い浮かべてーー。
さようならーークロウ様。
もう会えることはないでしょうね……。
この時までは、もう会うことはないと、思っていたんだーー。




