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5.思惑の行方

「ナタリナに触れるなぁ!!!」


 次の瞬間にはルバスール団長がドレフュス団長に襲いかかっていた。舞散る書類。光る真剣。まじか。


 ドレフュス団長は、鞘がついたままの剣で受け止めている。当然あたりは騒然として、走っていく騎士が視界の端に見えた。どうしよう、ちょっと揉めたらと思ったけど、ここまで大事になるとは。この人たちを誰が止められるんだ。


「ばかものめがーー!!! やめんか!」


 総団長の声がして、剣戟が止む。


「私闘は禁止だろうがぁー!!」

「ですが、私はこいつを倒さないと気が済みません」

「この人事を采配したのは私だが……。やるなら、公式にやれ!!!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 団長が真剣を出したときは慌てたけど、結果は思惑通り以上に進んでよかった。これでドレフュス団長の実力が知れ渡るといいんだけど。


 数日の謹慎になった団長には申し訳ない。怒らせて、ごめんなさい。


 そうして1週間後、ルバスール団長を鎮めるために騎士団での試合が開かれることになった。各団から三人ずつ出場するトーナメント戦。遠征から帰ったばかりの第二騎士団は、事情も知らず完全なとばっちりだ。


 日頃の鍛錬の成果を見るためですなどと、総団長が嘯いたおかげか、陛下や皇子殿下たちに、フロランス第二皇女殿下まで見学に来る事態となった。ちなみに第一皇女殿下は、隣国に輿入れしていて、いらっしゃらない。


「俺がこてんぱんにするまで、負けるんじゃない」


 ルバスール団長は、エールとも取れる言葉をドレフュス団長に贈っていた。

 俺はというと何故か第一騎士団の出場者の一人となっていた。このメンツに勝てるとは思えないんですが!

 

 カティが皇女殿下のそばに控えているのが見える。情けない負け方はしたくないなぁ。


 皇女殿下達の方を見ていると、殿下からにこやかに手を振られた。対戦相手からの威圧が凄い。殿下は最近の見学で、騎士のファンを増やしていた。カティがいるからだと誰もがわかっていても、殿下の応援は悔しいのだろう。


 俺は最初の試合で、第二騎士団のやつに当たった。


「魔法は使っても良いこととするが、会場の都合上大技はやめてくれ。1試合目、はじめ!」


 総団長の重い声で始まる。え、剣は模擬剣なのに魔法はありなの? 相手の詠唱が聞こえる。俺は強化魔法を自分と剣にかけて逃げに転じる。


 大技ってどこまでさぁああ?

 相手が剣を振るうと、風が強く来て、当たれば吹き飛ばされそうになるけど、射程範囲を避けるように逃げる。とにかく逃げる。


 ああ、これは魔法が得意な第二への配慮かもしれない。って、近寄れないじゃないかー!? あ、地面が風の刃で削れた。危ない危ない。


「逃げてばかりでいいのかぁ?」


 対戦相手が言うけれど、魔法に頼った戦法で大振りばかりだ。しかも、大きい魔法は持続時間が意外と短い。そして小さい魔法は重ね掛けも出来る。三度目の強化魔法をこっそり掛けた頃だった。

 向こうで次の詠唱を始めそうな気配がした。


「今だ!」


 今まで以上のスピードで、飛ぶように近づき、思いっきり相手の剣を叩く。

 一度で落とせなかったが、驚いた相手が受け身しか出来ないうちに、何度か剣を合わせたら相手の手から折れた剣が落ちた。


「そこまで」


 静かな総団長の声が聞こえる。呆然とつぶやく声が聞こえる。


「なぜ……」

「俺、大きい魔法は使えないけど、強化魔法は得意なんですよ」


 種明かししたから、次は勝てないと思うけど。



 準決勝はドレフュス団長が我が第一の副団長を下し、ルバスール団長が第二騎士団長を抑えた。


 そして誰もが予想したようにルバスール第一騎士団長とドレフュス第三騎士団長の試合が始まることになった。


 城の壁、壊れないといいな。訓練場は少し離れているけれど。


 たぶん魔法はルバスール団長の方が得意で、剣技はドレフュス団長の方が強い、本気を出せばだけど。


 はじめの合図とともに、ルバスール団長が飛び出す。たとえ模擬剣でも破壊力はある。数回打ち合ったら、ドレフュス団長が飛び退く。すると地面が抉れていた。


 今、何をやった?


 ドレフュス団長が態勢を立て直す前に、ルバスール団長が飛び付きまた剣を振るう。ドレフュス団長は、一歩引きながら剣を合わせ、押されてるように見える。


「あまり 嫉妬深いと嫌われますよ」


 ドレフュス団長の口が動いたのを読む。わぁああ、あの人煽ってるよ。


「その口、聞けなくしてやる」


 かなり怒ってるのに、さすが団長なだけあって剣筋は乱れない。目が追えないかもという速さで切り結んだかと思うと、今度は宙で爆発がおこる。


 魔法の大技は使わないようにしてるんだな。まあ物理で叩きたい衝動の方が強いのかもしれないけれど。

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