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第17話 ファイトマネー?

「起きろ、ガリウス」


 ギルドマスターが倒れているガリウスに話しかける。その雰囲気はさっきまでのそれではない。ギルドマスターとしての威厳が感じられる。


「お前はテンマを殺すつもりだったのか?」


 そういえば死ねって思いっきり言われたもんな。あの攻撃を防ぐ手段が無ければ割とヤバい感じだったのは確かだ。


「お前にはテンマを痛めつけたいという欲が終始垣間見えた。開始前の不意打ちなど言語道断だ。それでも仕切り直した試合でもしお前が勝つようなら、ガリウスに不意打ちの必要性は無かったと判断して見逃してやろうと思っていた。しかし、本気で戦って負けたということは、あの不意打ちは必要だから使ったと判断するしかない。ガリウス、指名依頼と決闘を軽んじた罪は重いぞ」


「は? 何を言って……」


「ガリウス、お前には200万ゴールドの罰金を命じる。払えない場合は戦闘奴隷になってでも払ってもらうぞ」


「はぁぁ!!??」


「当然だ。お前の行動は、ギルドの信頼、ギルドに勤める職員の信頼、ギルドで懸命に依頼をこなす冒険者の信頼を著しく損なう背信行為だ。元Cランクの冒険者が指名依頼を利用して他の冒険者を陥れようとしたなんて、そんなことをギルドが許すわけがないだろう」


 ギルドマスターはこれは決定事項だと言ってまだ起き上がれないガリウスを抱えて出て行ってしまった。

 というか、とんでもないワードを聞いてしまった気がする。奴隷とかあるのこの世界? こんな人権意識が低そうな世界で奴隷になったら一生奴隷で終わりそうだな。奴隷の子供は生まれた瞬間奴隷みたいな文化もありそうだ。


「うぉぉ!?」


 俺が奴隷の生涯に思いを馳せていると、背後から衝撃が襲った。何かと思えばミーナが飛びついてきたのだ。


「テンマ! お前やったな! すごい! 本当にすごいぞ!」


「待て! お前こんな衆目の前で!」


「はっ!?」


 興奮のあまり我を忘れていたのだろう。居ても立っても居られないとか子供みたいなところもあるんだな。他の冒険者の恨めしそうな目が痛い。


「しかし見事だった! どんな小細工を使うのかと思っていたのに、まさかステータスで圧倒するとは……!」


「言っただろ。俺はミーナのおかげで強くなれるって」


「お前……こ、こんなところでそんな……嬉しいが……ほらみんなが見ているだろう」


 え? 何をもじもじしてるんだこの人は。前にも言ったことを言い直しただけなのに。


「テンマ様、お疲れ様でした。プロポーズもいいですが、依頼の報酬をお渡ししたいのであとで受付に立ち寄ってくださいね」


 え? プロポーズ? 何のことだ……ってあぁ、アリサさんまたジト目になってる。ジト目で見られるのにも慣れたなぁ……。


「プロポーズなんてしてませんけど」


「思わせぶりなのも最低ですね」


 いや、付き合ってすらないのにそんな勘違いをするのか? まさかこの世界って出会って2週間でそこまで発展するのが当たり前? やめときな、一緒にいるようになって初めて見えてくる相手の嫌な面とかあるって聞くよ?


「と、とりあえず後で受付に行きます」


「はい。あ、それと、おめでとうございます。テンマ様はギルドマスターの一存によりCランクに昇格となりました。そちらの手続きも後で合わせて行いますね」


 それだけ言うとアリサさんはスタスタと行ってしまわれた。え、待ってCランク? そんなランク上げて大丈夫なの? それにランクが上がっても俺がやることは変わんないんだけど? あ、でも今回の報酬で50万ゴールドの臨時収入があるからそれで良い武器が買えるか。それとも強いモンスターと安全に戦うために防具を買うべきなのだろうか。


「すごいなテンマ! Cランクだぞ! 何でそんな冷静なんだ? もっと喜べ!」


「いや、これからどうしようか考えてた」


「おぉぉ……ストイックだな……! しかしそれこそ英雄に必要な資質なのかもしれんな!」


 というか、実は英雄譚大好きだろ。別に俺は世界を救うつもりなんてないしそもそもこの世界危機に瀕してなくね?


「で、これからどうするんだ!? 『アグリーベア』や『サーペント』に挑戦しても良さそうだな! いや、お前なら『レッサーワイバーン』でも倒してしまいそうだ!」


 なんだそのヤバそうなラインナップは。そんなヤバそうな奴らを相手にするわけないだろ。だいたい、もうやることは決まってるんだよ。


「これからは……」


「これからは?」


 そんな期待した眼差しで見られても困る。俺に冒険を期待しても無駄だ。


「レベル上げだ」



 後日、いつものように精算をしようと思ったところでガリウスが戦闘奴隷になったということを知らされた。どうやら200万ゴールドの罰則金が払えなかったらしい。


「ギルドが追加の100万ゴールドを負担致しますね」


「え? 俺ももらえるんですか?」


 何でもあの罰則のうち半分は当事者である俺に慰謝料という形で入ってくるらしい。まぁ貰えるならありがたく貰うんだけどさ。


「今やテンマ様はギルドを代表する実力者。多分テンマ様が思っているよりもギルドはテンマ様のことを大事に思っていますよ」


 心が離れないようにするためのお見舞い金ってことだろうか。それって言っていいの?


「はぁ、まさかテンマ様がこんな優良株だったとは……。担当受付嬢として1番チャンスがあったのに何故私はもっと優しく接しておかなかったのか。過去の私を殴ってやりたいです。いえ、今からでも遅くないでしょうか」


 そういう生々しい本音は女怖ってなるのでやめていただきたい。ようはアナウンサーがスポーツ選手と結婚するとかそういう話でしょ?ギルドの受付嬢はあれか、若くて実力のあるBランク冒険者とかAランクの冒険者と結婚をしてセレブ暮らしっていうのが一般的なのかもしれない。


「今日はスライム230匹にウルフ400体、ウルフウォーリアが48体、トレントが21体……相変わらずイかれてますね……」


 おーい担当受付嬢さん? ついさっき優しく接するって言ったばっかじゃなかった? この人もはや隠さなくなってきたな。


 しかし思いがけない大金を手にしてしまったがどうしようか。とりあえず現状装備にも困ってないし貯金しておくか。どこかのタイミングで必要になるかもしれないからな。

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