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歴史の闇に触れる落ちこぼれ

カクヨム、アルファポリスで同時掲載

大幅に書き直しました。展開や登場人物に色々変更があります。読んだことある方もぜひ読み直して下さい。

※ Xにイメージイラストがあります

 リンポはすぐさまコノンミを部屋へと呼びつけた。

 ジョオから聞かされた報告。

 行き着く答えは一つしかない。


 皆が同じ考えを持っていた。


(サアズと似た死に方だ)


 ルハはその街へ向かった。

 カリニャも連れている。


 これから新たな情報が得られるかもしれない。


「コノンミ、ご苦労だったな」


「へい、親分。何かご用ですかえ?」


 呼びつけられただけのコノンミは何も知らない。


「変な死に方をした奴らがいたそうだな」


「ああ、センジツマエのことですか。馬車から発見されたようです」


「ほお…。詳しく」


 そこはシナリニから近い位置にある宿場町。

 長時間停車している馬車を警備兵が調べたところ、中から複数人の男の死体が見つかった。


 彼らが運び出される現場を、たまたま通りかかったコノンミが目撃した。

 肌が異様に変色していたため、毒が原因だと疑われていた。

 つまり状況的には他殺。


 一方コノンミは彼らが同業者であるとすぐに分かった。

 死んだ男たちは運び屋。


 状況的に口封じ。

 やばい案件に手を出したと考えた。


「なあ、旦那」


「ああ、ルハは別の運び屋を用意していた」


 始末したということは金で動く奴らだろう。

 最初から殺すつもり誰でもいい。


「だとしたら、どうやって街を抜け出したの?」


 ユリィの疑問は当然だ。

 本来であればサアズが用意した馬車で、そうする予定だった。


「考えられるのは転移魔法だな」


「転移…、じゃあどこかに魔法陣があるの?」


「いや、俺と違いルハは術を習得している」


 転移魔法には二通りある。

 転移石を使うか、術者が直接発動させるかだ。


 後者なら、術者が一度訪れた場所へ移動できる。

 ただし長距離には向かない。


「街の外へなら余裕か」


「十分だな」


「あれって高難易度の魔法って習ったよ。学院では先生ですら使えなかった」


「そういうものだ。だが、暗黒使いは別格だ」


「闇属性は扱いが難しいから?」


「そうだ。実際カリアンは使えていただろ?」


 許容する魔法量に加え、危険度が高いため熟練度も必要。

 それ程の能力があるのなら、転移魔法が使えても不思議ではない。


「そういや、王都での戦いでウカが使っていたな」


「奴は暗黒使いじゃなかったな。リッチなら出来ても不思議じゃない」


 呪殺、転移、闇属性。

 敵はそれらを操る。


 一方カチルは解せなかった。

 ある程度であれば裏社会に精通してはいる。

 しかし、この集団に関する情報を聞いたことがない。


「ところでさ、魔法陣を使った転移なら簡単にできるの?」


「ああ、相対する魔石と魔法陣を仕掛ければいい」


「そうなんだ…」


「なんだ?」


 妙にひっかかる反応をする。


「なんで神殿に仕掛けられたんだ?」


「神殿に…、言われてみれば!!」


 失念していた。

 野盗の根城と神殿が魔法陣で繋がっている。


 限られた人間しか入ることの許されない地下施設。

 そこに描かれていた。


「内通者がいたんだろ?」


 順当に考えればケイシの言う通りになる。


「カリニャが内通者だと思っていた。しかし、そうじゃなかった」


 その想定はすでに崩れている。

 そうだとしたら神殿に仕掛けられた魔法陣。

 あれは誰が作ったのか。


「あの、私思うのですが」


 アヤンが再び手を挙げる。


「どうした、嬢ちゃん。また何か思いついたのか?」


「あの根城って、王国統一戦争の時に、最後の戦いが行われていたのですよね?」


「そうだったな」


「確か歴史の授業ではこう習いました。タナワベ家が天下統一直前、当主のナカチキ公が亡くなり、現国王の祖である初代国王が統一を果たしたと」


「うん、習ったね」


 その程度なら子供でも知っている一般常識だ。

 歴史も苦手なユリィでも覚えていた。


「ナカチキと初代国王は、元々ロムカナの家臣同士だったな」


「そうでしたね。配下の裏切りで命を落とされ、その仇を討った功績でナカチキ公が後継者になられた」


「それも習った」


「じゃあ、その二人が親族だったことは知っているか?」


「えっ!?そうだったの…」


 ユリィは驚く。

 だが他の者は違う。

 有名な話なのか。


「やっぱり知らなかったか」


「知らなくても生きていけるし」


「まあ聞け。ナカチキはロムカナの姪を妻に、初代国王は娘を迎い入れた」


「つまりロムカナ公から見れば、ナカチキ公の息子は傍系。一方初代国王の子は直系になります。その血筋を理由に、王位の正当性を主張したのです」


「関係がややこしいなぁ…」


「そんなに難しくないだろ」


 頭を押さえるユリィにカチルは呆れた。


「要は、それを大義名分に乗っ取ったってことだな」


「そうなりますね」


「アヤンちゃんって、歴史に詳しいわね」


 ナギは軽く手を叩いた。


「それほどでもないです」


「そうなのぉ?」


「図書室にあった歴史書を読むのが好きでしたから」


「私もある程度の知識があるわ。そういえば、ナカチキはサカウオに城を構えていたわね」


 試験のために覚えた内容。

 サカウオは旧首都だった。

 そのため周辺が今でも栄えている。


「結局、仲良くすることはできず戦いになってしまったと」


「城は落ち、逃げ延びた先で籠城戦になり二代目は自害。そんな話だったわ」


「悲しい話だなぁ…」


 ユリィの口から思わずこぼれる。


 権力を巡る争い。

 いつの時代も、それは繰り返される。


「ちょっと待て…」


 ユリィは理解した。

 話が逸れたがそれがアヤンの言わんとすることだ。


「その逃げた先って、まさか…」


「私たちが討伐クエストで向かった、根城です」


「……」


 つまり、ユリィはその逆で神殿へ辿り着いた。


「あの、いいかしら」


 今度はチイヒが手をあげた。


「実はあの神殿なんだけど…」


 一旦言葉を止める。


「タナワベ家を滅ぼし国家を統一後、サカウオ城の跡地に建てられたと聞いたことがあるわ」


「そっ、そうなの!?」


 ユリィには初めて聞く話だった。

 教科書には載っていなかった。

 だとしたら雑学の範囲になる。


「聞いたことがあるな」


「私もあるわ。わざわざ取り壊してから建て直したって」


 カチルとナギは知っていた。


「何でそんな面倒なことをしたんだ?」


「新しい王家の時代を示したかったんだろう。タナワベ家の象徴を消すことによってな」


「他に理由があるわ。建造費を諸侯に負担させることによって、力を削がせようとしたの」


 道路や堤防、それらの工事は今でも諸侯に委託されている。

 資金が足りなければ、外部から用立てる。

 表向きは委託となっているが、事実上命令だ。


「なるほどね。その貢献度で地位が決まる。私たちの世界で言う上納金と同じか」


 ケイシは腕を組み頷く。


「おい、話がだいぶ逸れているぞ」


 その言葉で一同はハッとなる。


「嬢ちゃん、話を戻してくれ」


「あっ、はい。根城と地下室にあった魔法陣、この二つはタナワべ家が作ったものだと思います」


「なるほど。抜け道か」


 城には何かしら備えられているものだ。

 サカウオ城はそれを脱出手段にしていたと考えた。


「ちょっと待ってくれ」


 ユリィは疑問に思った。

 この考えには矛盾がある。


「神殿に造り直したんでしょ?だとしたらあの部屋もその時に出来たんじゃ…」


「いえ、それもタナワベ家が造ったものじゃないのでしょうか」


「えっ?」


「地下施設は、そのまま使いまわしたって意味だ」


 地下の存在は外からは見えない。

 内情を知る者でなければ気づくことはない。


「ねえカチル。アヤンちゃんの考え、どう思う?」


「考えとしては自然だ」


 ナギもどちらかというと同意見だ。

 だが、そこでユリィはあることを思い出す。


「待ってくれ」


「なんだ?」


「根城の魔法陣って、最近描かれたって言ってなかったか?」


「そうだったな。暗くて分かりづらかったが」


「あれって統一戦争の時に描かれたんじゃないの?」


「あのな、移動手段をそのままにするわけないだろ」


「消したのか!」


「そうだ。そうしないと敵に使われてしまう」


 神殿を襲撃するため、カリアンがそれを描き直した。


 話の筋は通っている。

 だが、これらは推測の域を出ない。


「なあ、アヤン。この件だけど、放っておいたらもっと良くないことが起きると思う」


「はい、私もそう感じています」


「ルハとカリニャ、あの二人を追いたい。だけど…」


「確かに危険です。でもユリィさんが追うと言うのなら賛成します」


「おっと、借りを返すって言った私を忘れないでほしいね」


 ユリィとアヤン、そしてケイシもそのつもりでいる。


「カチルはどうするの?」


「そうだな。爺さんの指令もあるが…」


 連れ去ったルハは暗黒使い。

 その可能性が躊躇わせた。


「何でカリニャを攫ったのか、それを知り得たい」


 どちらかと言うと好奇心。

 腹は決まった。


 カチルはリンポの方を向いた。


「リンポの旦那」


「どうした?」


 一歩踏み出し、告げる。


「センジツマエへ案内してくれ」

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