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ニジェールの熱い一日(ほぼ実話)  作者: ニジェールまきこ
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8/25

出会い〈1〉

のぞみは久しぶりにバスに乗り、首都のニアメに出ることにした。

先日、ムスタファたちと話した小学校のAPP活動で、バティックを教えてくれる先生を探す目的もあった。

ピックアップと呼ばれる乗り合いトラックの荷台に、羊や鳥や地元の人たちと一緒くたに乗りこみ、舗装されていないガタガタの道を走る。

2時間ほどでニアメの中心部、野菜や肉など食料品を主に売っている市場「プチマルシェ」に着いた。


ニアメには、のぞみのような国際協力関係や医薬品や資源関係の商社の人間など、外国人がよく集まるバーも何件かあり、コンクリート造りのプール付きの大きな家や、国際会議場のついた近代的なホテルや、スーパーマーケットや大学もあった。


まずはプチマルシェに行き、マルシェで山積みにされて売られているマンゴーを買おうと、店のおじさんに声をかけた。

「マルゲ?」(いくら?)

と聞くと、

「ゾングンダ ウェイタチ」 (700fCFA)

と言う。


学生時代に一人旅でインドに行ったときは、現地の人の値段の10倍くらいの値段をふっかけられたり、粗悪品を掴まされたりしたが、ニジェールの商人たちは、外国人だからといって、やたらと高くふっかけたりはしなかった。

「ゾングンダワランカ」 (600FCFA)

と、少し値下げ交渉をしてみると、

「ト」(よし)

と言ってすぐに商談成立。

のぞみは100円ほどで、大きなマンゴーを2つ買うことができた。

ザルマ語で買い物をすると、値段交渉もやりやすい。


魚や香辛料など、プチマルシェ内の店を見て回った後、マルシェの隣にある協力隊員の間で「スコール」と呼ばれているレバノン人経営の高級スーパーマーケットに入った。村では絶対に食べられないアイスクリームや、スナック菓子、お酒も売っている。日本ではただのスーパーだが、しばらく電気のない土だらけの生活をしていたのぞみには新鮮で、どれもこれも欲しくなってしまった。


のぞみは大好きなブルーチーズと赤ワインをかごに入れ、レジへ並んだ。

いざお金を払おうとすると、ポシェットの中に財布が入っていないことに気がついた。

「あれ、さっきマンゴーを買ったときに払ったばかりなのに・・」

プチマルシェは外国人もよく利用するため、すりがいるという話は聞いたことがある。おねだりはするものの、信仰が篤いおだやかなニジェール人が、本当にそのような犯罪行為をするのか。


念のため背中に背負っていた大きなサックをおろして探してみたが見当たらない。

その様子を見て、後ろに並んでいたニジェール人の裕福そうな女性がサッと5,000フランセーファーをレジに渡した。


その女性は自分の買い物の支払いも済ませ、のぞみにフランス語で「マルシェの近くは気をつけなさい」と言い、去っていこうとした。

「ハンガンカイナ、ハンガンカイナ!」(ちょっと待って、ちょっと待って!)とのぞみは呼びとめた。

女性は「ザルマ語がわかるの?」と言って、笑って足を止めた。のぞみは「きちんとお金を返してお礼をしたいから、名前と連絡先を教えて」と言うと、女性は、「アイシャ」と名乗った。

アイシャは「夕方、いつもプチマルシェに来るから、またいつか会いましょう。インシャアッラー」と言って、連絡先を残さず行ってしまった。


「かっこいい・・・」

のぞみは財布を盗られたらしいショックは忘れ、すっかりアイシャの容姿、身のこなし、話し方を思い出してうっとりとしてしまった。

髪はきれいに編み込まれ、刺繍がほどこされたカラフルでおしゃれな洋服に、甘い香りの香水。

「素敵なニジェール人に、ピンチを助けてもらっちゃった!さすが首都ニアメだ」



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