村の生活〈5〉
ザクとモクタールが帰ったあと、ムスタファは「少し話があるんだ」と、ひとりのぞみの家に残った。
「話って何?」のぞみが促すと、ムスタファは「僕は今何歳だと思う?」と聞いた。「何歳?中学2年生だから、まあ、ちょっとダブってるとして、15くらい?」。
「違うよ、21歳」
「21歳?!」
中学生でまだまだ少年だと思っていたムスタファは、21歳だという。15歳にしてはしっかりしているなと思っていたから、21歳と言われて驚きはしたが、それくらいかもしれない、と思った。
ニジェールには、欧米式の学校とイスラム式のコーランを覚える学校があり、ムスタファは3年ほどイスラム式の学校の通っていたため、ほかの同級生よりも年上なのだそうだ。
「誰にも言っちゃだめだよ、同級生にも内緒なんだ」とムスタファは言った。
内緒にしていても、この小さな村の中のことなんて、みんな知っているのではないだろうか、とのぞみは思ったが、秘密を共有してくれたことがうれしく感じて、「わかった」と笑顔で答えた。
次の日の午後、いつものようにのぞみの家にやってきたムスタファは「自分の家に案内してあげる」と、のぞみの手を引き歩き出した。
「ムスタファの家かあ・・どんなご両親に育てられたらこんないい少年に育つのかな」。のぞみは今や村での活動の重要なキーパーソンになりつつあるムスタファの家族環境に興味深々だった。
村のほかの家族と同じように、ムスタファの家も二部屋程度の土の家が親戚同士で7軒ほど並ぶ「ウィンディ」というグループ集落の一つにあった。家とは別に、土でつくられた直径2メートルほどの円錐形をした高床式の貯蔵庫がいくつも並んでいた。その中にはマンゴーが保存されているという。
「この中に入れておくと、長い期間保存できるし、獲った時より甘くなるんだよ」とムスタファは説明した。なるほど、これだけマンゴー用の貯蔵庫があるなら、これはおそらく市場へ持っていく販売用で、ムスタファの家はこの村の中で裕福な方なのかもしれない。
ただ、演説をしていたムスタファには、人を動かす力を持った人間だと感じさせられた。
マンゴーを市場で売りながらこの村で生活していくのは、もったいないような気がする。
それも、先進国の人間の勝手なイメージなのだろうか。
でもここまま中学を卒業できたとして、勉強してきたことはそのあとどう生かせるのだろう。
彼らのように優秀で、やる気のある若い人たちに、将来の選択肢を増やしてあげられるような機会が作れたらいいな。
のぞみは漠然と考えていた。




