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座頭の石 (ざとうのいし)  作者: とおのかげふみ
第四章 最後の会話

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ep.1 翌朝

...ひで二日酔(ふつかよ)いだ


脳ミソまでガンガン届く痛みを(かか)えて、助五郎(スケゴロウ)が起き上がる。

目を開くと、見慣れぬ部屋に居た。


...どこだ此処(ここ)は?


線香(せんこう)の匂いがした。

助五郎は周囲を見回しゾッ!とする。


縁起(えんぎ)でもねえ」


助五郎は、亡き妻の(すえ)が最後を過ごした部屋にいた。

ここで陶がどんな死に方をしたか、助五郎が一番知ってる、その部屋にいる。


昨日、(いし)いう目暗(めくら)が来た。

その翌朝。

昨夜は、石の為に(ラン)の部屋で小さな(うたげ)を開いてやった。

これも、あの腕の立つ男を飼う投資のようなもの。


しかし、普段より飲んで、部屋を出てからの記憶が曖昧(あいまい)だ。

『石を部屋に案内しろ』と八助(ハチスケ)に言いつけたのは覚えてるから、石も今頃は起きて飯を食ってる頃だろう。


...今から誰かやって、女房を連れて来させるとして、石と女房を、俵永(ヒョウエ)の居る宿に泊まらせるか、いやそれはマズイな


俵永の女に対する性癖は最悪だ。

他人の(おんな)だろうが、見境いが無い。

下手をすれば、俵永が石を殺して女房を奪う可能性がある。


ふと見ると、廊下と隔てた障子の色がやけに明るい。

とっくに陽は、昇っているようだ。


...いま、何時(なんどき)だ? もう昼なのか? ワシは何時間ここで寝てたんだ


あたりを見回した。


「相変わらず、辛気臭(しんきくせ)え部屋だ」


この部屋を改装したいと、ずっと思っているのだが先延ばしにして来た。

陶の怨念が、この部屋に詰まっているようで怖ろしいからだ。


...来たのは『アレ』以来、か



陶が亡くなった後の数日は、屋敷の者たちへの体裁(ていさい)もあって、助五郎は自分の部屋の隣に仏壇(ぶつだん)を構え位牌(いはい)を置いていた。

たが、その間ずっと眠れない日が続き、助五郎は堪らなくなって、この部屋に位牌を移した。


『朝と晩、欠かさずに線香を立てておくように』と奉公人(ほうこうにん)に言いつけてあるので、毎日焚かれてる線香の匂いが、部屋中に染み付いている。


助五郎は、しばらく位牌を眺めていたが、陶に見られている気がして目を背けた。


閉め切った部屋で充満した線香の匂いを嗅いでいる内に、助五郎は、この部屋で交わした陶との最後の会話を思い出していた。





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