表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
座頭の石 (ざとうのいし)  作者: とおのかげふみ
第三章 子毛の町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/61

ep.18 狂犬

芯太(しんた)が、弥切(やキり)家路(いえじ)についた頃のこと。

(いし)はまだ休む事が出来ず、大汗を()いて(よし)の家に向かっていた。


...ざまあねえや。宿なんて何とでもならあ、遅くなりゃ子毛(こげ)で寝転んで過ごせば良いやとか思ってた。これが、そのザマか!


ウオウ、オウオウ、ウオオン! 

盛んに聞こえる(けもの)の遠吠えに(おび)えながら、石は小走りで必死に山道を進む。


「クソー、あしはエサじゃねえ。寄って来るんじゃねえぞお!」


疲れ切った今、野犬に襲われたら、ひとたまりもない。

石は、深夜の街道で一人叫んでいる。


「なかなか、(やかま)しい男だな。良い月夜だ。静かに月を眺めることはできんか?」


カサ っと音がして、ススキ野から石の前に男が現れた。

手に長く光るモノを持ち、薄笑いを浮かべている。

その手に持つモノの先から半分ほどは、ドス黒く何かで染まっている。


男は、血に染まった長い刀を肩に背負い、石をゆっくりと眺める。

石は恐ろしい緊張感に包まれて、後退(あとずさ)った。


ヒュッ!


「?!」


石は、勢いよく街道を転がった。


「まだ遠かったか?」


無造作に、男が横に()ぎ払った(カタナ)()は、石の頭の上を(かす)めていた。


一瞬、遅れていたら、首は胴についてなかったかもしれない。


石は、転がり()いつくばって、誰かも分からない敵から離れようとした。


「逃げるな、下衆(ゲス)!」


男は素早く近づいて、石の背中に向けて大太刀(オオダチ)を振り下ろした。


ガツン!


杖を頭上に(かつ)ぐようにして、腕を伸ばし(やいば)を受け止めた。

だが、振り下ろした刀は重く。

腕が折れ曲がり、肩で担ぐようになるまで押し込まれる。


石は、力の限りを振り絞り、刀を跳ね除けると、そのまま身を前に投げた。

男は、追い(すが)って来る。

石は、後ろに杖を突き出した。


正確に喉を突いてきた杖に、男はのけぞり、石から離れた。


...杖で受けなきゃバッサリ()られてた。なんて重てえ一刀(いっとう)だ! 両手がまだ(しび)れてる


顔がひりひりしている、手で触ると、刀が掠めて(ほお)の肉が浅く()げていた。


「面白い! 二度も俺の太刀(たち)(かわ)したな。久しぶりに、手応えがありそうな奴を見たぞ、名は何と言う」


...うるせえ、もう挨拶はご免だ


男は、ニヤリと(ワラ)っている。

石は杖を真っ直ぐ男に向け、腰を据えた。


道中(どうちゅう)合羽(がっぱ)のフードが頭を(おお)い、男にはその顔は見えない。

いまの石に、さっきの襲撃の時のような余裕はない。 


「退屈してたが、お前のおかげで随分(ずいぶん)楽しくなった。俺の名は花嚢(カノウ)俵永(ヒョウエ)


「殺される前に覚えて置け。ああ、貴様の名前は・・もう、どうでもいい。どうせ殺した奴の名前など覚えちゃいない」


俵永は、刀を肩に担ぎ楽しそうに笑った。


...マズイな。コイツからは、あしの姿は丸見えだ


石は、足元に月明かりを感じ焦った。

俵永は、空を見上げ月夜を楽しむ余裕を持ち、石が進む道を塞いでいる。


...せめて、月が隠れてくれりゃあ


石はそれを願った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ