表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
座頭の石 (ざとうのいし)  作者: とおのかげふみ
第三章 子毛の町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/61

ep.16 矜持

暗闇のなかで、(いし)罵倒(ばとう)揶揄(からか)いを黙って聞いていた弥切(やキり)は、その背後に居る血の気の多い舎弟(しゃてい)達を抑えるのに苦心(くしん)していた。


余りにやり返さないと、舎弟(しゃてい)達に臆病者と(あなど)られ、自分の面子(メンツ)を失う可能性もあるが、今日は石という男を見たかっただけで、争うつもりはない。


キレた無鉄砲(むてっぽう)な一人が、飛び出そうとするのを羽交(はが)いじめにして、組み伏せる。


『今日は、様子見だ。お前の気持ちは分からんでもないが、我慢しろ』


けらけらと、石が(あざけ)る声が聞こえた。


「元気なチ●コロ抑えんのも大変だな。若いとすぐおっ立って先走るもんだ。我慢できねえのは仕方ねえさ、お前さんらはイキがっても、ただのチ●コロだからな


様子見なんて、(じじ)くせえ事はやめて、若えんだから勢いに任せて突っ込んで来いよ


「なあ、声からすりゃ、みんな若そうじゃねえか? (ぼう)や達、みんな一緒に天国に連れてってやるぞ」


そう言って、またケラケラと笑っていた。


ガリガリ! と弥切が歯ぎしりする。

血の気が(のぼ)るのを感じたが、同時に、押し殺した(かす)かな声でさえ石が(ひろ)っていることに驚いた。


...どんなに小さな声でも(コイツ)には筒抜(つつぬ)けだ、どんな耳をしてるんだ


「歳は(いく)つくらいか? 三十(才)といったところか、おや、お前さんよく考えりゃ、どっかで聞いた声だな? ありゃ何処(どこ)だったかな?」


月明かりの下、目の前で、腕組みして考えている石。

暗闇に隠れた上に、目には見えてない自分の正体に、少しづつ近づいている事にゾっとした。


...この化け物が


弥切は、息をするのも慎重にした。

それからも挑発は続いたが、弥切は舎弟(しゃてい)(にら)みを効かせながら暗闇に(ひそ)んだ。



時間が過ぎ、「・・・帰る。こいつらの面倒はお前らがしろ」と言い残して、石は背中を向けた。


その背中に舎弟達がいろめき立つが、弥切の威圧が(まさ)り、どうにか抑え込んだ。


そして、石の背中が完全に消えたのを確認して、弥切は暗闇から月明りの(もと)に現れる。


「あの男だ、間違いない」


倒れている三人を前に、仁王立(におうだ)ちする弥切。

握りしめた拳が、小刻みにわなわなと震えている。


代貸し(かしら)


背後から、自分を呼ぶ声がした。


...まったくどいつもコイツも


肩の力が抜ける。

ふう・・・と、弥切は大きく息を吐いた。


「俺をカシラと呼ぶな、与助(ヨすけ)。こんな場所でも、誰が聞いてるか分からねえんだぞ」

「すんません」


与助は首をすくめた。


怪我人(こいつら)を運べ。今日の一件(こと)は黙っておけと、念を押しておけよ。それから・・こいつらに与えてやった(カネ)は、ビタ一文取るな」

「分かりました。・・・あの目暗(めくら)の言ってたように、医者に診せますか?」


真面目な顔で言う与助を、弥切は見つめた。


...つくづく八九三(やくざ)に向いてない男だ。その生真面目な所が信用出来るんだが


「俺たちは八九三(やくざ)だ。弱い奴から(むし)り取り、負けた奴から奪い取る。そうでなきゃ、生き残れねえ


「こいつらが、医者に診せろと言うなら(カネ)を取れ。所詮は使い捨てだ、気にするな」


「わかりました」


与助は引き下がり、後ろの仲間に合図した。


...この三人には、今回の仕事の報酬(カネ)は渡してある。怪我をしようが死のうが、それは俺たちに関係ない


仕事も(ロク)にできない三人から(かね)を取り上げて放り捨てる事もできたが、それをするのは、弥切の矜持(プライド)が邪魔をした。


...クソ八九三(ヤクザ)が、役に立たねえ矜持(プライド)獅噛(しがみ)ついてるとはな。笑わせる・・・


と思うが、実際そうなのだから仕方ないと自らを(あざわら)った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ