↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神滅のヘッズベル  作者: くろえ
PR
41/43

第40話 桜庭黄金の計略

 音遠には勝つこと優先する、なんて偉そうなことを言っておきながら、俺は今この瞬間を楽しんでいた。今まで金儲けのために色々なゲームをプレイしてきたが、そのどれともこのヘッズベルは違う。

 熱くなる身体とは真逆に、背筋を流れていく冷たい汗。

 この緊張感を味わえば味わうほど、俺はゲームの世界に没頭していく。研ぎ澄まされていく神経が敵の思考をトレースし、次に打つべき最善手を導き出そうと脳がフル回転する。

 そしてその答えが出た時が最高に気持ちいいんだ。

 人間はそうそう自分をコントロールできるものじゃない。頭では勝つことが絶対条件と考えながらも、そこにある可能性を試さずにはいられない。


「ゲームって……やっぱ最高だよな。ガクシ」


「くたばれぇ――ッ!!」


 ガクシの動きは目で追えるレベルじゃなかった。いや目で追えたところで反応速度が追いつかない。

 それは帯電強化の超スピードに加え、併用していた短距離転移のヴンダーがあったからだ。

 俺は死角となっていた背後、しかもその頭上からの攻撃に対し反応できなかった。

 悪寒を感じた直後には、ガクシの投げたスフィアが俺の背中を捉えていた。


「ぐおっ!」


 さっきのように裏技での対応や、正面から捕球をする余裕など一切無かった。

 スフィアが当たった威力で俺は吹き飛び、そのままガードレールに叩きつけられた。


『プレイヤー・ガクシが敵一体を撃破しました』


「今度こそ勝っ……――がはッ!!」


 その一連の流れは、俺がまさに描いた通りの理想的な展開だった。

 俺がガクシの投げたスフィアに当たり、それをベルがアウトコールをし、その直後に――


「どーん」


 ミモちゃんの投げたスフィアが、勝ちを確信したはずのガクシの脇腹に突き刺さっていた。


「そんな……なぜ…………?」

「ダブルドッジだよ。制限時間が残り五分を切った瞬間、スフィアが追加されるルール。俺はそれを利用させてもらった」

「ま、まさか!」

「そうだ。俺がわざわざお前にベラベラと長話をしていたのも、二度もスフィアを渡して煽ったのも、制限時間を調整してこの瞬間にお前を仕留めるためだ」


 実際の話この方法以外で、ガクシの能力に対抗する術がなかったのが本音だ。俺とミモちゃんがスフィアを持って、二人で戦ったとしても警戒された状況では仕留められない。

 だから俺を倒した際に生じる、この隙を突く方法しかなかった。


「くそ……くっそおぉ!」


『プレイヤー・ミモが敵一体を撃破しました。アッセンブル4thの勝利です』


 ガクシがアウトとなり、フィールド内にサイレン音がけたたましく鳴り響いた。

 そして試合終了の合図と同時に、フィールドに残っていた俺たち三人はバトル待機室に一斉転送された。


「ナイス、さっすがミモちゃん」

「コガネもなの」


 俺とミモちゃんはゲーム内のバトル待機室でハイタッチを交わした。

 きっとミモちゃんのことだ。俺が最初からこういう展開に持っていくことも、視野に入れていたんだろう。

 その後、ゲームからログアウトした俺はHMDを外して天井を見上げた。



「ふぅ……」


 抜ける緊張感と共に大きく息を吐いた。当然だがこれだけ集中してゲームをしたのは初めてだ。正直マジで寿命が縮まった気がするぞ。

 しばらく勝利の余韻に浸って個室から出ると、そこには音遠と宗介、そしてミモちゃんが待っていてくれた。


「やりましたね。桜庭君!」

「流石は僕の永遠のライバルだ(ファッサー)」

「だ、誰がライバルだっつうの」


 ゲームの中なら平気でも、こうしてリアルで勝利を喜び合うのは何か恥ずい。そのせいか素直に喜んだ表情を浮かべることが出来なかった。不器用で御免なさい。

 気恥ずかしさに頭を掻いていると、室外で待っていた本城さんが戻ってきた。


「皆さま、優勝おめでとうございます」


 手短に優勝の賛辞を述べた本城さんは、鞄の中からタブレットを取り出して液晶画面をこちらに向ける。


「あなた方が優勝した時に、こちらの動画を再生するよう会長から仰せつかっております。ご覧になられますか?」


 またかよ。ていうかどうせ見るんだから、その確認いちいち要らないと思うんですけど。

 一応、音遠に目配せをし確認を取った俺は、本城さんの問いに頷いて答えた。


「では……」


『優勝おめでとう。本来なら私はその場に立会い、直接君たちと話すべきだったのだろう』


 モニター越しに見る音遠の親父さんは、真面目な表情でそう語りだした。

 その動画は時間にしてわずか一〇分程度のものだったが、見終えた後は誰もが呆然とし、現実を受け入れられないままだった。

 俺なんかショック過ぎて、怒るどころか意識が飛びかけたほどだ。

 ただ結果だけ見れば、こうなって良かったと思えなくもなかった。


 それでもやっぱり腹は立つけどな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。