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神滅のヘッズベル  作者: くろえ
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第28話 裏ヘッズベル大会開幕

 ガクシ達と戦ってから、あっという間にその日はやってきた。

 時刻は二一時、あと一時間もすればヘッズベルの裏大会が始まる。俺は高鳴る鼓動と、逸る気持ちを鎮めるようにして星空を眺めていた。

 音遠をリーダーにして参加を申し込んだ裏大会の会場は、ゲームを運営しているスピーシーズ株式会社の所在地である新宿。

 俺は電車に揺られながらそこへ向かっていた。他の三人とは現地で合流する予定になっている。なぜ現地集合にしたのかといえば、それは皆への最後の確認だった。


『本当に後悔しない、覚悟ができた奴だけが来る』そういう約束をした。


 今にして思えば俺は本当に性格が悪いと思う。あんな言い方をすれば、逃げ出した奴は腰抜けだと、暗に言っているようなものじゃないか。だから俺は本当にこれで良かったのかと考えてしまう。覚悟が足りてないのは俺なのかもしれないと。

 その夜は珍しく星がよく見えた。都市部では明るすぎて中々見えない、蟹座のアルタルフが一際綺麗に輝いていた。確かアラビア語で『獅子の一瞥』とかいう意味がある星らしい。昔プレイしていたオンゲで、ミモちゃんが『一番好きな星なの』と教えてくれたことを憶えている。

 負けたらマジで地下強制労働なのだとすれば、星を見るのもこれが最期になるかもな。負けた時のことなど考えたくはないんだけど。


 京王線新宿駅で降り、改札から出てそのまま目的地へと足を運んだ。

 夜更けも近いというのに、駅前はさすがに人が多い。家路に着いて駅の中に入っていく人々の波に逆らい歩く。雑踏の中から離れていくと、現実離れした賭け試合に参加するという実感が強くなり、そして重くのしかかってきた。心なしか本当に身体が重い……まるで小学生ぐらいの子供に背中から抱きつかれているように重い。


「って――、ミモちゃん何してるんですか……」


 俺の腰に腕を回して抱きついていたのはミモちゃんだった。しかも以前に樺山邸で見た時と同じゴスロリ姿だ。いや可愛いけど、ここは原宿じゃねえんだぞ!


「やぁ、遂にこの日が来たね」

「宗介」


 一番来ないかもしれないと思っていた宗介が現れた。どうやら杞憂だったようだ。


「ここか――」


 スマホのナビアプリに従い辿り着いた場所は、オフィス街の一画にある何の変哲もないビルだった。そんでもって音遠がそのビルの前で待っていたのだが、何故か就活中の大学生みたいなスーツ姿だ。


「おっす、どうしたんだ? その格好」

「……あなた方は随分とラフな格好ですね。こんなオフィス街で私達みたいな学生が、普通の服装でいたら怪しまれるじゃないですか。当然の変装です」


 俺は薄手のパーカーにジーンズ、スニーカーという普段通りの服装だし、ミモちゃんはゴスロリドレス。宗介も俺と似たようなカジュアルスタイルだ。多分、宗介と俺とじゃトータル価格では全然違うのだろうが、ファッションに疎いのでその辺はよく分からん。

 にしても、音遠の格好は無駄にエロく見えてしまう。

 顔はいまさら言うまでもないが、豊満な胸に細くくびれたウエストを包むレディーススーツ。

 そしてスカートからすらりと伸びた白い足が高校生とは思えない大人の色香を感じさせる。まるで雑誌の表紙を飾るモデルみたいだ。俺の趣味としては黒系のパンストを履いていればベストだった。とマジマジと音遠の御御足を見ていると――。


「桜庭君は、どちらにしても通報されそうですね」

「うっせぇ」


 ビルの中に入った俺達は、音遠の後に続いてエレベーターで地下三階へと降りた。


「お待ちしておりました。本日の案内役を務めさせていただきます、本城と申します」


 恭しく頭を下げて、俺達を出迎えてくれた案内係の本城さんに従い、地下倉庫のような場所を抜けた先、そこにはドーム状の大きな部屋があった。さらに人数分の個室があり、中にはヘッズベルをプレイするためのパソコン一式が用意されていた。

 見た目はネットカフェの完全個室に近い感じだな。


「全ての個室は防音処理されています。不正防止の為、連絡はすべてゲーム内のボイスチャットを使用してください」

「俺達以外の参加者は?」

「他の皆様は、別の場所からログインすることになっております」


 おそらく他の参加者と顔を合わせないように配慮しているんだろう。


「では皆様、あちらに」


 ゲームをプレイする上での粗方の説明を終えた本城さんは、「最後に」と一つ前置きを入れ、ごそごそと手持ち鞄の中から一枚の紙を取り出した。


「こちらが本大会のトーナメント表になります。実際にゲーム内でも告知されますが、先にご確認いただきますよう宜しくお願いします」


 それぞれに配られたトーナメント表を見た俺達は、一様にして言葉を失っていた。


「…………」


 それは悪意以外に何も感じない組み合わせだった。

 出場するチームは全部でたったの9チーム。

 これは後で聞いた話だが、さすがに債務者の中で人生を引き換えにして、一攫千金を狙うために参加する勇気のある奴はそう多くないらしい。それにこの大会は当然違法だ。

 あまり大勢の参加を許せば秘密が公に晒される可能性もある。厳正な審査の下に、あらゆる誓約をさせられた上で初めて参加資格を得られるのだという。

 しかし、その中で1チームだけは決勝まで完全シードという図になっていた。

 そしてそのシードこそが〝赤き制裁〟だった。

 さらに俺達の〝アッセンブル4th〟を含めた8チームの組み合わせも、これまた妙な感じになっている。


 具体的にはこうだ。


■第一試合・『シャッキング』対『新宿駅西口』

■第二試合・『世紀末返済者伝説』対『公園が自宅』

■第三試合・『第一試合勝利チーム』対『ヤミイズル刻』

■第四試合・『第二試合勝利チーム』対『ラブリーマイ円ジェル』

■準々決勝・『第三試合勝利チーム』対『第四試合勝利チーム』

■準決勝・『第五試合勝利チーム』対『アッセンブル4th』

■決勝・『準決勝勝利チーム』対『赤き制裁』

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