第24話 策謀と看破
ネオンがアウトになり、その場に残された俺は焦った。スフィアもすぐさまカブラギに回収され絶体絶命な状況。
「これでお嬢の仇はとった。次はお前の番だぜ……ヒャハ!」
「くっ!」
カブラギとカカオが俺を挟み撃ちにする陣形で回り込んできた。俺にショットを避けられても、直線上にいるカカオが取りこぼさない限りスフィアは手に入らない。しかし捕球力の高いカカオがそんなミスをするとも思えない。
「死ねやッ!」
カブラギがスフィアを投げた瞬間、俺は自身のヴンダーである〝軌道〟を発動させた。
いや、正確にはオートで発動するようにしていた。ヴンダーには能力毎にレベルが存在し、〝軌道〟はレベル2になると敵の攻撃に自動反応してスフィアの軌道が視えるようになる。
そのお陰で初撃はなんとか回避できた。この自動で発動するレベル2〝軌道〟の良いところは、敵が投げたスフィアが俺を狙ったものか、単なるパスか判別できるところだ。
パスコマンドで投げられたスフィアの軌道は見えず、反応しないようになっている。
しかし攻撃され続ければ、WPがガリガリ削られていってしまうという弱点もあった。
「オラァ! チョロチョロすんな――ッ!!」
俺は林の中を走り、木々を盾にして逃げ出した。もしこれが開けた場所だったら完全にアウトだったかもしれん。
俺は走りながらボイスチャットでミモちゃんに語りかける。
「ミモちゃん、エリアBの9で合流しよう」
「アイアイサーなの」
後ろから追撃してくるカブラギとカカオだが、二人とも俺より俊敏性は低いようで追いつかれることはなかった。
合流場所に着き、俺は周囲を見渡してミモちゃんを探す。
「ミモちゃん!」
「コガネ……」
「すまねえ、ネオンがやられた。俺の読みが浅かった」
もっと慎重にいくべきだった。なぜ一旦退いたはずのカブラギが他の二人とは離れた場所にいたのか、そこにもっと疑問を持つべきだったんだ。
「どうするの?」
「正直な話、お手上げだな」
俺のショットを軽く止める捕球力を持つカカオ。さらに俺たち二人では捕球できない投擲力を誇るカブラギ。この二人だけでも厄介なのに、さらにマスターのガクシも残ってるわけだ。
「考えてる暇が……無いッ!」
カブラギとカカオがもう追いついてきた。
俺はスピードこそ奴らより速いものの、レベル差のせいでスタミナゲージの総量と、回復速度は若干少ないし遅い。どちらにせよ追いつかれるのは時間の問題だった。
「見つけたぜぇ!」
「カブラギ、今ならやれるよ!」
「わかってんよォ!」
雪原に深く踏み込み、弓の様に身体をしならせたカブラギが投擲体勢に入る。
俺は〝軌道〟の能力で、あと数回はカブラギの攻撃を躱すことが出来る。だがミモちゃんはそういうわけにはいかない。だからカブラギは、確実にミモちゃんの方を狙ってくることは分かっていた。
「掛かった!!」
俺は即座に〝磁力念動〟を発動させる。そして引き寄せた氷塊がスフィアを弾き飛ばした。
「ハァ!? 氷だと!?」
「そいつは此処へ来る途中でミモちゃんに持ってこさせた湖の氷だよ!」
氷に弾かれたスフィアが宙を舞う。俺はそれを空中で掴み取ると、カブラギに狙いを定めた。
「させないよ!」
俺とカブラギの間に割って入ってきたカカオ。
だがそれも想定済み――。
立て続けに〝磁力念動〟を発動させ、俺はある物を引き寄せた。
すぐに地鳴りが響きだし、怒涛の勢いで全てを飲み込む雪崩となってカカオに迫ってきた。
「うっそ!? これは――ッ!」
俺が引き寄せた雪崩に押し流され、カカオが雪に飲み込まれていく。これで俺の障害になっていた奴は排除した。
〝磁力念動〟はレベルを上げることで磁力がより強力なものになる。
ヘッズベルではフィールド上にあるオブジェクト全てに、重量と立体面積が設定されており、操作系のヴンダー能力者にはそれらが視えるようになっている。このフィールドでもそれは同様で、丘に積もっていた雪はオブジェクトとして利用できる仕様だった。
「カカオ!」
カブラギは自らも雪崩に足を取られて身動きが出来ずにいた。盾となるカカオがいなくなったことで、焦りその場を離れよう足掻く。しかしもう遅い。
「逃がすかぁ!!」
俺は空中からスフィアを投擲し、今度こそカブラギを仕留めた。
「チクショ――ッ! 覚えとけよォ!!」
『プレイヤー・コガネが敵一体を撃破しました』
これでまたイーブンまで持ち込めた。後はカカオとガクシの二人を残すのみ。
「カブラギがやられた!?」
雪の中から這い出てきたカカオが、唖然としながら空へ上がる光の粒子を見上げていた。
カカオは動揺していた。それはカブラギがやられたからという理由だけじゃない。俺にはそれが分かっていた。
「へい、強豪クランのメンバー様ともあろう者がチート行為は感心しねえな」
「なっ、何やと?」
「とぼけても無駄だぞ。俺の眼は誤魔化せねえ」




