第16話 お父さん
今回ちょっと区切りが難しかったので短めです。
ヘッズベルの裏大会に出場することを決めた日の翌日。
俺は学校を休んで、都内にある高層ビルに来ていた。ビル内は平日ということもあり、社畜の皆様が慌しく出入りしている。今日もご苦労さまです。
「すみません、天驚院グループの会長さんに会いたいんですけど」
美人の受付嬢さんは俺の唐突な言葉に戸惑っていた。
「あっ、そ、そのお名前は? 失礼ですがアポイントメントはおありでしょうか?」
「桜庭黄金です。アポはないっす」
「それでしたら、誠に申し訳ございませんが……」
「お宅の娘さんから依頼されたって伝えてください。それで駄目なら帰ります」
そして待つこと五分、
「お待たせ致しました。右手のエレベーターで四八階まで御昇りください」
俺は言われた通り、エレベーターでビルの最上階まで昇った。
そして自動扉が開いた先は高級ホテルのような内景の通路だった。
床には長くて赤い絨毯が真っ直ぐに敷かれ、等間隔に小型のシャンデリア。どれも無駄に金が掛かってそうな嫌味な場所だ。
そして通路の先には再び受付窓口があった。
俺はまたまた美人なお姉さんに案内され、会長室の前まで辿り着いた。
「会長、失礼します。お客様をお連れしました」
部屋の中に入ると、東京の景色を一望できようかという大きなガラス窓の前に、スーツ姿の男が立っていた。
「君が、桜庭黄金くんか」
「ども」
「初めまして。天驚院 一貴です」
ゆっくりと俺の方へ向き、音遠の父親が簡潔に自己紹介をした。
流石は音遠の親父さんといった具合に、精悍な顔つきをしている。第一印象は冷たくて、少し寂しそうな感じだった。
音遠から聞いていた話とは少し印象が違ったな。
「早速だが用件を聞こう。これでも忙しい身でね」
「じゃ手短に。お宅の娘さんからヘッズベルの裏大会に誘われたんすけど、賞金が一〇億円でるらしいじゃないっすか。あれって本当なんですか?」
「……娘が嘘をついていると?」
「そういう訳じゃないっすけど、又聞きみたいなのを鵜呑みするほど能天気でもないです」
「安心したまえ。ヘッズベル・エヒトは多くの投資家、主に欧米のヘッジファンドによって企画が成立しているマネーゲームだ。君には想像もできないほどの巨額が動いている。そう、賞金の一〇億など端金だと思えるほどにね」
音遠の親父さんは淡々と語り、冷めた眼差しを俺に向けた。
心なしか怒っているように見える。だけどその怒りは、俺というより別の何かに向けられているように思えた。そもそも怒られる謂れもないしな。
「なら問題ないです。賞金が貰えれば文句はないっす」
「そうか。では私からも一つ訊いておきたい」
「なんすか?」
「いや…………やめておこう。意味のないことだ」
そんな言い方されると、すっげえ気になるんだけど。まぁいっか。
とりあえず大会賞金の確認は取れた。後は大会に備えてレベル上げをしていくだけだ。
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