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総合ダンジョン管理術式『Solomon』保守サポート窓口 〜ミミックは家具だって言ってんだろ! マニュアル読め!〜  作者: score


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268 新人ローテーション研修 攻略サポート編42



「ということで、ちょっと想定外が重なりましたが、私達は元気に攻略サポートの仕事をこなすことにしましょう」


「はーい」

「はい」

「わかりました」


 途中、お目付役のメガネが急遽ダンジョン管理のバックアップに回るという、想定外のアクシデントはあったものの、それ以外は想定を外れることなく今回の研修先のダンジョンへと辿り着く事ができた。

 今回のダンジョンにおいても、ゴブリンダンジョンのように現時点では地上に入口は設けられていない。

 研修中は、臨時で作られた入口前広場からダンジョンに挑むことになる。


 また、ドラ子達の能力値に関しても、前回の初心者想定ほどではないにせよ、中堅のダンジョン探索者くらいに落としたアバターを使用する予定だ。


「前回はそんなに気にしなかったんですけど。能力制限されたアバターになると、気が向いた時に飛べないのが難点ですよね」


 ドラ子からしたら、初心者だろうが中堅だろうが、元の自分と比べたらどちらも大差ない雑魚なので、その点はもう諦めている。

 のだが、普段の自分がやろうと思えば呼吸をするようにできることが制限される、というのはなんとも言えない不快感を感じざるを得ない。


「ドラ子ちゃんの気持ちは分かるけど、普通の人間って飛べないから、そこは我慢ね」

「そもそもそれが良く分かんないんですよね。飛ばないことの利点ってなんですか? ないなら飛べば良いのに」

「そんな質問をされたのは初めてかなぁ」


 今のカワセミの心境としては、鳥に『なぜ人間は空を飛ばないのか?』と尋ねられた感じだろうか。

 人間はそういう風に進化してこなかったのだから、仕方ないと言うしかないのだが、鳥からすれば『だったら飛ぶように進化すればよかったのに』というところか。


 ドラ子の場合は、これが鳥ではなくドラゴンだから質が悪い。

 必要とあらば戦いの中で進化する系のドラゴンなので尚更だ。


 ちなみに言うと、カワセミは飛行魔術の免許を持っているし、飛ぼうと思えば普通に飛べたりする。

 そんなカワセミが返答に窮しているところで、横からボソリと一言。


「保守サポート部は、そんな上から目線でしかダンジョンのことを考えられないのか? 顧客目線が抜けていては、さぞクレームも多いだろうに」

「いつも上から目線の天丼に言われると普通に腹立つわぁ」


 ドラ子の疑問に、止せば良いのに思わず突っ込んでしまうのが天丼の性であった。

 伊達に、鼻毛を抜かれていない男である。



「さて、お喋りはそこまでにしてそろそろ行きましょう。一応、今回は調査優先で、三人をそれぞれ先頭にしてみて、適宜入れ替えながら進んでみましょうか」



 ダンジョン攻略用のアバターの設定を終わらせたカワセミが、準備を終えた新人達に向けて言う。

 装備に関しては、事前に相談したとおり。

 軽装に長い棒のドラ子と、しっかり冒険者セットを背負って来たマイマイと天丼である。


 その三人の姿を見て、カワセミは決めた。


「最初は、ドラ子ちゃんを先頭に。どれくらいの罠があるダンジョンなのかも分からないし、特徴を掴むまではガンガン引っかかってくれた方が、楽かもしれないので」

「任せてください! 私の華麗なるウォーキングテクニックで、数多の罠を悉く起動してやりますよ!」


 と、現実のダンジョン探索では絶対に聞けないような発言を合図に、フォーメーションは決まった。

 ドラ子先頭、カワセミとマイマイが中に入り、天丼が最後尾。ひとまずこのスタイルで、新人三人はローテーションで入れ替える。


 道中で発生した戦闘に関しては、少々大人げなくカワセミが指示に入って処理していく予定である。

 本攻略になったら改めて役割を演じるが、今は調査の段階である。

 調査でも、全員冒険者スタイルだと、戦闘時間が間延びしやすいのは欠点か。


「野郎共! 準備はいいなー! ドラ子探検隊出発!」

「あのドラ子さん。このパーティに野郎は一人しかいないんですけど」

「言葉のあやだよ」


 マイマイに微妙な表情をされながら、ドラ子は気を取り直してダンジョンへと向かう。

 此度の中級ダンジョンは、仮初めの入口ゆえか冒険の扉風のゲートになっている。

 ドラ子は先の見えない渦の中を、意気揚々と進んで行き。




「え?」




 そのまま、入口から一メートル半程度進んだ先のウェルカム落とし穴で、真っ逆さまに落ちていった。



「人間は何故飛べないんですかぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………」



 ドラ子が落ちて行く様を、入口から一メートル半の足場に残った三人がずっと眺めていた。

 眺めて、眺めて、十数秒と眺め続けて。

 ドラ子の叫びも聞こえなくなるくらいまで眺めたところで、カワセミが気付く。



「これ、奈落の終点が設定されてない……ドラ子ちゃん、術式の許す限り無限に落ち続けてるわ……」


 いきなり、とんでもねえ穴があったものだった。

 ちなみに、Solomonのデフォルト設定では、下に階層がある場合は落とし穴の先は一階層下。下に階層が無い場合は、普通の人間は生身で上って来れない程度の、10mくらい下に足場ができる。


 だが、その落ちた先で何かを作ろうと考えた人間が、とりあえずその底を無くし、そのまま何も作らないでいると、こういう無限落ちトラップになったりする。

 Solmonの名誉のために言っておくと、ちゃんと警告は出るし術式の許す範囲なので底の設定を消しても、真の底はある。


 が、そんなものを無視し、奈落を開けたことすら忘れたら、結果としてこういうことになる。

 大した事の無い広さのダンジョンの筈なのに、無駄に領域が確保されていたりする場合は、この手の設定ミスを疑うのが基本だ。

(ただし、たまに本気で『どこまでも落ちる穴』を作ろうとする狂人がいるので、不具合には認定できないのが、もどかしいところである)



「メガネ先輩。ドラ子ちゃんのサルベージお願いします」



 多分見ているだろうメガネに、ルール違反かなと思いつつカワセミが頼んだ。

 その数秒後、唐突に開いた天井の穴から、真っ逆さまになったドラ子がドスンと落ちてきた。

 頭からいった。



「いぎゃぁあああああああ! 死ぬ程いてぇえええええええ!!」


「なんであの高さから落ちて(?)死なないんだ……」



 天丼が思わず呟いてしまうのは当然であろう。

 が、そこはメガネの仕業である。

 ドラ子の落下速度を現実的な落とし穴に落ちたくらいの数値に直してから、改めて天井から落としただけである。


「ドラ子さん。頭大丈夫ですか?」

「ふ、ふふふ」


 かつてカワセミが言った言葉と同じような言葉をマイマイが口走り、それをどう受け取ったのか、今のドラ子は燃え上がっていた。



「絶対、このダンジョンを完膚なきまでに叩き潰してやる! ボッコボコに攻略し尽くしてやるからなぁ!」


「ドラ子ちゃん。これお仕事だから、私怨は後にしてね」


「はい」



 そして燃え上がった復讐の炎は、お仕事という現実に水を差されて、割とすぐに治まったのだった。



今日も保守サポート部は、不具合にしか見えない設定ミスと戦っています

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― 新着の感想 ―
感情の発露より仕事を優先するドラゴン… ドラゴン基準だと立派な社畜だろうな、きっと…
美少女や美幼女が落とし穴に落ちて、悲鳴を上げ続けていることでしか得られない栄養があるとかないとか・・・・・・・・・・・・・・・・? それはそうと、美少女や美幼女が自分から身も心も差し出して身体…
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