変態ナルシー
カンジュはお母さんとアテナを見て、誰が見ても解る位にパァーと明るい表情に薄らと紅色に頬を染めた。
キッモッ!
自分の母親に懸想の表情を隠しもせずに表に出すとかバカじゃない?いやバカだったわ。
「エリーゼ様。幼き日々より私は貴女を想わない日々はありませんでした。」
うっとりとした表情がキモい。私キモいしか出て来ないって語彙力が壊滅しているわ。
「それは無いんじゃない?だってジェシカの娘の事好きだったんですよね?あの子が産まれる前は、アテナの後を追っていたわよね?ジェシカが怒っていたじゃない?『アテナより私の方がキレイ。』だって。あれって、貴方5歳位じゃなかった?」
ん?5歳で女性を追い回す?でもアテナ森に住んでいるよね。5歳児が森に入ったの危なくない?
女性の為に?ある意味関心するわ。並の精神では出来ませんよ。
「私一時期ハンスの領内に住んでいたのよ。だから森迄はこの変態来てないわよ。エリーゼが心配で側に居たのよ。お人好しで、騙され易いからね。」
解る!お母さん自分の事となるとポンコツになるから。
「私は変態じゃない!美しい者に目を奪われるのは人で在れば当然の事なのですよ。貴女方には私に好かれる価値があるのです。」
「あのね。貴方それ程美形じゃないわよ。エリーの側に居る男達には足元にも及ばないわよ。上には上がいるのよ。変態ナルシー。」
お母さんは目をパチパチさせてアテナを見た。
「ナルシーってどう言う意味なの?」
アテナはカンジュを見たままで
「ナルシスト、自分美人!と思い込んでいるバカの事。」
「あっ!この子の事ね。」
「だからそう言っているでしょ!エリーゼ今はシリアスな場面だらね!」
「失礼な!私だってシリアスに決めているじゃない!」
頬を膨らませてアテナを睨むお母さんを見る限りシリアスには全く見えない。多分子供を助けに来たカッコいい親のはずなのに…。残念感が…。
「さて、私の可愛いエメラディアちゃんにご無体を働いたおバカちゃん。お仕置きのお時間ですよ。」
「海馬を狙うのよ。」
アテナがボソリと呟く。海馬ってなんだ?海馬…聞いた事があるけど。何だっけ?海馬…海馬…か、い、ば?
それは脳の中に有る部位名ですよ!
記憶を司る部位ですよ!
「エリー。早く弓を拾いなさいよ。貴女に弓の使い方教えたでしょ?鏃に魔力を込めて矢を放てば、海馬迄鏃を届けてくれるから。」
「私…20年位弓を射ていないけど、何とかなるかしら?」
「ああ。伯爵に騙されて忙しかったからね。お姫様の癖にメイドやったり、寝たきりになったり。最悪他の場所に鏃が届いても大丈夫よ。見た目は何があったか解らないから。」
「そうね。じゃあ始めましょうか。」
先程から不穏なやり取りが聞こえ来てはいるけど、言葉が耳を擦り抜けていって理解が出来ていない。」
「エメラディアちゃん。早く弓を持ってね。」
お母さんが笑顔で弓の弦をビンビンと弾いている。
カンジュに目を向けると先程の蕩けた顔から打って変わり、尻を床に付けて、震えながら青褪めた顔で少しずつ後退している。
私は弓とお母さんとカンジュを交互に見て、どうするべきか思案していた。
「た…た…たす…たすけて…。助けて下さい!」
「やーよ。」
「やーよ。」
アテナとお母さんの声がハモった。
「大人しく」
「お仕置きされなさい!」
二人が示し合わせた様に言葉を繋いだ。次の瞬間
ビンッ!
と弓の弦を弾いた音が響き、カンジュの悲鳴が響き渡った。
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