どっちのエメラディア
「神殿に伯爵が居るらしいんだけど、アテナ知ってる?」
「ああ、最近大司祭にあのーお貴族様のなんて言ったっけ?何ちゃらの顔だけ星人の…次男だよね?」
全く頼りにならない情報をスプーンを咥えながら話す。
「ハマジュラ侯爵家の次男カンジュ・マーシュ・フォン・ハマジュラの事かな?」
エドが顎に手を当てて、カンジュさんを思い出すかの様に語り出す。
「もし、カンジュなら…最悪ですね。カンジュは性格が兎に角悪い。しかも貴族至上主義と来ている。貴族以外はゴミ。僕は関わり合いにはならなかったけど、人を見て付き合う。自分に利が有れば階級が下であっても取り込んで、自分の手足として使うヤツですよ。」
ラルクアン様も名前を聞いて何かを思い出した様に顔を上げた。
「カンジュは、一度捕まりそうになった事がありますよ。女性は顔を見て選ぶんですよ。ストーカーをして伯爵家の令嬢を襲いかけたんですよ。それで、神殿に逃げ込んだんです。13歳の時に。」
犯罪者が神殿の大司祭?あり得なくない?何で?
「聖女か!」
聖女?聖女って伯爵の娘エメラディアが呼ばれていたやつじゃない?エメラディア目当てだったって事?
「聖女だったら神殿に行くから?目当てはエメラディア?」
皆んなが一度私を見たが、私が首を左右に思い切り振って手も左右に振ると、
「伯爵とジェシカの娘の方か!」
エドが確信に辿り着いた様に強く言う。
「だったら、合点がいくわね。でも彼女は牢屋の中で彼が嫌いな名無し。相手にする訳が無い。そして…奴隷だった娘が、貴族以上の存在だったら?」
「欲しいよね。」
お母さんとアレクサンダーが応える。その問いと応えに私は不気味さを感じて震え出した。私が作った料理を黙々と食べていたグレッドが、食べ終えてナプキンで口元を拭いながら
「だとしたら、言う事を聞かせる事が出来る魔石の存在を知ったらどうなる?自分の魔力で石を作って血を流し込むよね?側には言う事を聞かせる事が出来る父親の血があるんだから。だから今君達がやらなければいけない事はエメラディアを隠す事と伯爵の奪還。そして大司祭を引き摺り下ろして犯罪者を裁く事じゃないかな?」
「人の娘を拉致して、こき使って魔石を作り出した人が言う事かしら?」
「だから僕は警告に来たんですよ。あの石の恐ろしさを身をもって知って頂く為に。」
今迄非常識な事をして来た人がマトモな事を言い出した。でも、皆んな信じ切れないので彼に胡乱な目を向ける。
「えっ?気が付いてないの?エメラディアちゃんと初めて会った時に森の魔石を手に忍ばせていたんだよ。結果エメラディアちゃんは、顔を赤くしていたよね?
魔石を持っている相手が、恋愛感情を希望すれば君の意思は関係なく感情は支配されるよ。それを教える為に態と魔石を作ったり、森の魔石を持ち帰らせたのに。」
あー胸がドキドキしたのはそういう事だったのか!しかし態と魔石盗ませるとか…凄い人だったのね。
エドとラルクアン様とお母さんが私を残念そうに見て、エドからはキツイ一言が飛んで来た。
「エディが危機感を持ってくれないと、守る方も守り切れないからね。もう少し冷たくなっても良いんだよ。」
「危機感は常に持っているよ。」
「危機感持って居る人は4回もやり直し人生しないから!」
アテナに珍しく怒鳴られた。
ごもっともなご意見です。
心の中で呟いた。
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