逃亡先
お昼のランチタイム終了して看板を裏返しして、いつもならここにはカヌアさん達が残ってお茶をしながら私達は賄いを食べるけれど、今日は込み入った話しがあるからと帰って貰った。だからこの場には、
お母さん
エド
ラルクアン様
アレクサンダー
精霊王
私
が居る。先日お母さんが追い返したグリッドさんがまた来た時の対策会議を開く事になっていた。賄いを作り終えて、お母さんがテーブルに料理と飲み物を出した。今日の賄いは、
ミートドリア
サラダ
レモネード
テーブルセッティングが終わるとファボさんが入って来た。最近ファボさんは、朝と夜しか顔を出さない。
お店もファボさんが居なくても回っているし、お客様の入りも良いので、収益は鰻登りらしい。だからこの時間に来るのは珍しい。
「いつも任せきりでごめんね。皆んなにも少しだけど、その内給金出すからね。」
苦笑気味に両手を合わせて言うファボさんも、シーナさんがまだ本調子では無いし、お子さんも居るから、現状は助かっている筈。シーナさんもかなり回復はしたらしいけど、お子さんの夜泣きが酷くて二人揃って寝不足で、前より回復はしても体力的には、かなりキツイらしい。二人で毎日交代で夜泣きすると、おんぶや抱っこをしてあやしているらしい。
お母さんは
「もう少しの辛抱。それも親になる試練。」
と言っている。
「今日は、ちょっと、聞いて欲しい事があって。」
ファボさんはやたらとドアの方を見る。何かあるのかと顔を動かして見るけど、ファボさん自身がドアの向こうを隠すように身体を動かす。
そして歯切れが悪い。
するとドアがゆっくりと開き、グレッドさんが入って来た。
「エメラディアちゃん久しぶり。」
片手を上げて軽薄そうに入って来た。お母さんが珍しく睨んでいる。
「ごめんね。エリーゼさん。怒らないで!僕平民だから…その…権力には…だから…。」
「ええ。解っておりますわ。権力を笠に来られたら反論出来ませんわね。」
解っている。と言う割には声は低く、到底理解している様には見えない。
「ファボさんに権力を翳して迄こちらにいらっしゃったグレッド様は、どの様なご用件でいらっしゃったのです?」
エドが私達の前に出て庇う様に聞いてくれた。
「ハンス・エディウム・ド・ラングラムについて。貴方達も彼が僕に接触して来た事はご存知ですよね。契約の魔石を持参して、亡命希望でしたが、此方の意図に気が付いた様で、居なくなってしまったんですよ。行き先は突き止めましたが、尤も彼らしい場所に逃げ込みましてね。そのご報告に来たのですが…先日追い返されてしまいまして。未来のお義母上様に。」
「だーれが、お義母上様ですって?」
さっきよりも低い声て呻る様に発した言葉に少し怖くて震えてしまったのは内緒である。
「エリーゼさんですよ。人の話は聞かなければダメじゃないですか。だからハンス・エディウム・ド・ラングラムの様な男に捕まってしまうんですよ。」
「それは同意する。」
精霊王が小さく呟く。最近のお母さんには地雷の言葉らしく、切れてしまった。
「余計なお世話です!若造が偉そうに言わないで頂けるかしら。」
「だからね。僕も協力したくて参上したのですよ。お義母上様。」
お母さんの手を取り指先に唇を当ててお母さんに視線を向ける。悔しいのか照れなのかお母さんの顔が真っ赤になった。ただ良く瞳を見たら。うん。照れじゃないね。怒りだね。と分かり易い表情だった。
「あっ。これからお昼なのかな?じゃぁ僕の分も良い?お腹空いちゃったよ。美味しい物を食べながら話すと議論し易いよね。」
違います。私達時間が無いだけです。勘違いしないで欲しい。
「ファボさんありがとう。君は帰って良いよ。もし、夜の部がお店開けられない時には、僕がポケットマネーで貸切の金額を支払うから安心して良いよ。」
ファボさんは申し訳なさそうにお店から出て行った。
ファボさんのお店なのに。ごめんなさい。
「じゃぁ僕の料理が出て来たら話しを始めましょうか。神殿に逃げ込んだハンス元伯爵の話しをね。」
精霊王以外全員が、グレッドを目を瞠いで見つめた瞬間だった。
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