グレッド
「随分と楽しそうな笑顔ですね。久しぶりに拝見致しました。グレッド様。」
音も無しに後ろに現れた僕の従者ワンズに顔を向ける。
「聞いていたよりも美人じゃないか。母親も二人も子供がいるとは思えない美女だ。ハンスの目はアテにならんな。お年甲斐がある。気になるのは、シエル以外の男達だな。ハンスに調べさせろ。」
ワンズは恭しく腰を折る。
「グレッド様はいつ迄こちらにおいでになるのですか?」
いつまで。それは手に入れる迄だろう。
「僕は綺麗なモノが好きなんだ。彼女エメラディアなんか最高じゃないか。ハンスは許可しているんだ。だったらご招待しなくては。ただ…男性達の中に精霊王が居ない事だけは祈るなあ。」
「しかし、此方に来ようとしても入れなかったらしいじゃないですか。」
「それは、これを知らないからだろう。知らないなら教えてあげたら良いんだよ。ただ、信頼を得る為の時間は必要だけどね。」
手の中にある紅い石を親指と人差し指で掴む。
「こんな石があったなんて。知られたら精霊達は人間の奴隷にも成り兼ねないですよね。」
この石はこのフェビス国の伯爵であったハンスが亡命の手土産に持ち込んだモノ。これを所有していれば、いくら精霊王であっても持ち主に干渉が出来ない。だから、精霊王はサイノスを訪れる事が出来てもラングラム領地のラグナムには行く事が出来ない。
そうならない様に森に面して領主の血を閉じ込めた魔石と精霊王の血を閉じ込めた魔石を各地の何処に精霊王が封印しているものをハンスの父親が探し当てて精霊王の石だけ盗み出したらしい。だから精霊王は領地に入れなくても領民は森へ入る事が出来ていた。
しかし、今は精霊王が許可していないので、森に入る事は出来ない。そして精霊王の血を閉じ込めた魔石は、娘やエメラディア達が所有すれば、精霊王の干渉を受けないらしい。
「ハンスには今回グラム国に有利に動けば、欲しい身分を与えると伝えてあげて。」
ワンズは、頭を下げてハンスの元へと向かった。
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