抜けている人
「エメラディアちゃんママ帰りますね。気を付けて帰るのよ。男は狼だから特に気を付けなさいね。」
閉店寸前の店の中には、精霊王とエドとラルクアン様が残っていた。どうやら二人はアパート迄の護衛をしてくれるらしい。アパート目と鼻の先だけど。
精霊王は面白くなさそうな顔をしている。
昨日は一緒に帰ったのに、お母さん精霊王置き去りで良いのかな?
最後のお客様の食器を洗い終えて食器棚にしまうと、エドとラルクアン様の間に座っている精霊王は何かを二人に告げていた。けど内容が聞こえて来ない。集音の魔法でも使おうかと思案していたら、精霊王は私に笑顔を見せて消えた。
二人にアパートの入り口迄送って貰い帰って貰おうとしたが、
部屋の安全を確認してから!
と二人に押し切られて、鍵を回すと開いていた。流石に二人が居てくれて心強かった。
二人を交互に見てドアを勢い良く開けると
「あら、早かったわね。お帰りなさい。エメラディアちゃん。」
エプロン姿のお母さんが当たり前の様に食事の用意をしていた。
「これどうしたの?これを作る食材無かったでしょ?」
「買って貰ったのかしら?うーん。お店のお客様が、外で私を待っていらしたらしくてね。エメラディアちゃんに精の付くものを食べさせてあげたいから買い物に行くと言ったら案内をかって出て下さったのよ。行く先々の方達が、持って行って下さいって渡して来てね。ママお金お支払いしていないのよ。でも、好意は受けるべきだと仰るから。何方のお支払いか解らないのよ。」
困った風に言うけれど、今私が一番困惑しています。お母さん。先ず、男は狼だから気を付ろと言った貴女は何故気を付けないの?支払い誰にすれば良いの?これ幾らなの?
身体から嫌な冷たい汗が全身の水分を放出しているのではないか?と言う位出て来る。
そう言えば伯爵家のメイドさん達は言っていた。
変な所が抜けている。
これかぁ。頭を抱えてしまった。誰にでも欠点はある。お母さんの欠点は人を疑わない所かあ。
「そう言えば貴方達はどうして此処へ?」
「精霊王から、エリーを守って欲しい。と言われてエリーゼ様も方向音痴だから帰宅出来て居なかったら探して欲しいと…。」
方向音痴?でもお母さんずっと私に着いていたなら、解るでしょ?それは無いわよ。今日だって買い物後ちゃんと此処に…何で居るんだろう?先ず順を追って聞こう。
「方向音痴ではないんじゃない?此処にいるし、幽体で着いて回っていたんでしょう?」
「肉体と精神が分裂していた時には、エメラディアちゃんは私と親子と言う絆があるから、手繰り寄せれば、逸れ無かったわ。でも…肉体の時には…無理よ。だから目覚めた後違う場所に転移してビックリしたのよ。買い物の時には着いて来てくれた方が此処迄送って下さったのよ。優しい方ね。」
可笑しい。お母さん!何でその人私のアパート知っているの?怖いから!
「何故その方は、エディの家を知っていたのでしょうか?」
「毎日見守っていらしたのですって。素晴らしい方ね。護衛騎士よ。しかも無料ですって。」
お母さん!それはストーカーです!
どうするんですか!
「あの…言い難いのですが、騎士の経験から多分その方はストーカーかと思われます。」
本当に言い難くそうにラルクアン様が言うとお母さんの顔が鬼の様に変わった。
「何ですって!エメラディアちゃんを害そうとする輩ですって!私許さなくってよ!」
「いや、今は違うと思いますよ。寧ろ対象が母君に移られたかと。」
エドも苦笑しながら話すと
「まあ!まあ!まあ!何て見る目が無いの。私のエメラディアちゃんはこんなに美人で素敵なのに。おバカじゃなくって?」
何故か二人が頷いている。お母さんも言っている事支離滅裂だし。ふとベッドの方へ視線を向けるとベッドの下に長細いガラスケースにクッションやらシーツやらが入っている。某童話の世界で義母に毒林檎食べさせられてガラスの棺に入った人の様な…
「ガラスの棺?」
「違うわよ。あれは水晶のケースよ。こうやって入るのよ。」
いや、素材がガラスか水晶かの違いだけでそれは棺ですよ。お母さん。後ろに居たラルクアン様とエドを見ると顔が引き攣っている。
ですよねー。人ね寝室に棺なんか置かないで欲しい。
「だから昨日言ったじゃない。準備して来るって。水晶は浄化作用があるから私の身体を就寝時に癒してくれるのよ。だから、明日も元気でいられるわ。嬉しいわね。エメラディアちゃん。」
なーんにも嬉しくないし、寧ろ私の精神崩壊しそうですよ。お母さん。寝る迄お母さんと二人はキツイと思い、お母さんに二人の夕飯も出して貰って無理矢理帰るのを引き留めた。
二人は付き合ってくれて、お母さんに偶に睨まれながら食事をして帰宅した。
お風呂に一緒に入ると言うお母さんを説得して、別々に入浴してやっとベッドに潜り込んた時には、お母さんの素早い寝息を聞いて、脱力した。
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