帰城
王太子ギルバート視点になります。
宿で毎日待ち続けていても、シエルからは報告が全く無い。顔を合わせても
『まだ何とも…。』
とはぐらかす。エメラディアかどうかを確認しに行っているのに、これだけ時間を掛けても解らないなんて事があるのか?そろそろ王都に戻らないと、執務が溜まってしまう。流石に今日には返答を聞きたい。そう考えていると、ノック音が響いた。近衛騎士がドアを開けて中へ促し入って来たのは、待っていたシエルとフードを目深に被った者だった。
誰だ?
怪訝な顔をしたのは仕方がないと思う。一応王太子ではあるのだから、不用意に俺が許可もして居ない人物を連れて来るなど、あってはならない事なのだから。
良い人だとシエルが思っても、暗殺者だったらたまったものではない。
「許可を得ずにお連れした事は謝罪を致しますが、王太子であってもこの方の来訪を拒否する事は不可能だと思います。」
そうシエルが言うとフードの者はゆっくりとフードを首裏へと降ろした。お目見えした人物は俺が絶対に拒否が出来ない精霊王だった。
慌てて、片膝をついて、首を垂れた。
「久しいな。ギルバート王子。そちは何故にこの地にいるのか?」
精霊王なら解っているのではないだろうか?でも敢えて俺の言葉で言わせたいのか?
「私はエメラディア様を花嫁に迎えるべくお迎えにあがりました。しかし、未だエメラディア様が見つからず、この地に留まっております。」
「エメラディアは、それを望んでいるのか?」
彼女は望んで居ない。王家には絶対に嫁がない。と宣言をしている。
素直に話せば、何と言われるか。しかし、精霊王を欺く事は絶対にしてはならない行為だ。
「エメラディア様は、王家に嫁ぐ気持ちは…ない、…かと。」
「だろうな。そちは二度もエメラディアを殺害している。そんな危うい者と添い遂げるなど無理だ。ならば何故諦めない?」
そんな事は決まっている。俺より上の王意だからだ。嫌な汗が額に滲み出す。
「王家は、エメラディアの意志を無視するのか?それは即ち私を敵に回す事に繋がる事を理解しているのか?」
「………いえ。……」
王は精霊王との繋がりだけを求めて、精霊王の意に反する事だと言う事を忘れている。
「ギルバートよ。そちはエメラディアに好意を持っているのか?」
「好ましい方だと思っております。」
好ましいか。精霊王は俯き苦笑顔で呟いた。
「好ましいと、好きは違う属性の感情だ。そんなヤツには頼まれてもエメラディアは嫁には出さん。嫁に欲しいと思うなら唯一無二の存在になってからが、スタート地だ。」
彼女に対してまだ精霊王が言う様な感情は無いとは思う。解っている。でも俺がダメならセラフィムをと王は考えている。その考えが変わらない限りは無理だ。
「これを王に持って帰れ。これを見せれば王は納得する。」
俺は両手を伸ばして受け取った。
精霊王が否と唱えている事は、王であっても覆す事は出来ない。此れを持って帰城を決意すると、声が響き渡った。
『見つけた!待ってて。直ぐにいくから。』
その声に素早く反応したのは精霊王だった。
天を仰ぎ見ると消えた。
驚き暫くその場を見つめていた。
それまで静かに見守っていたシエルが、殿下。と声を掛けて来た。シエルの方に振り返ると手紙を差し出して来た。
「魔法省に此方を届けて頂けますか?退省届けになります。」
この魔法使いは何を言い出したのか?理解が出来なくて見つめていると、
「私が私で有る為の唯一無二の存在をやっと見つけたのです。私はその為に魔法省に入りました。その為に私は、彼女の側に居ようと思います。」
そう言うと、勝手に退出してしまった。
俺は2通の手紙を持って帰城する事になった。
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