✿ 《エリナ.》 ✿
「おはよ〜お父さん。あれ?新しいお花? 綺麗だね〜それ。」
「おはよう紺。早いなお前は。」
「うん。僕狐だからね。後狸だし。後剥製だし。」
「剥製?ーーーーそういや何でブルーレザーフォックスは『剥製』なんだ?」
「朝は『おはよう』だよ、“居候”君。『おはよう』。」
父息子の朝のひとときを“邪魔”された息子狐の“毛”が逆立った朝だった。
本日は、俗に言う『休日』日曜日で在る。紺は出掛ける予定だった。
✻ ✻ ✻
変わった事と言えば、ひとつ。華月家の弟子“居候”が、約一名、減っていた。
志願して来たのだ。師、陽藍は許可したが、其れは此の話とは余り関与しないので、又後日。
紺と入れ替えで、木ノ下 なつのが訪れた。張り切っていた。陽藍はほほ笑んで、迎え入れた。その内和希やら姫様やら海の愉快な仲間達やら続々と来た。適当な処で陽藍は和希とベニバナを別室に呼んだ。滝が来る前だった。
✻ ✻ ✻
さてと言った陽藍が話し始めた。
✿ ✿ ✿
「先ずは『条件』だ。ベニバナーー」
ベニバナは師、陽藍に向き直った。和希と滝は、先に打診されていた。××××××××××××
「えーーーー『なまえ』ーーーーですか?ーーーーーーー」
陽藍は静かに頷いた。不安そうな和希を余所に。
先ず、ベニバナが『此の星』でーー暮らすならば。破ってはいけない『ルール』を伝えた。
・『もう自由に元の世界とは行き来出来ない。』ーーつまり、家族とも簡単には会えなく為る。
・『魔法は、絶対に使わない。』ーー理由は数多あるのだが、兎に角ベニバナは今後一切使用してはいけないーー禁止だった。
・『別の星から来た事は、他言無用。』ーー当たり前だが。
・『此の星に“合う”名に“変え”る。』ーー其れが主な条件だった。
他にも勿論学ぶ事は多々あったが、先ずはルールが『厳守』出来る事ーーが、必須だった。
✿ ✿ ✿
ベニバナが、名前を変える事に動揺を示した頃、部屋の扉が静かに叩かれた。
開けた扉から顔を出したのは、遠慮がちな“滝”だった。“邪魔かなと思ったけど気になって”と。
ベニバナが更に動揺をみせた。“滝様…………ッ”と。そんな時に和希の携帯電話が鳴り出した。
✝ ✝ ✝
「ーーっ、和希。脅かすな。性格悪いなーー御前。」
陽藍がそう言った。何やら油断していたらしい。滝とベニバナもだが。和希がぶつくさとこう言った。『性格悪い』のは、『電話』ですよーーと。
言われたくは無い。和希自身、死ぬ程ビビったのだから。誰だと見ると、“甥っ子”だった。
『は?』と言った和希は其れに対応した。『はいもしもし?』と。
「どうした和志? 何かあったのか?」
橋本 和希はそう言ったのだった。甥っ子、“白郷 和志”へと。
甥っ子は泣き事だった。和希は甥っ子相手だったので、“素”で“対応”して、些か“言葉使い”等が、謂わば“雑”だった。滝もややフリーズしかけたが、先に機能が停止したのは、やはり姫の“ベニバナ”だった。気付いた滝が慌てて和希に、伝えたのだったがーー姫さまは暫しーー
夢の國へ行っていた。
✝ ✝ ✝ ✿ ✿ ✿
朝食後に、迎えに来た友人と出掛けた“紺”がーー帰って来た。紺の友人、板谷 澄晴が、澄晴の兄“青晴”や、紺と同クラの友人、金松 健仁等と一緒だった。子供達が、“お〜すげ〜”等と、歓喜していて微笑ましかった。
澄晴と青晴は陽藍の頼みで紺を連れ出していたのだ。
今日は、“華月 紺”の、誕生日会ーーだった。なつのの計画で在る。乗った陽藍が『企てた』のだった。
“昼頃帰って来い。家の人には、伝えとくから。”と陽藍から言われた澄晴達兄弟は、華月 陽藍の空手の弟子達だった。
澄晴の天敵“金松 健仁”が感動していた。“紺の家、でかいな!すげえ!”と。
“あがって”と言った陽藍を“み”て、更に歓喜したのだった。“かっけえ!”と。そして、
「……………あれ?もしかして“魔女の下僕”…………? …………………………あれ?」
「ははっ良く分かったね。そうだよ。はじめましてかな? 紺の“父”です。いらっしゃい。どうぞ。“何”君だったかな?」
そう言ったのだった。
「!! 『金松 健仁』! えっ!紺の“お父さん”なの!? 紺!イイな!自慢じゃん!」
あ、こんにちは。お邪魔しますと、健仁君は後からちゃんと言ったのだった。ジャン・スモや紺の“兄達”を見付けて再度“歓喜”するのは、此のもう少し“後”だった。
ベニバナは庭にいた。
✿ ✿ ✿
『名』は、父と母から授かった“大切”なものだった。ベニバナは悩んだ。
和希は先程、出掛けてしまった。甥っ子和志に呼び出されたのだ。
淡い色の美しい花が目に付いて、眺めた。故郷みたいだった。
××××××××××××
別室から庭の様子を観ていた“臨時”の居候が、家主の妻に問い掛けた。“あの姫さん、大丈夫か?”と。彼から“みて”も、儚げだった。今にも消えそうに。家主の妻は、答えた。
「多分大丈夫よ。」と。単に洗濯物を畳むのが忙しいだけでは?ーーと、彼は思ったのだった。
すぱんっ!と扉が開いた。「お母さん!ただいま!ありがと!」
ついでに“紺”も飛び込んで来たのだった。「あ!手伝う!」と。
母、友美がやんわりと制した。「今日は良いのよ。」と。
「紺ちゃん。それより庭にベニバナちゃんが居るから、中へ呼んであげて?」と。
庭を見た紺の眼の色が変わったのが見えたが、部屋の中の此のふたりは何も言わなかった。
わかったと言った紺が、部屋から出て、少しすると庭にーーは、登場しなかった。
ベニバナが消えた。庭から。×××××××××××××
✾ ❁ ❀
「おじさま…………。」
庭にいたベニバナが、中にも入らず開けた窓の向こうでそう、言ったのだった。『わかりました。』ーーーーーーーーーと。
丁度庭に迎えに出ようとした紺が、窓に向かった時だった。少し元気の無いベニバナは、頷いた陽藍に連れられて別の部屋に行ってしまって、父の“側”に“居て”は、紺には“何”も、視えなく“成っ”た。なので紺は、此の時のベニバナと陽藍の“話”は、知らないのだ。
陽藍は“昔”の“アゲラタム”と“和希”の話を、ベニバナにしたのだった。ベニバナの表情は更に暗くなった。ベニバナの母、女王アゲラタムは、“王妃”になる決意をする前に、と或る“一人の少年”と出会い、“淡い”恋ーーに、落ちたのだった。
父王を亡くしたばかりの若き女王は、敵ばかりだった。
或る日“和希”がーー現れた。“刺客”に日々狙われる若き女王は和希という名の奇妙な少年に助けられた。そしてついーーに、最悪の事態が起きた。和希の忠告虚しく、女王に再三の刺客の手が延びーーついに其れは“女王”に届いたのだ。
間一髪で“女王”を救ったのは、女王陛下の“護衛”では無く、橋本 和希だった。
和希にも不測の事態だったそれは、失態だった。そうーーーー『殺めた』のは、此の時だ。
深入りするべきでは無いと“一線”引いていたのが、仇となった。
もっと親身に“近く”で護ってやれば、もっと“上手”に“たすけられた”ーーと彼は言った。
命を絶やす事は、失態だった。後にも先にも、橋本 和希“最大”の失態だった。事切れた動かぬ其れは、本当は“人間”だったーーのにーーと。
和希は、誰にも言えないが、あの日からずっと“自分”が恐かった。いつかーーーー
いつか、“友”をーーーーーー、
殺してしまうのかもしれないーーーーーーと。暴走した自分が。
取り敢えず。“覚醒”してしまった“和希”の“力”は、陽藍が“封印”した。
ベニバナを“受け入れる”事は、和希に取って“爆弾”を“増やす”事なのだとーーーー
陽藍は愛弟子で娘の様なベニバナに“説明”したのだった。
姫は此の日、“瀬野尾 エリナ”ーー“絵理撫”と名を変える事をーー決めた。
“エリナ”は庭に埋めた“花”の“名”だった。咲くまでに時間が掛かるのだが、花弁は厚く堅く、雨でも傷む事は無いーーそう言われている淡い淡い色合いの、美しい花の名だった。
親馬鹿は思ったのだ。異“国”の姫娘は、“一枚の絵画の如く、其処にーー”
堂々と“咲いて”しまえば良いのだと。いつかの“誰か”の様に。薔薇の品種の此の“Elina.”を見付けた時に陽藍は思った。“ベニバナ”を“引き取る”事になったら、ーーーー
そう名付けようーーーーと。
華月の名を授けなかったのは、兄篝の優しさだった。和希を“義理の息子”にするのは、“複雑”だろうーーーーと。
“ベニバナ”の“保護”を申し出てくれた。今ですら、“友理奈”と“紺”、それから“夏文”の件を抱える“華月”の“結界”では、キャパオーバーだろうーーと。
“エリナ”という花に名を変える決心をした、ベニバナシャリンバイという名の花は、橋本 和希の“帰る”のを、待っていた。
“もうすぐ”だと。
《第一部 完.》
御来場、閲覧、ブクマ、又評価、お気に入り登録等、誠に有難う御座ます!///
二部が始まる前に、間幕や閑話等等企画中〜ですが、取り敢えず此の辺で。有難う御座ますm(_ _)m




