“エピローグ”、ーー《美津原 敦之.》
「ーーて事なんだよ、彼奴な。根深いだろ?」
会社の庭に出た陽藍達は、敦之の“想い出”を語っていた。想い出だが苦い方だった。
橋本 和希は顔を抑えて震えていた。ーー笑っているらしいーーと蓮は気付いてしまった。苦笑する。え?笑う所?と。滝は流石に笑えなかった。ーー可哀想ーーと失礼だと思いつつ、勝手に同情してしまった。多分敦之はーーいつか、
美咲が何か、思い出すのでは?と、心の何処かで期待して側に居たのでは無いかと。
報われなかった恋は引き摺るのだと誰かが言った気がするが、本当な気がした。それは時には錯覚なのだとも又誰かに聞いたが、きっと、それは“その時”に成らないと分からないものなのだろう。恐らく。答えが在る訳は無いのだから。
『ケースバイケースだよな』と、陽藍が暢気に言って、滝の横で未だ和希は震えて在たーー陽藍はそれを気にしてはいなかった。
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「は〜久々笑わせて貰ったぜ〜敦之〜は〜やばい。全く彼奴は。」
“面白過ぎるだろ”ーーと、橋本 和希が涙目で語ったのだった。滝は和希が敦之の友人だという話を疑い始めた。
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「あ〜あのね、滝君。敦之が昔、一番“ネジ”緩かったって話したじゃん?」
和希は不審そうな蓮の眼差しに気付いて涙目のままで説明し出した。陽藍は何も言わずに聞いて居た。
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「敦之さ〜今と“見た目”違ったんだよね。」と。
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「ーーはい?」
滝はリアクションが解らなく成った。×××××××××××××××
「敦之な、茶髪真っ青な“金髪”だったんだよね。しかも、長かったし。ちょい結んでたしw」
「は?」
「グレたお子ちゃまみたいな髪型してた。んで若干チャラいの。小ヤンキーよりのグレ方だった。“シブヤ系”って言ったら解る?」
聞いた陽藍が吹き出したのだった。くつくつと笑って居た。××××××××××××
「髪伸びて来て“鬱陶しい髪型してんな。切れ”って言ったらさ。」
「あ〜其れで彼奴は縛り始めたのか。そういや女子かって突っ込みたく為る感じに結ってたな、彼奴。くくっ」
華月 陽藍が悪人の様に、そう言ったのだった。和希が言う当時の敦之は、制服のブレザーを着崩し、タイは緩め、チャラく銀素材のヴィンテージ・アクセサリーを校則違反宜しく身に付け、一年の入学したて早々に上級生に呼び出されスルーし切れられ、当たり前に多勢無勢で囲まれ、溜息と共に“言い包”め、
「彼奴“馬鹿”だからさー」
“面倒嫌いなんで奢ります”「って言ったんだってさ。」
「………………………。」
「先輩方、“飯にしますか?”『女』にしますか?ーーって。」
“紹介はしますけど、”
「口説くかは“自己責任”で。てさ。」
“問題”起こしても“俺”は「“無関係”ですよ?ーーてさ。クールぶって。」
「ーーで。黙り込んだ先輩“方”?、一瞥してさ。財布から万券だして手近なひとりにやったらしいよ?」
「………………金渡したの?」
橋本 和希は、両手を広げて言った。
「“コーク代”に“でも”してくださいよってさ。」
「ーーーーで?」
「うん。その先輩“方”は、俺の“とこ”に、来た。」 「は?」
「“敦之”が眼つきやばい奴って流石に先輩方気付いて。」 「え………………と。」
「十人位居たかな〜?」 「友は“18”って言ってた“ぞ”。」 「あれ?そんな居ましたっけ?」
「えっと?」
「和希と敦が話してんの見てな、和希、見ての通り、ぱっと見“地味”だから。平凡なノーマルビジュアルの坊やが敦みたいな“目に付く奴”と、“友達の訳無い”と。ーーな?」
和希は無言だった。
「で?」
「“和希”に、敦に“大人しく”してる“様”言えってさ? な? 橋本君。」
「三年にすりゃ“威厳”とか何とか“言い訳”位“在った”んでしょ。俺は“意味理解らん”て断わったからね。」
「で、和希が“大人しい”地味系君だと、思った“奴等”がな。くく。」
まるっきり“悪人の台詞”で在る。華月 陽藍。
橋本君はーーーー「“何”したの?」とーーーー聞いた蓮に、和希は変わらず両手を広げた。
「『避けた』だけだよ。」と。「避けてたら“先輩方”が勝手に転び始まったの。」
“俺何もしてないよ”と、和希は主張したのだった。「なのにーー」
「なのに?」
「“敦”が“隼”連れて来て。……………………はあ。俺ひとりなら、何とか“なった”のに。たく。」
「はや……………………テ?」 「あ、ごめん。“隼人”。“ハヤテ”は愛称の方。」
あ、そーなのと蓮は応えたのだった。18人居た“らしい”先輩方を、適度にあしらいつつ、和希少年は“壁”薄い“箇所”を、飛び越えた。着地したのでそのまま“平然”と帰路に着こうと歩き出した先に、敦之と隼人と、“友”が“居た”のだった。懐かしい話で在る。
因みに。
「“学長”が、上から高みの見物してたから、『お咎め無し』ーーの筈だったのに。」
橋本 和希は口惜しそうに、そう言ったのだった。『敦之が隼人連れて来たからね』とーーもう一度。
「『隼人』、“血の気”、“多い”んだよね。はあ。」と。後は“察して”くれ。
和希は、“止めれ”なかった“咎め”を、こっそりと受けた。“御前、彼奴等の”ーー
「大変だったよね。“御目付役”の橋本君。」
“しれっ”と言った陽藍を和希は“じと”目で睨んでいたのを蓮は見たが陽藍は気にする風は無かった。勿論。
最終的にどうしたかと。友が適度に“飽き”て、段違いの殺気を垣間見せて“解決”したのだった。此れが友の兄“陸”なら、もっと“知的”に“解決するのにーー”と、和希は当時嘆いたのだった。
陸ならちゃっかり“駒”迄“入手”する場面だったろうと。友には言わなかった。理由なら在る。後日談だが。“駒”を“手に入れた”のは“和希”だったからだ。
やり方は“師匠”に習った。橋本 和希は“忠実”だっただけだ。
“美津原 敦之”は、“馬鹿”では“無”い。親友とも従兄弟とも何処かしらが異質な此の男の事が、昔から“苦手”だったーーのは、恐らく“勘付いて”いたからだった。
和希が“何を”しているのかを。昔は“其れ”が“苦手”だった。こそこそと動き回る此の男が。気に入らなかった。
“其れ”が、自分“達”を護る為だったのかと気付いたのは大人に為って“大分”経った頃だった。
教師に成った“其の男”が、生徒達を面倒見る姿を眺めて、いつかの自分達がそうされていた様だとそう思った。ーーーー遅かった。“平坦”な振りした“優等生”がーーむかついた。
“何でおまえは言わねえんだよ、いつもーーーーーー”そう思った。“裏方ばかり”
やりやがって。本当はずっと気が付いていた様な気もして、益々“橋本 和希”が“嫌い”に成った。
“仕事終わったら、ケーキ食いに来いよ?おまえの分、一個『確保』してあんだから。”
ーー“おつかれさん。休日出勤なんだろ? 大変だなおまえも。”
“全部、素直に『話した』ら、ーー『彼女』、お前の気持ち、考え直してくれるんじゃないの?”
多分お前、色々と“誤解”させてるぞ?彼女に。余計なお世話だけどさ。“ずっと好きだった”って、それは“ちゃんと”言え?よ。
“格好ばっか付けてると、振られちまうぞ? そっちのがダサイからな。”
『敦之ーーずっと好きだった“事”は、ダサい事じゃない。“言えない”方が、ダサいって俺は思うね。例えーー結果が解っててもさ。海なんて“凄い”ぞ。』
海は“友理奈”に、好きに成った時から“ずっと”、伝え続けた。直夏の前でも。何度相手にされなくても。真っ直ぐに。見返りなんて考えない海は、“愛は与えるもの”だと思っている。
父も母も、兄も、皆海に“愛情”を与えてくれるからだ。苦笑した友理奈も“海”に返した。“姉”としての“愛情”を。海はそれで満足だった。直夏が在る限り、友理奈はずっと“姉”だろう。彼女が海を選ぶ事は無い。けれど、それは“諦める”理由には成らなかった。
友理奈を好きな気持ちに“誇り”が在った。友理奈も直夏も其れが理解っていて、海の気持ちを“邪魔に”する事はなかった。
直夏が油断して友理奈を傷付けたりしたら、いつだって海は友理奈を“攫える”たろう。友理奈の為に、一生懸命“大人”になろうと頑張った“海”だからだ。恋は人を“成長”させたりもするのだ。
海は兎に角“一生懸命”だった。橋本 和希はそう思った。“紀端な理由は理解らないかな”ーーーーと。
友理奈は案外“毒舌又きつい性格”をしていた。大丈夫だ橋本 和希。佐木 友理奈は旦那“佐木 直夏”の前だけ限定で“乙女”と生るからだ。
海に聞いてみろ。海は“良く”知っていた。そんな“友理奈さん”が好きなのだから。
海は、友理奈を好きに成ったお陰で、少しだけ成長した。橋本 和希には未だばれていない様だが、父は知っていた。海は、ずっと海の事を好きだった女の子、“木ノ下 なつの”と、付き合い始めて在た。なつのの勇気が、報われたのだ。父と母(と紺)には伝えたが、ブラコンの兄“達”には怖くて伝え方が解らなかったので、保留された。和希に言わないのは“友”にばれるからで在る。
陽藍が“全力”を“出せ”ば、隠せなくはーー無い。なので、蓮もーー未だ知らない。勿論“敦之”も。
海に“先越されたぞ?”とーー言えない伯父が、此処に居た。伯父なりに甥っ子は“可愛い”のだ。彼から伝える事はーー無いで在ろう。
ヘタレた此の世の“最強魔王”が視線を逸して居ると、建物から少年が出て来た。
相瀬良だった。
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「どうした広陽。良く理解ったな。」
陽藍は言った。相瀬良 広陽は一人だった。
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「ど〜も。お陰“様”で。“得意”に為りましたよ。」
少年はそう言ったのだった。
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相瀬良 広陽は、海達にも内緒で“密命”を受けていた。
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「えっと。ごめん未だ“顔と名前”が合致してない。すまない。」
蓮がそう言って和希を見た。蓮は正直未だ、悠緋の名位しか急には出て来ないのだ。相瀬良の事も“海の友達の一人”カテゴリだった。申し訳無いが。そう言うと和希が苦笑した。
広陽も苦笑しつつ、自己紹介した。「相瀬良です。『相瀬良 広陽』。」
陽藍が不意に滝に言った。『滝ーー』と。
「『広陽』のアキは、俺と同じ『字』。憶え『易い』だろ。」と。
『光明』もだけどなーーーーと、不意に彼のボスは付け足した。光明には『光』の字が入っている。陽藍は其処が気に入っていた。息子『洸』は、『ヒカリ』を意味し、意図して名付けた。
自分が居なくなった後の、此の“世界”の“未来”の為に。此の世界の“未来”を組み立ててゆくーー此の、子供“達”のーー為に、
未だ此の星には名前がーー無い。それをするのは“自分達”では無いのだ。
海の周りに集まった“それぞれ”の星達も、いつかの未来で意味を成すのだろうと彼は思った。未だ気付かれない様に。
「あ〜『学校』でちょろちょろと『動いてた』のってお前か、広陽。成程。」
オジサンも『考えましたね。』ーー羽澄高等学校、英語教師は平坦な顔でそう言った。広陽はぎょっとした。橋本の表情にだ。
「海じゃ目立ち『過ぎ』てね。『影』が要った。松葉が『油断』する存在が『適任』だった。な、『広陽』?」
「『悠緋』じゃ無理だし、なつめも目立つ。理は論外だし、深織もそこそこ“有名”ですもんね。」
滝が理解らなそうに訝しんだので、和希が補足した。深織は“双子”だった。男女の双子だ。妹伊織は上級生に中々人気があり、それなりに目立っていた。又、海を“好き”な“事”でも“有名”だった。兎に角。経緯も有り校内で案外有名な“双子”だった。深織自身も、上級生に人気なのだ。
中性的な顔立ちの双子の兄は、上級生のお姉様方の、秘かな“瞳の保養”だった。
海では“眩し”過ぎるーー、一部のお姉様方に、特に。さておき。
相瀬良 広陽ーー彼は、“橋本 和希”タイプだった。高校時代の。“暗躍”に向いていた。
何より“当人”がーー愉しんで在た。
“俺好みだろ?”ーーと、主は英語教師に聞いたのだった。“すると敦はーー”
「光明だろ。」
主はにやりと微笑んだ。悪巧みに思える其れは、只の“笑顔”だと、教え子は知っていた。
“理”はーー隼人だなと。
「『深織』と『悠緋』が足りなかったから、“俺達は揉めた”んだな?ふむ。」
と英語教師が言ったので、教え子は訂正した。「先生、『委員長』忘れてるぜ?」と。
きょとんとした英語教師と其の師が、笑い出したのだった。
ーーーー橙鮮やかな夕映えの空に暮れながら。まるで全て解決した様に。ーーーーーー
秋が終わりそうだった。




