『トラブル』。
「和希さま〜」
「『未だ』ですよ。」
「あ、違いますーー『お腹』空いてしまってーー」
「え」……………………………………。
「『先生』、『俺』『何』か、『買っ』て来ましょうか?時間『未だ』ありますから。」
『ジニア』がーーそう言った。此処は、タウン・タウン『内部』で在った。和希がジニアに向き直した。そして、
「『ジニア』、お前、『護衛』だろ? 『護衛』は『対象』から『離れ』て良いのか?」
「ーーあ」
「『あ』じゃないからな。全く。」
「和希様……」
「『待って』下さい。“用意”、させますーーから。」
和希はそう答えた。
今日は『午後』から『滝』の“シークレット・ライブ”ーーで在る。未だ『午前中』ーーだった。
「『朝』食べないからですよ。」ーー全くとは言わなかった。
ベニバナ・シャリンバイはーー小声で謝った。緊張して朝食を『逃した』が、今頃空腹を覚えたのだ。和希の顔を見て、安堵した為に。ベニバナは、
今日『正式』に『滝』へ『断り』を入れる『予定』で在った。滝も『覚悟』はーー出来ているーーだろうが。其処まで『鈍く』ないので。
ベニバナに『自分の気持ち』に気付いて欲しくなかった滝だが、駄目だった様だ。和希からは『何』も読み取れなかった滝だが、ーーベニバナは案外『判り』易かった。ただ、ーー“待って”いたのだ。
ベニバナに『直接』言われるのをだ。滝は『彼女』へ“直接”伝えた。だったら『彼女』からも“直接”返してーー欲しかった。
『今日「話」が在るーー』と、伝えて貰って在る。ベニバナは気合いを入れたのだった。
が、ーー『朝食』が『届いた』様で、中断された。ふわりと素晴らしい『香り』がーーした。それでベニバナの顔も綻んだ。ついでにジニアもーーそれにつられた。和希はやや、呆れた様だが。××××××××××××××××××『全く』ーーーーと。
「ほいよ、お待たせ。」
「あ〜申し訳無い、『翔平』さん。有り難いです。忙しいのにすみませんでした。」
瑞穂 翔平は苦笑してから『いいよ』と言ったのだった。
「和希『君』は『食って来た』訳?」
翔平が聞いた。和希は自分は大丈夫だと答えた。礼と一緒に。だったらと翔平は珈琲を寄越した。良い香りはーー『此れ』だった。ラテだった。和希は礼を言って、受け取った。
「『翔平』さん、もてない『訳』が無い『奴』だ。流石。」
「はあ? 何言ってんの。ま、いいけど。ジニア、『飯』。おまえ『若い』から『食う』だろ?」
翔平は羨ましそうに『見ていた』ジニアにそう言ったのだったーー『軽食』をーー渡しながら。
姫には、『洋風雑炊』セット。ーー『ココナッツミルク仕立て』。フルーツドリンク添え。
ジニアには『軽食』、『ハンバーガー』セットだった。エッグサンドバーガーと、ヨーグルトスムージーのセットだった。何方も『特別』メニューで在る。翔平が急遽作ったメニュー『外』セットだった。『流石』と和希は感謝した。
食後の『ミルクティー』も抜かりなかった。やはり『流石』と思った。
和希はふたりが食事を終えるーーのを、翔平が淹れてくれたカフェ・ラテを飲みながら待っていた。退屈だと思ったのか、翔平も珈琲を淹れて、それに付き合って在た。
『休憩』と言った翔平は、本日イベントの『助っ人』だった。普段の勤務先は違う場所だ。そうーー『カフェ』リムネットーーで在る。リムネットの主要商品は『ケーキ』だ。翔平の『専門』でも無いのだが、不得意でも無い。さておき、本日の『イベント』用の『プチ・ケーキ』を、朝一から延々『焼いて』いたーーらしい。『流石に疲れたわーー』と翔平が言ったのだった。
「さて『何人』集まるかね。足りるかね。じゃ、『もう一頑張り』するかね。」
食べ終えたふたりを『見て』、翔平がそう言った。そして運んで来たトレーを受け取り、戻って行った。多分未だ未だ『ケーキ』を焼くのだろうーー『大変そうだなーー』と和希は見送ったのだった。
翔平が居てくれて『良かった』と。安堵したのだった。ふたりに気付かれずに。
××××××××××××××××××
さてと思うと和希は『其れ』に気付いたのだった。
×××××××××××××××××
「『部屋から出るな』よ?」
橋本 和希は『教え子』ジニアにーーそう命じて『部屋』を出たのだった。
××××××××××××××××××
「え? 『いない』ーーーー?!」そんな馬鹿なとジニアは叫んだ。
×××××××××××××××××××
『その男』は、『目的』をーー持っていた。それは『ろくでもない』目的だった。
×××××××××××××××××××ーーーーーーーーーーーー
「は? ふざけてんのか?」
和希はジニアにそう言った。ジニアは答えられなかった。×××××××××××××××××
『トラブル』ーーだった。和希は走り出した。『冗談じゃ無いーー』と。
『あの男』の気配が『在る』のにーー「何をやってるんだっ、」と。気配に向かって走り出した。
ジニアは勿論『追いつか』なかった。和希の背はーー先へと消えて、気配はーー辿れなかった。ジニアにはーーーーーーーー『そんなーー馬鹿なーー』と。得意の『感知』でも知れずに得意の『追跡』でもーーーー辿れなかった。和希が『居なく為った』のだ。「なんでこんな『事』にーーーーっ」
ジニアはそう言い、悔んだ。事態は変わらなかった。
××××××××××××××××××××
ベニバナは歩いていた。『和希』にーー向かって。置いてゆかれて『憤慨』したのだ。彼女『なり』に。だから後を追い掛けたのだ。
彼女『なり』に。
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変な『場所』にーー迷い込んでしまった。どうしようーーーーそう思った。
✿ ✿ ✿
華月 陽藍は『報告』を受けた。『分かった』と彼は答えた。
ベニバナは周囲の様子をうかがってみた。問題は無さそうだった。しかし、『抜け道』では無かったので、引き返そうとしたーーが、駄目だった。
男が立っていたのだ。
知らない『男』だった。その『男』は「ーー『やっぱり』ーー」と言ったのだった。
ベニバナは『何がだろう』ーーと思ったが、分からなかった。「あの…………?」
其処を退いて貰おうと、彼女は声を掛けた。和希の『ところ』にーー行きたいのだからーーと。立ちはだかった男のお陰で、通れなかったからだ。つまり邪魔だった。が、男は言った。
「又『貴女』に『会える』ーーなんて。」と。にやりと、にたりの真ん中の様な笑みで、彼女を不快の底へと連れて行った。ベニバナはざわりとした。本能が警告して来た。
後ろへ下がった。だが、後ろは行き止まりだとも彼女は知っていたのだった。
『ーー和希さまーー』ベニバナは声に出せずにそう呼んだのだった。聴こえる『筈』もーー無く。泣く訳には行かなかった。『誇り』がーー赦さなかった。凛とした姿でベニバナは相手をーー見据えた。『魔法』は『禁止』されてーーいた。其れが『此方』へ来る『条件』だった。
それでも『行く』ーーと言ったのは彼女だ。だから『魔法』はーー使えない。又後ろへーー下がった。
男はにやりと近付いて来た。ーー思い出せーー無い。不覚だと思った。
背が壁に当たった。『あ』…………と思った。逃げ場が無かった。
男はーーーー「『一目』見た時からーー貴女には『心』がーー奪われたんですよ。」
狂った様な『目』をした男はーーベニバナを捉えた。「!ーー放しなさい!」
彼女は声を張り上げた。毅然として。然し其の男には無駄な行いだった。地面へと倒れた。抵抗した。痛みで声が出せないーー叫べない。空気の足りない肺は、声を出す事を助けなかった。息だけがーー洩れた。言葉は出ずとも。
頬が熱かった。悔しさか痛みかーー哀しみか理解らない中で、涙だと不意に気付いた。混乱の中に埋もれて這い上がれ無く為りそうな中で、抑え込まれた手首に激痛が走った。それは油断の様なものだったのであろう。痛みの中で不快な感情がーー止まらなく増加した。口の中が熱かった。不快な感触の中で、痛みばかりが増す中で、等々混乱した。声が出なかった。
ーーーーーーーーーーーーっ、「!」ーーーーーーーーーーーー、、、
どさりと音がした。痛みが和らいだーー気がした。身体が軽く成った。
自由になったと感じた時には、その人がーーいた。薄暗い空間の中で、恐い顔を見せていた。ベニバナはぶるりと震えた。半身を起こし掛けるとーー『男』をーー無慈悲に放り投げた『彼』はーーベニバナを抱き起こした。
怒られると思った。
恐かった。そして、ーー怖かった。抱かれた腕が、いつかの晩と違って優しくは無かった。
「怪我は? 『痛み』は? 何処が『痛い』?」
優しくは無いーー『指』が、ベニバナの頬をーー拭った。彼は無表情だった。「立てない?」と聞いた声もーー表情がわからなかった。
ベニバナは震えた。
延ばした手はーー『彼』を掴んだ。必死で。そして又泣き出した。自覚したのだーーキスされたのだと。和希以外の『男』に。ベニバナは呆れた様な『和希』の腕の中で、答えが解らぬ子供の様にーー泣き出した。嗚咽が洩れた。途切れ途切れに謝罪していた。キスされた事ーーと。
泣き止まぬうちに、熱を感じた。「ん、ふ」ーーーーーーーーーーっ、和希の唇だった。
優しいのか激しいのか分からぬ其れに、気持ちを奪われた。『不快だったのにーー』と。
彼女の中に、和希の『感触』がーー戻って来た。唇は泣き痕を辿る様にーー頬を撫でた。涙痕にーー唇を落とされた。『動物が戯れ合う』様だとーーベニバナは思った。
そして今度は『ちゃんとしたキス』をーーされたのだった。王子が迎えに来た様だった。ベニバナはそう思った。『やっぱり此のひと』だと。感情を失くした様な、和希の瞳がーー気になった。
「……………ごめんなさい…………」
「……………わかれば…………いいよ。危ない事しないで。心配するから。頼むよーー」
ベニバナは、和希が泣きそうだと思った。思うと考えるより先に、彼の頬に唇がーー触れた。一瞬、和希が不意打ち予想外過ぎて理解しなかった様だ。
照れた金魚の様に成ったベニバナを、少しの間呆れた様にも眺める様に見ていたが、やはり呆れた様に顔を寄せて来た。照れ隠しの様なキスをされて、ベニバナの力は其処で尽きた。和希のペースだった。「ん」と言った彼が、照れた呆れた顔で、ベニバナを抱え上げた。
足下に先程放り投げた化学の教師がーー転がっていた。
冷たい熱量の視線で其れを捉えた和希は、姫に『注意』した。
『態々「変態セクハラ常習犯罪者教師」の「鍋」に飛び込まないでいただけますか?姫様。』と。
「そう言うの『鴨ネギ』って言うんですよ。今後『やらない』で。」
今度は『全く』ーーと苦言したのは言う迄も無く。ただ、姫は『鴨ネギ』が理解出来ずに、戸惑った。
『姫様抱っこ』はリアル『御姫様』にも、『初』だったのだ。それと相俟って。
『今いっぱいいっぱいなのでーー』「後で御説教してください。ーー今『駄目』です。」
そう頼み込んだ。和希は無言だった。
嫌な『過去』をーー思い出していたのだ。封印した『其れ』を。捨て切れぬ『過去』を。ーーーーーーーーーーーーーー
『過ち』を。




