『街』。
去年迄の滝 蓮は、今とは全く比較に為らない程に、忙しかった。
全国ツアーも、制覇した。正に北から南迄だった。計47エリアを、正に『制覇』したのだ。やり遂げた日には、やはり達成感がーー凄かった。途中ーー大和が、『一時離脱したい』ーーと言い出し、混乱した事もあったが、メンバーと会社の重役達に止められ、それは表沙汰にはなっていない。大和が離脱する事は無かった。
ツアーを終えた彼等は、今仕事を控えている。テレビ出演は時折あるが、ライブ等は当分予定していなかった。CD制作予定も組んでいない。約一年間『休業』に近い形で、『休養』期間を持つ事になったのだ。
大和の一件の影響がどの程度だったのかは、実は滝には判っていなかった。何故なら大和の『離脱』希望理由すら、後から知ったからだ。それは約二ヶ月程前の事だった。
大和の『離脱』理由は、『弟』と『異世界』ーーだった。
× ×
ーーと或る日ーー、それは、『もうツアーが、やっとで終わる』ーーそんな達成感一歩手前の頃の事だった。陽藍から、『お前等に用事がーーある。』
「ツアー終わったら、手を貸せ」ーーと、『依頼』を受けたのだ。メンバー全員が。
それが『異世界旅行』ーーだった。そして滝は『姫』ーーと、出会った。
『旅行』は褒美、『報酬』だった。手を貸した事への。その時滝 蓮は、初めて詳しく大和が、あの時『離脱』したかった理由を聞いたーー聞かされたのだ。そして水くさいと思った。
誰も彼もが。ーー理由を知っていれば、滝は大和を止めなかった。『知っていて』止めていた理一や太一とは違って。ーーそう思った。寧ろ、もっと早くーー『手伝いたかった』ーーと。
『仲間』の『弟』は、トラブルで『異世界』迄『飛ばされ』てしまっていたーー大和はそれを知って、迎えにーー『捜しに』行きたかったらしい。ーー言ってーー欲しかったーーと。
自分が微力過ぎて情けなくなった。姫、ベニバナは、そんな鬱屈を穏やかにしてくれた存在だった。『出逢えて』良かったーーと、異世界に『来た』理由をーー見付けた様な、気分だった。彼女の『笑顔』は。
いつの間にか懸命過ぎて疲れ切っていた、擦り切れそうな蓮の心を、ーー気付くとやんわりと『癒やして』くれていたのだ。ーー多分ベニバナは無意識の事だったのだろう。ーー意図せずとした『それ』を。ーー蓮は『手にーー入れたい』そういう感情が芽生えた。
彼女に『側にいて欲しい』ーーと。
過ごした時間はーー決して多くなくとも。『もう会えない』のは、嫌だった。
あの日蓮は、姫ベニバナの話しもーー聞いていた。謂わば『悩み』だった。
ーーベニバナの『悩み』を聞いた滝は『自分ならばその「悩み」をーー』解決出来るーーそう気付いた。
メンバー唯一『独身』の自分ならばだ。
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《私ーーうまく『伴侶』が見付けられなくてーー》不器用なのでしょうかーー「もう好い『歳』なのにーー」
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《困ってしまいますわね。》ーーと。ベニバナは子供が困った様にーー笑ったのだった。自虐とも又違うーー笑みで。
滝の『誤算』は、近くに『居た』『橋本 和希』の《存在》に、気付いていなかった事だ。嫌ーーーー
『和希』は正確には、『其の場』には居なかった。ベニバナは『後』で『知った』のだ。
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『自分の暮らす星』を救ってくれた『者』のひとりにーー『和希』が『居た』事を。
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『名前の無い』星ーーに、初訪問したベニバナ姫は、和希と初めて会話した。だが、橋本 和希は『その話』をーーその日全くしなかった。姫の方は『滝との今回の経緯の説明』ーーをーー彼へとしたのにーーだ。
墓穴を掘ったのは、滝本人だった。あの日、『姫さまは』ーー滝は彼等に聞いた。
「橋本君とは、あの日ーー会ったよね?」ーーと。
白神の星で起きた『問題』が全て『片付いた』後に。彼等は『宴』をーーした。それは恒例の花見であった。丁度咲く頃合いだったのだ。
ベニバナが住まうあの『宮』の庭にて細やかな宴は開催されたのだが。滝は記憶違いをしていたのだ。『その宴』に、『和希』も『在た』筈だと。和希に対して余りにも朧気な記憶は、混濁していたのだ。
和希はその日その庭には居なかった。別の場所にいた。
王太子イチゴの部屋や王宮の中に殆ど在た。イチゴの『現』婚約者の『シラー・ペルウィアナ』だが、この時は未だ違った。そのペルウィアナがその日体調を崩し倒れてしまったのだ。
ーーイチゴに運ばれて王宮のイチゴの部屋へと寝かされ『看病』されたので問題はなかったのだが、和希もペルウィアナを心配だったので様子をみていたのだった。
ずっとイチゴの部屋にいた訳ではないが、『裏方』をしていた。
正確には、華月の次男『龍』が医者で、直ぐにペルウィアナの症状を見抜いて『処置』したのでその手伝いをあれこれとしていた。必要為る物を取りに行ったりと。
滝はその事に気付かなかった。
人見知りなペルウィアナを気遣って陽藍が人払いしたせいもあった。
「若い『男』が特に『苦手』だから『近寄るな』お前等は。」ーーーー
そう陽藍が言うのならば、近付く訳にも行かなかったし、それ以上に龍の優秀さは聴いて『いた』ので、『大丈夫』なのだろうーーと、
滝はペルウィアナと略面識も無く、素直に従った。心配しなかった訳ではない。
ただ、『色々』と知らなかっただけだ。
× × ×
滝は街中にいた。薄い色の付いたサングラスーーそれからキャップ。いつもなら『隠す』事もせずに堂々と街中を歩く蓮なのだが、今日はその気分では無かった。
『暫く』ーー
『時間』をあけて欲しいーー
と。
姫から返答が来たのだ。気晴らしに街を『歩く』しかーー無かった。今の彼には。
+ - +
彼の見間違いで無ければーー前方に『海』が『み』えた。
- + -
「ちょっ、待ってよ!」
ーーーーー何やら揉めていた。ーーーーー
× - ×
「ごめんなさい『間に合ってます。』」 「何が?!」 「お父さんが『そう』言えって。」
「『お父さん』何者?!」 「え………小説家。」 「凄いね! ーーじゃなくて!」
『待って!』と、その若い男は海に縋っていたのだった。海は良く分からないが嫌そうだった。
× × ×
「…………かっ、」 「海!」 「ッ、!!」 ーーーーーーーー
巧だった。ーーーーーーーーー『どうした』と言った巧の声が、聴こえた気もしたーーーー
そんな訳は無いのにと。 ××××××××××××××××××××
× + ×
「『断ってる』の。」
海は言った。海の声は滝の処まで、聴こえた。巧は呆れながら海に近付いた。クールな巧の声も又滝に聴こえて来た。『弟』に何か『用』ですかーーと。言われた相手は目を白黒させた後に歓喜していた。
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『お兄ちゃん』なの?!『美形』兄弟だね! 『モデル』にーーっ
「興味ありません。お引き取り下さい。時間の無駄ですから。有限ですよ。」
巧は静かに相手の男を『捉え』た。ーー獣じみた『眼光』で。海は恐らく『スカウト』されている最中だったのだろう…………滝はそう思った。
少し前までの海ならば、滝はそうは思わなかった。『子供ぽ過ぎる』海を思い出していた。ほんの少し前迄の、『海』を。
「海。ーー何処か行くとこだったのか?」
巧はもう『男』を見ては、いなかった。滝は思う。巧の『存在感』を。
ーー目立つ。ーー『自分』等よりも。ーー本心だった。しかし、彼は『敢えて』近付いた。《彼等》へと。それが『滝』の《プライド》だった。ーーーーーーーー
× ー ×
「『海』、『巧』。ーーよっ何してんだ。」
蓮は片手を挙げて合図した。同刻で兄弟は滝の方ーーを『み』た。其の歌手特有とも言うべき良く通る唄声の様な『声』をーー意図してかせずにか、その一瞬、ーー『周囲』をーー惹き付けたのだった。
ふたつの美しい『顔』がーー彼を、此方を見ていたのだった。苦しい程の錯覚の様な『雰囲気』の中で意図的にか、そうでないのかで。ーーーーーーー
「海君お待たせ〜」 「うわあっ、!」 「原、海君に抱き付くな。やめろ。」
「あれ?巧さんだ。何してんですか?」 「あれ〜? 滝さんまでいる。どうしたんですか??」
「待てよおまえら。ーーなんで俺を『置いて』行っちゃうんだよ。会計終る位『待て』よ。海君! 聞ーてよ。こいつら酷くない? 冷たいよな? な?」
「なつめ。ーー俺は律儀に『待って』やったんだが? 先ず『礼』は?どうした?なあ?」
「原君、放して。何で抱き付くの??」 「…………ぎゅ!」 「や〜め〜て〜たっ、巧!」
「理ーー『やめ』ろ。」 「「「「!!」」」……………はい。すみませんでした。」
『解ればいいーー』ーー言った兄の『眼』は、ーー『本物だ』ーーと。視線合った男子高校生達は震え上がった。『巧兄ちゃんブラコン発動したな』ーーーーと。要は恐かった。
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「あの………………………」 「「「「「ん?」」」」」 「モデルとか…………興味…………」
「『父』に叱られるので、出来ません。ーー行くぞ海。『成芳堂』寄って行くぞ。」 「「「「「「!!」」」」」」
「お兄さま!理一生ついてゆきます!」 「呼んでないよ。」 「犬と呼んでいただければ!」 「雉?」 「猿?」
「『団子』じゃ無くて………『洋菓子』だぞ…………?」
「待って巧〜」
「あ!」 「ちょ、海君ずる!」 「ゆけ!俺は猿でいい!」 「ん?俺雉?」
「…………………だから…………………おまえら………………まあ俺も行くけどね。」
「「「お前もか!悠緋!」」ーーち、脱落しろ!」 「悪態吐くなよ……………。」
「今日『レッスン』の日じゃないけど。ま、いっか。」
「おら行くぞ、なつめ。『置いてく』ぞ。」 「嫌、『家』分かるし置いてかれてもな。」
『馬鹿なつめ。「菓子」買って貰えないぞ?急げ!』と、男子高校生達は、走り出したのだった。
事態についていけない滝を置き去りに。
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「「「あっれ?『陸』さんだ。……………………………???」」」
暫し遅れて来たなつめ広陽組がーー店迄辿り着くと、店内先行到着組の悠緋、深織、理と共に『居た』のは。真逆の最強超絶超え美青年為る華月家三男『陸』氏だった。
なつめ達の横では、何故だか諦めずに一緒に彼等と共に走って来た男がーー『スカウト〜』と目を回しながらも根性のみで叫んでいたのが、気には為ったが。ーーーーーー未だそれが『無駄』と知らない其の彼が。ーーーーーーーーー
滝が『着いた』のはその後だった。




