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姫さま、『恋』をーーする。  作者: ※Rasp※Berry※
✝異世界の姫様と名も無き星のヴォーカルの話✝
11/75

『伏兵』。

 滝はまさかと思った。



 翌日だった。



 まさか、海に『出し抜かれる』とは思っていなかったのだ。




 +   +   +



 海に初めて会ったのは、何年前の事だったのかーー滝は思い出そうとしていた。



 +   +   +



 華月 海は、良く彼等のコンサートに来ていた。滝もそれは知っていた。メンバーに良く懐いている海は、楽屋にも良く来た。都内限定でだが。初めは律に連れられてだったかもしれない。



 友が連れて来た事もあった。初めて会ったのはそれよりも前で、華月の家でだった。


 滝は確かその日、初めて陽藍に家に入れて貰えたのだ。


 陽藍に招かれた訳では無かったが。メンバーが陽藍の私物の楽器を借りたくて訪問した際に、付いて行ったのだ。その時確か未だ幼稚園にも入っていない、小さい海が居たのを、ーー覚えている。



 父の足元で、ーーしがみつき警戒し、しかめ面の子供だったその時の事を。『華さんとボス(丶丶)の子供にしては……』滝は失礼にもそう思った事迄も、思い出していた。



 癇癪持ちで直ぐ泣いた、小さな“王様(丶丶)”のーー事を。




 ×××××××××××××××××





 ーーーーそうだった。滝は忘れていた。海とは。ーーーー幼少期とても『手強かった』事を。





 陽藍と滝が話していても、待てずに泣く。母があやしてもーー泣く。陽藍の姿が見える『限り』、ーー泣く。離しても泣くが。




 利口な事に父が『あやす』と泣き止むのだ。『確信犯』ーーだった。滝は思い出した。







 ふと『(父を奪う敵)』を認識(見た)したーーその『子供』は、ふっと『にやり(丶丶丶)』とーーったのだ。





 +   +   +




 『ーーなんで「俺」はーー』忘れてたんだ?




 滝は疑問符で溢れ返った。




 滝はあの日思ったではないかーーと。『此の子供ガキがーー此の家の』王様ーー中心だと。





 自分のボスも憧れの美しい女神も、小さな支配者に夢中だった。陽藍と『(友美)』にがっかりしたーー瞬間だった。



 その辺の普通の夫婦にーーみえ(映っ)て。プライベートの陽藍は、子供に振り回されている様にしか、ーー見えなかった。未だ若かった滝には。




 会社に出て来ればあっと言う間にも難しい案件を片付けてしまう遣り手の彼等の副社長は、ただの男なのかと思ったのだ。『子供の世話なんてーーこの人がやるべき「仕事」じゃあないだろうーーーーーーーーー』滝の不満はこの頃からあったのかもーーしれないと。




 自分の頼み、懇願よりも『息子()食事(世話)』を優先させようと行動した陽藍へ、腹を立てたのだと彼は気付いた。



 『あの頃』と何も変わってはいないのかーーと。デビューもして此処まで『来た』今の自分ーー自分達は、『あの頃』と何も変わら(成長してい)ないのかと。








 「ーーーーッ、手強いねーーーーーー。」



 滝 蓮は誰に言うとも無く、虚空に吠えた。虚しく、寂しかった。単に温もりが欲しかったのだ。





 姫の笑った顔が浮かんで、会いたくなった。ーーーー





 「邪魔者ーーが、『多い』ね。ね、ーーーーーーー『橋本』ーーーー」









 『カズキ』ーー「ーーーー君。」








 そうだろう?と滝は、虚空に問うた。ベニバナの視線の向かう相手には、気が付いていたのだ。勿論。









 和希が迷惑そうにしていた事だけが、救いだった。






 ××××××××××××××××××××××





 「先生~そのジャケット新しい? 前のと似てて、『ちょっと違う』ね。」



 教師橋本が声の先を見やると、良く知った顔が居た。親友の弟だ。海は珍しくひとりだった。



 「ん〜」


 和希は曖昧な相槌を打った。海は聡い。すぐに言った。『どしたの』と。



 橋本 和希は生徒ではない、親友の弟へと、話したのだった。




 ×    −    ×    −    ×




 「あの…………和希……………『さん』。今日はありがとう御座いました。あの此れなのですが……………」




 滝と『姫』への『仕事(任務)』を終えた和希が、ベニバナから預かった荷物を持って来て返そうとした時だった。ベニバナが言ったのだ。『荷物』を指して。




 それは勿論『上着ジャケット』だった。





 +   ×   +   ×



 「なるほど〜先生も『大変』だね。」


 海は言ったのだった。



 「ま、元気出して。」



 「大丈夫だよ、『海』。なあ、『友』は偶には『連絡』寄越すの?」



 海は『ん〜?』と相槌を打った。


 「友兄ちゃん? 和希サンところには? お兄ちゃん僕には『直接』は連絡して『来ない』よ。多分ね〜『出来ない』みたい。ま、しょーがないよ。ーー忙しいもん。」



 和希は意味が分からなかった。ブラコン友が、弟禁断症状出ないのだろうか?と。海が大丈夫と言った。



 「最近、ひかる君が時々理由()って『様子』に行ったりしてるから。」



 大丈夫大丈夫と海は頷いたのだった。和希は不安になった。そして思わず聞いたのだ。




 「『足りる』かね?」と。




 友が父に家を『追い出された』理由だが、ふたりが知る限りでは『行き過ぎたブラコン』で在る。



 特に弟悠太(ゆうた)への執着が激しく、父に引き離されたのだ。『アメリカでも行け』と。



 悠太ーーとは。華月家、六男、ピアニストとして活動を始めた、海の優しき兄で在る。七男、画家として活動する洸の双子の兄だ。




 友の溺愛止まないのは、名にも表れている。『ゆうた』は、友が付けた。漢字を当てたのは父だが、『友』から来ての『悠』太なのだった。




 兄悠太が父の『息子』に成った日、海とは未だ『生命体』としてすら、存在していなかった。和希が知る限りでは悠太は或る日、『道』に『置き去り』にされたーー子供だったのだ。ずっと遠い『前世』に。




 和希は知っていて、友が悠太を可愛がり過ぎる理由も『把握』していたが、確かに『やり過ぎ』だった。友は放って置くと、悠太の『全て』をーープロデュースしてしまうのだ。



 服、家具、持ち物等、気付くと『全て』、友が選び買い、与えた『物』に為っていた。




 『友、ーーやり過ぎ。』と言った父の言葉に、本人も自覚や自負があったが、あれば止めると言うものでもーー無く。〜と言う事だった。




 「海、ーーお前の『兄貴(自慢)』は、『阿呆・・』だな。」



 和希が悔しそうに言ったので、曖昧に頷いた()は答えた。





 「あ〜うん『やさしい』けどね。友兄ちゃん。」



 やっと和希が笑った。海は少し『ほっとした』のだった。





 『和希サンも、「断われば」いのに。』と。お父さんに聞い(先生の事を相談し)てみようかな?と、海は決めたのだった。


 




 陽藍の『操作プロテクト』で、視えない海の心内は、此の時和希には知れなかった。



 勿論。『滝 蓮』も、『知る』事は無い。




 海は滝等より、『強い』のだと。小手先等だけでは無く、その『全て』が。比に成らない程の『エネルギー量』なのは、話されてはいた。だがーーーー





 滝は理解っていなかった。陽藍は海を強く『し過ぎ』たのだと。『息子に触るな』ーーーー





 『海を刺激するな』ーーーーーー『暴走』するぞ?





 陽藍はそう言いたかったのだ。和希なら理解したろうが、蓮には無理だった。『未だ未だだな』ーーと思い直した陽藍は、滝を『出禁』にした。危ないからだ。






 エネルギーに『巻き込まれる』事を、避けたかった。必ず『救けて』やれる『保障』が無いからだ。滝はああ見えて努力家だ。言えば『修行不足』の力量不足を補填しようとするだろうーー無茶をさせたく無い陽藍は、勿論言わずに『ただ』ーー遠避けた。






 和希や翔平や耕一等は、自らでその『距離感』を測れる。が、滝はと言えばーー『音楽』へ専念させてやりたかった『親心(丶丶)』だ。和希達と、滝では、そもそも『部下』としての『使い処』が『違う』のだ。




 最近の海は『其れ』が理解って来ていた。自分と『兄達』の違いに『気付いた』ーー教えられ『知った』様に。




 海は思った。比べるものでは無いのだが、和希と滝と言われれば、海は『和希』の味方をしたかった。




 滝を嫌いな訳では無い。滝は真剣に『姫さま』をーー好きなのであろう事も、気付いて理解っていた。だけれども。





 イチゴの『頼み』無くとも、海はやはり『和希』の肩を、持ちたかった。





 「先生ってベニバナさん、嫌いなの?」




 海の『聞き方』はーーストレート(豪速球)だった。しかも『真剣』だった。





 『大人に成ったなーー海。』友が歓ぶんだろうなーと、橋本 和希はぼんやりと思ったのだ。




 和希はベニバナ『以外』の『問題』も、抱えていたからだ。




 「と、いうか。野元先生とか、後保健室の?真宮さん?だっけ?後はーーーー」



 「やめて海君。つか何で知ってんのよ。え、こわ、海君怖!おまえは『友』かっ」




 海は『ほえ?』と言う顔をしたが、真逆だった。




 「え〜?『観察して(傍から見て)』れば? 一番分かりいのは、事務の比見南ひみなさんーーだっけ? あの人が一番若いからかな〜?」




 「ーーやめてあげなさいーーえ、つか皆にばれて?え?」




 「え? 僕は『言わない』よ。女の人の『恋心』なんて。勝手にばらさないよ。やだな、先生。あ、和希さん。ま、いっか。じゃあ時間だから教室行くね。先生、あんまり『無理』しないでね。友兄ちゃん言ってた。『和希』は『真面目』に『頑張り』ぎるのが、偶に傷だって。努力家過ぎるってさ。偶には『裏方(丶丶)』、やめちゃえば?じゃね。」





 立ち去った海を見て、橋本 和希は静かに独り言を口にしたのだった。『友ーーーーーーーーーーー』





 「おまえの『弟』、こえーよ。」やっぱり『兄弟』なんだなと。








 後日陽藍に定期・・『報告』した和希は、盛大に笑われた。





 『伏兵』は「真逆・・の『海』だったか(丶丶丶丶)。ははっ」と。




 くつくつと愉しそうにいつまでも笑っていたのだった。『次は何を企てているのか』と、思った。




 考えて分かる事では無かったが。






 ×   ×   ×



 頭を冷したからと、謝罪と次の『密会デート』の願いが陽藍の元へと届いたのは、此のもう少し後の事だった。




 

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