親玉
それじゃあ帰ろっか?
スケルトンナイトは全部テイムしたし、普通のスケルトンだったら城の前にある墓地でテイムすれば良いもんね。
帰らない?
どうして?
スケルトンナイトたちを整列させてみると、見事に揃って敬礼をした。
敬礼と言っても警察官のようなものじゃなくて、胸に拳を当てる、異世界っぽいやつだ。
なんかほんとにナイトって感じがして、かっこいいよね。
骸骨だから不気味だけどね。
城にいるスケルトンたちも、私が通ると敬礼っぽい仕草をするけれど、ここまでビシッとは決まらない。
こういうのを見てると、本当に軍人って感じがするよ。
人間だった頃は軍人だったのかな?
ナイトってくらいだから騎士だったのかもね。
周囲を見ても、テイムしてないスケルトンナイトは残っていない。
だからもう帰っても良いと思うんだけど……。
「本命がまだだ」
「本命?」
「うむ、こ奴らは所詮下っ端だろう。まだ親玉が残ってるはずだ」
え?
これより強いのが残ってんの?
まさかクリス並みに強かったりしないよね?
滅茶苦茶怖かったけど、スケルトンナイトたちとの戦いは、クリスにとってはまだまだ余裕があったんだよね。
魔法使ってないし。
魔法使うには近すぎたってのもあるけど、魔法を使わなければ勝てないほどの相手なら、そもそも接近なんてしなかっただろうし。
そもそも私背負って戦うとか、ハンデが大きすぎると思うんだよね。
「へ?」
ぴりぴり、と背中が痺れるような感覚に、ブルブルと身震いをした私は、きょろきょろと周囲を見渡す。
すると、目の前の建物から、おぞましい影が現れるのが見えた。
神殿のような、この町で一番おっきな建物だ。
アンデッドが神殿から出てくるとか、なんか冒涜的じゃない?
聖光教会とやらの、アンデッド人類の敵説を信じてるわけじゃないけどさ。
本当にアンデッドが敵ならば、神様に貰ったチートでテイム出来るはずもないし。
少なくとも私にスキルをくれた神様は、そうは思ってないってことだ。
まあ、クリスみたいに自我のあるアンデッドってのは珍しくて、自我がないアンデッドは生者に襲いかかってくるので、人類の敵って認識になるのも分からなくはないんだけど。
ともあれ、あの煙なに?
瘴気ってやつ?
全身が靄掛かって見えるほど濃い、黒い煙が、その存在を包み込んでいる。
なんか、めちゃくちゃ怖いんだけど。
あれ、絶対強いやつじゃない?
他のスケルトンナイトよりも一回り大きい。
スケルトンたちは進化しても大きくならなかったけれど、LVアップや進化で体型って変わるのだろうか。
私のゲーム知識の中ではそういうことも少なくないけど、もしも体型が変わってないのならば、彼は生前からびっくりするほどの巨人ってわけだ。
たぶん二メートルは超えてる。
大きいって威圧感あるよね。
この世界だとステータスがあるから、体格が大きいから他のより強いとは限らないんだろうけど、あの目に見えるほどに溢れだしてる瘴気とか、絶対強キャラじゃん。
そのでっかくて強そうなスケルトンを、四体のスケルトンナイトが囲んでいる。
まだいたんだね、スケルトンナイト。
この町のアンデッドの戦力って、クリスを除いたら完全に城を上回ってるよね。
私、三ヶ月間も鍛え続けていたのに、こんなにあっさりそれを超える戦力が出てくると落ち込むよ。
自信がなくなるっていうかさ。
まあ、十六体のスケルトンナイトをテイム出来たから、現状ではあの黒いやつを除けば、私の戦力の方が上だろうけど。
でも、なんていうか、釈然としないんだよね。
ゲームで長い時間を掛けてキャラクターを育てて来たのに、ある日ぶっ壊れ性能の新キャラが実装されて、それ以外使う必要がなくなっちゃったような感じかな?
いや、今は聖光教会との戦いのために戦力は必要なんだけどね?
でも釈然としない気持ちってのは残るんだよね。
「ねぇ、クリス。あれ、勝てるの?」
なんかすっごい瘴気が出てるんだよね。
アンデッドが発散する瘴気っていうのは、強くなるほどに濃くなるって聞いたことがある。
だからお湯の沸いたやかんのように噴き出してるあの黒いのは、かなり強いはずだ。
っていうか、普通は見えるほどじゃないんだけどね。
で、私はクリスを見てみる。
なんも出てない。
クリスから瘴気が噴き出してるところなんて、私は見たことがない。
「うむ、主よ。スケルトンナイトと共に下がっているがよい」
その言葉は、少なくとも、先ほどのように私を背負ったまま戦える相手じゃないことを示しているわけで……。
うーん、やばいんだろうか……。
いざとなったら逃げたいところだが、他のスケルトンナイトよりも強いなら、足も速いんだろうな。
どうしよう、私、死ぬかもしれない。




