表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/82

75話 食っちゃ寝

「無理してでも耐性を完璧にするか、大人しく後方支援にまわるか、どっちがいい?」


「当然耐性を上げて戦います!」


ですよねー。この聞き方して後方支援に回ってくれるようならそれでも良かったんだけど、やはりそうはならなかった。卑怯な聞き方ではあったが、戦力として頼りになるアイラは戦うことを選んでくれた。そうなれば後はもうやるべきことをやるだけだろう。と言っても人間の軍隊が攻め込んでくるまでには、長い時間はないだろう。その間で完全耐性を手に入れるのはたぶん無理だ。時間が足りないのであれば、耐性のレベルに妥協をするか、修行する時間を無理やり延ばすしかない。


普通に考えるならば時間は有限なのだから妥協するしかない。しかし俺達には魔法があるし、オリヴィアというMPを大量に使える人材もいる。となれば、空間魔法+時魔法で修行時間を増やすしかない!!


家の一室を空間魔法で囲い、その中の時間の流れを遅くする。今まではかばんにかけるぐらいしか使ってこなかったが、この利用方法が出来ないわけじゃないのだ。ただ、周りとの生活リズムがめちゃくちゃになってしまうし、オリヴィアの協力が不可欠なので使ったことはない。それと他人に干渉する魔法は必要MPが増え、難易度も増す。なかなか気軽にできる修行ではないのだ。


俺、アイラ、オリヴィアの3人で一室に入る。アイラの修行に必要な最低限の人員だけだ。とりあえずオリヴィアの魔法がどの程度もつのかわからないため、ひとまず実験をかねた一回目だ。オリヴィアの時魔法があがるたび効率もあがって、長期間修行が出来るようになっていく予定である。


「では、いきます」


オリヴィアの掛け声とともに、この部屋は外と時間の流れが変わった。はずだ。確かめるすべがないのではず、としか言えないのがちょっとした難点だが。


「それじゃ、きつくなったら教えてくれ。アイラも修行を開始しよう」


「はい!よろしくお願いします」


アイラの手を握り、呪いを流し込んでいく。アイラが苦しみだした所で出力を固定して流し続ける。ここからは根気だけが頼りだ。自分の魔法で隣の女の子が苦痛の声を出しているというのはかなりきつい物があるが、自分だって耐性を取得するときには同じ事をしていたのでなんとも言えない。前に耐性を上げた時も同じ事をしたのだが、なかなか慣れるものじゃないな。雑談でもしていれば気も紛れるだろうが、アイラにその余裕はない。オリヴィアとだけするというのもなかなか気まずく、そのうち二人とも黙り込んでしまった。



それから数時間ほどたった頃、一番最初に限界を向かえたのはオリヴィアだった。アイラは根性全開で苦しみながらも耐え切ったが、オリヴィアのMPがもたなかった。


「すみません。私が足を引っ張ってしまって」


「いえ、この修行はオリヴィアさんあってのものですし、オリヴィアさんのMPを使い尽くすなんて改めてこの修行方法の滅茶苦茶さを感じます」


今のオリヴィアのMPは20万ほどある。それか僅か数時間で空近くまで行くのだから、恐ろしく効率が悪いと言えるだろう。一般的なCランク冒険者だと10秒ちょっと発動しただけで昏倒するレベルの消費だと言えばそのすごさが分かるだろうか。


俺達にとってはお昼ご飯までの時間が経過した感じだが、さて外はどのくらいだろうか。



「え?もう出てきたんですか?」


どうやら俺達が部屋に入ってからほとんど時間がたってないらしい。見送った後に始めた洗い物がまだ終わっていないと言うのだから、かなりの倍率だろう。この調子で修行を続けていけば、かなりのスピードで耐性のレベル上げが出来る!と喜んだものの、一つ問題が発覚した。


MPの補充方法をまったく考えていませんでした!!(間抜け)


この世界にはMPポーション等のMPを即時回復させる手段がほぼない。一応ダンジョンなどの人間の理の外の手段で回復させる薬があるらしいのだが、希少すぎて誰も持ってなかった。長老が以前そんな話を聞いたことがある気がする、と言っていた程度だ。過去はともかく現存するかすら怪しい。代わりにMP回復を促進する光魔法があるのだが、これを使うのにも当たり前だがMPを使う。一応思いついたところで俺とオリヴィアに継続的にかけてはいるのだが、魔法に対する習熟度が低いこともあって効果は気休め程度と言ったところだろう。光魔法の利用方法として毒や怪我などを一時的な発動で治すということしかしてこなかった。魔法をかけて、治れば終わり、という使い方だ。しかし今回の魔法は継続的に効果をもたらさねばならない。今までMPに困ることがなかったから使ってこなかったのが悔やまれる。




結局時魔法をかけた部屋でオリヴィアのMPが切れるまで(カップラーメンなら作れそう)修行し、オリヴィアのMP回復を待つ。また部屋に篭って修行しというサイクルを何回も何回も繰り返すことになった。MP回復の時間を完全な休憩に当て、睡眠時間や食事の時間はこの間に取る様にしている。そこまで切り詰めることで普通に修行するよりは倍ぐらいの効率を出せているのだが、それでもこのペースだと間に合わない気がする。オリヴィアの時魔法や、俺の継続回復の習熟度が早くあがることを祈るばかりだ。


それとこの修行方法なのだが、非常に由々しき欠点がある。それは周りからすると非常に怠惰な生活を送っているように見えることだ。ほんのかすかな時間を修行にあて、食っちゃ寝。また修行といって短い時間部屋に入ったと思ったら食っちゃ寝。二日目ぐらいで本当に修行しているのかを皆から疑われてしまった。しかもなぜか俺だけが。


アイラは直前まで呪いに耐えていたため、非常に憔悴した様子で出てくるし、オリヴィアはMP切れでだるそうにしている。その点俺はMPにまだ余裕があるし、呪いに耐えていた訳でもないので元気だ。食っちゃ寝生活をするために、二人を抱きこんだのでは?ということらしい。確かに戦争云々が始まる前は似たような生活をしていたので、反論がし難い。俺だって頑張っているのに!!


不本意な中傷(言われ無きではない)を受けながらも繰り返し、繰り返し修行を続けた。3日後には俺の継続回復が目に見えて向上し、休憩時間が減った。修行の時間は増えたが、寝る時間が減った。あれ?


効率上がった分をそのまま全部修行に向けたら、俺以外の二人が睡眠不足でパフォーマンスが落ちてしまった。結論としてはオリヴィアのMP回復力が上がっても、精神的な疲れは癒せないし、アイラの呪いでの疲弊は魔法でどうこう出来るものではない。なのである程度の休憩は必要ということになった。


俺のパフォーマンスが落ちない理由としてレベルによる恩恵と単純な負担が少ないということがあげられる。二人もレベルの恩恵はあるのだが、その恩恵を呪いで制限しているアイラと、MPとして出し切っているオリヴィアにはしっかりとした休憩が必須だった。


修行しながら寝られればいいのだが、当然魔法の制御が切れてしまうので不可能だ。部屋での修行時間が徐々に徐々に延びていき、その分外での休憩時間をまとまって取るようにした。やはり出来るからといって無理は禁物だね。

ブックマーク登録が100件を超えました。ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ