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71話 デモンストレーション

一番捕まっていそうな場所ということで衛兵が管理していると思われる施設に侵入。

まずは罪人用の地下牢から確認するも中にいたのは人間の罪人だけだった。他の部屋も見て回るが、いない。人間の警備ならたくさんいるのだが。一通り探してみたが、いそうな気配もないので別の施設へ。しかしどこの施設にも捕らえられてはいないようだ。


しかたなしに最後の場所として領主の館に侵入する事にした。すでに朝の活動が始まっているので、行きかう人間も多い。見つかる可能性が高まるから本当は入りたくなかったのだがまずは見つけないことには始まらない。こそこそと警備の合間を縫って領主の館に侵入すると、いた。どうやら普通に捕まえて拷問するのではなく、奴隷の首輪で支配することにしたようだ。獣人3人は能面のような顔をしながらも、領主達の質問によどみなくと答えている。


「それで再度確認するが、竜の森に獣人どもが国を作ったというのは本当なんだな?」


「はい。事実です」


「ドラゴンと一緒に暮らしていると言うのも本当か?」


「いえ、ドラゴンと暮らしているのではなく、ドラゴンは山の上に住んでおり、我らに協力するために山を降りてくるのです」


「なぜ貴様ら獣人にドラゴンが協力するのだ?」


「よく知りません」


「竜殺しが効かないと言うのは本当か?」


「そう聞いていました」


「ふむ、この様子なら首輪は間違いなく機能していると思っていいか。それでどう思う?」




「こいつらは大したことを知らない下っ端ですね。ですが、最近我が国を襲っている愚か者どもの正体がこいつらだということはこれで確定しましたな」


「場所もこいつらからの情報で得られたことだし、やっと反撃が出来ますな」


あちゃあ、すでに情報を吐かされた後だったか。まあ結構時間たってるし、奴隷の首輪があったら仕方ないか。


「ただ、こいつらの言うことが本当ならドラゴンがかなりの量いるとのこと、それの対策だけは考えねばなりませんかな?」


「そうですなぁ。ガイランの町には旧型の竜殺しがあったそうなのですが、そこではまったく意に介さず荒らされたとのことです」


「やはり、頼みは新型ですか」


「それしかなさそうですな」


「それでこいつらは処分しますか?」


「いや、帝都に送って見せしめが良いのでは?」


「いやいや、それよりも戦に連れて行ってこいつら自身に味方を殺させたほうが面白いのでは?」


「ほう、それはなかなかいい見ものですな!ははは」


ここにいるのは複数の貴族のようだ。品性は下劣だけど、身分は高いという見本のような連中だな。その新型というのを一度見てみないとどうなるか分からないが、呪いの効果を高めたものだとまずい。耐性スキルの欠点として、完全に害を及ぼさなくなったものからは経験値が入らない。つまり手持ちの竜殺しを完全に無効化することはできるが、それ以上に強い耐性は得られないのだ。


うーむ。やりたくはないがこいつらひとりひとりを拷問でもしないとだめかな?恨みがあったとはいえ攻め込んだ獣人達は割りと自業自得だが、国にいる非戦闘員を再びひどい目にあわせる気はない。であれば強硬手段もやむを得ないだろう。が、ひとまず穏便に行こう。


「その新型ってのはどこにあるんです?」


ここにいるはずのない第三者の声に非常に驚いたようだ。何人かは飛び跳ねたと言っていいような勢いで驚きを表していた。


「誰だ!?」


「こんにちは。無断でお邪魔してます、帝国の貴族の方々。それで、新型ってのはこの町にまだ?」


「ええい、警備はなにをしているんだ!」


「もうこやつらの救出に着たのか!こんな所まであっさり侵入するとは、なかなかの手練のようだが、生きて帰れると思うなよ!」


何人かは戦闘の心得があるようで、すぐさま武器を抜く。


「マッツィ!侵入者だ!侵入者がいるぞ!!」


外に救援を呼ぶ者もいる。


・・・


「マッツィ!どうした?返事をしろ!!」


しかしその声はむなしく響くだけだ。


「そのマッツィさんとやらは返事は出来ませんよ?」


「なにぃ!?貴様すでにこの館の人間を皆殺しにしたと言うのか!」


いえ、そんな物騒なことしてませんよ。まあ勝手に勘違いしてくれたので、そのままにしておこう。


「くっ、こんな所で死んでたまるか!」


部屋の外にいる護衛が全滅していると勘違いした結果、戦うより逃げる方向にシフトしたようだ。扉にしがみつこうとする者もいたが、ドアノブに触ることが出来ない。残念ながらドアの前の壁に阻まれてしまったようだ。


「なんだこれは!さ、触れない!」


ひとしきり全員が脱出しようと大騒ぎするのを眺めて待っていた。どうにもこっちの質問に答えてくれる状態じゃないからね。途中で獣人達を時間稼ぎにけしかけられたけど、一瞬で全員気絶させてから首輪を解呪し、かばんに放り込んでおいた。ひとまず救助任務は完了だね!


しばらく脱出しようともがいていたけど、ようやく諦めたようだ。


「よ、要求は何だ」


「では、改めて。さきほど話していた竜殺しの新型は今もお持ちで?」


「こ、ここにはない。あれは帝都からの借り物だ。今回成果が出たこともあってさらなる検証をすると言って持って帰った」


むむ、すでに持ち去られた後だったか。というかこいつの話が本当かどうか確かめるすべがなかったわ。現物がないんだったらアイラを連れてくれば良かったな。


うーん、どうしよう。この一番偉い人を誘拐するか?でも正直返しに来るのがめんどくさいんだよねぇ。かと言って国でリンチさせるってのもなんか違うしなぁ。


「あー、この国へのドラゴンを使っての攻撃は止めさせるから、戦争はなしにしません?」


「そ、それは私の一存では決められぬ」


「ですよねぇ」


「それにすでに相当の被害が出ている以上、我らがなんと言ったところで陛下が止まるとは思えん」


だよね。向こうにも面子があるだろうからそう簡単に引けるわけはないだろう。こうなったら完全に叩き潰すところまでやり合わないとだめか?


「貴殿、人間であろう?なぜ獣人どもに味方するのだ?」


「獣人達は俺にとってはおまけであって、俺が味方しているのはドラゴン達ですね。友達がいるので戦争になったら困るんですよ」


「で、では」


「それに、なんで人間だったら獣人と敵対しなくてはならないんです?」


「なんでって、神の教えでは・・・」


ん?案外真面目に信じてる口かな?貴族なんて都合がいいから利用しているぐらいだと思ってたよ。この人たちと仲良くなるつもりはないし、宗教談義はパスしておこう。


「申し訳ないですが、そちらの信仰を俺は信じていない、と言うことですね」


「・・・」


「表のドラゴンは、首輪の命令で反撃するようになっていますよね?


「そ、そうだが・・・」


「では、戦争を止める口実の候補として、これから表にいるドラゴンを叩き潰して(・・・・・)持って帰ります。それをご覧になったうえで懸命な判断をしてくれると嬉しいです」


言うだけ言って障壁を解除する。そして窓から出てガラの方へ歩いていく。


「ば、馬鹿め!自分から死にに行くとは!やってしまえ!!!」



後ろで貴族が命の危機から解放されて大喜びしているようだ。侵入者と判断したガラが俺に向かって爪を振り下ろしてくる。


「まったく、お馬鹿ちゃんめ」


デモンストレーションなので派手に行こう。避けられる攻撃だが、わざと避けずに受け止める。爪が当たると痛いので爪を避けた上で、腕を押さえる。さらに障壁で保護をかけているのでガラ程度の攻撃では通用しない。そのままちょっとジャンプしてガラの頭に手を添えると、文字通り叩き潰した。


地面に完全に顔が埋まったガラは微動だにしない。どうやら暴走する間も無く気絶したようだ。よかったよかった。首輪を解呪して取り外してから貴族達の方を振り返ると全員がぽかーんとしたまま固まっていた。よし、デモンストレーションとしてはばっちりだろう。


「それじゃ、お騒がせして本当に申し訳ない。あ、それと警備の人たちは全員無事です。皆さんの声が届いていなかっただけですので。それでは失礼しますね。もうお会いしないことを願っておりますよ」


ガラをしまって、その場を後にする。すたすたと普通の速度だったが、誰も俺を止めなかった。というか固まったまま貴族も、警備も動けなかった。

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