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66話 人助け

殺されかけた獣人達も、剣を振りかぶった人間達も固まったまま動かない。まあ普通に考えてドラゴンが空から落ちてきたらびびるよね。よく見るとだらだら汗だけはたれているのだが、その他は必死に動かないようにしているようだ。


ううむ、どうしよう?ぱっと見、人間の方をぶっ飛ばせばよさそうだが万が一獣人のほうが侵略をしかけて負けたとかだと困るんだが。


「一応聞くけど、何で切りかかってんの?」


「・・・」


あれ?返事してくれない。っていうか皆俺じゃなくてゴルラドの顔を見るのに必死なようだ。そりゃドラゴンの頭の上にいる怪しい奴より、ドラゴンに注目するか。ん?ドラゴン足蹴にしてるんだから、俺の方が上じゃね?ま、いいや。


「ゴルラド、皆さんお前にビビッて固まってるから同じ事聞いてくれ」


「ん?そうなのか?まあ我は偉大なドラゴンであるからな!」


こんな馬鹿っぽい奴が偉大とは。いや、っぽいじゃなくて馬鹿だったわ。(俺の中での株価大暴落中)


「うむ、では人間族の者よ、心して答えるが良い。何故獣人族の女子供を手にかける?」


途中から醸し出す威圧感はさすがドラゴンといった風情だ。ここだけなら格好いいんだけどなぁ。


「あ、ひ、ひああああああああ!!」


俺達の一番近くにいた人間が悲鳴を上げて逃げ出す。敵対しているドラゴン族に心せよと言われたら、まあ逃げるよね。弁解せずに逃げ出したってことで全員ぶっ飛ばして気絶させた。一人が走り出したことで奴ら全員が一斉に逃げ出したのだが、一番走れた奴で20歩ぐらいが限界だったな。それ以上は逃がさないよ!


「ヒッ」


身を寄せ合っていた獣人たちに近づくと帰ってきたのはそんな悲鳴だった。


「あーとりあえず襲われていたので助けたが、迷惑だったならこのまま立ち去ろう。ただ俺の仲間には獣人もエルフもいるから、必要ならこの後の手助けも出来るが?」


しばらく待ったが、特に動きはなかった。まあしょうがないよね。


「ゴルラド、戻ろう」


「ん?良いのか?お主は助けたかったのではないのか?」


「ひとまず命は救った。これ以上は望まれなければ大きなお世話だよ」


「そういうものなのか?人間族とは難しいな」


皆の下へ帰るためにジークとともにゴルラドに乗った。


「ま、待ってください!」


おお、釣れた。釣れなかったら本当にこのままここに放置になるところだったぞ。俺に声をかけたのは黒と白の犬耳を持つ女の子だった。


「なんでしょう?」


「あなたは彼らと同じ人族のはずです。それでも私達を助けてくれると言うのですか?」


「ええ。私は間違いなく人間ですが、彼らと同じ国に所属しているわけではありませんし、このドラゴンと一緒にいるのを見て分かるとおり変わり者なんです。人間族じゃないからって害する気はありません」


「では、では!助けていただいた御礼もまだで、図々しいのは承知しておりますが、我が村に残った戦士達をお助けいただくことは出来ないでしょうか!?」


「いいですよ」


「え、いいんですか!?」


なに言ってるのこいつみたいな勢いで確認されてしまった。即答しすぎて逆に怪しかったか。


「姫様お止めください!この方に我々の命を助けていただいたのは事実です。しかし我が村を滅ぼしたのもまた人族なのですよ!」


「でも、彼自身も先ほど同じ国に所属しているわけではないとおっしゃったではありませんか。それに、私達に助けていただく相手を選んでいる余裕はありません」


「姫様・・・」


「お礼は私に出来ることでしたら何でも致します。ですから、村のものを助けてください!」


「はい、それでどっちへ行けばいいですか?」


「あちらの方角へ」


「了解。ジーク!この人たちを守れ!行くぞゴルラド」


「ん?お、おお。我が子を置いていって大丈夫か?」


「この森にいる魔物やじゃジークは傷つけられないよ」


「まあ、お主が言うなら・・・」


ゴルラドに飛び乗って移動すること少し。すぐに煙が目印になっている村へ飛び込んだ。戦うまでもなくゴルラドの姿を見た兵隊は一目散に逃げ、木の陰に引っ込んだ。だが先ほどの連中と違って、木に隠れたところでこちらの様子を伺う余裕がある。そして唯一残った冒険者風の男は自信ありげにこちらへ近づいてくる。


「はっはっは!馬鹿なドラゴンめ!竜殺しを持つ俺の元へわざわざやってくるとはな!これで俺の財産も!名声も!また膨れ上がるぜ!」


兵隊達がこちらの様子を伺う動機はこいつのようだ。

シャキンと竜殺しの剣を抜き放つその仕草は、かなり芝居がかっていた。


「どうだ?苦しいだろう?はっはっは」


「うむ、おろかな人間よ。以前の我であればその武器の前に膝を屈していたであろう。だが、残念ながら今の我には一切通用せんのだ。すまんなぁ。そなたの野望を挫いてしまって」


「は?え?」


しゃべりながら振りかぶったゴルラドの一撃であほはつぶれた。残念ながら最後まで状況が理解できなかったようだ。耐性つけておいてよかったね!

こちらの様子を伺っていた兵隊達は速攻で逃げていった。まあこいつらまで追いかけることはないだろう。めんどくさいし。


「あー獣人の村の人よ。生き残りはいるか?」


俺が声をかけても誰も姿を現さない。13人の生き残りを探知しているのだが、警戒して顔を引っ込めるばかりだ。


しまったお姫様の名前を聞いてくるのを忘れた。


「あー姫と呼ばれていた女の子達を追撃の兵士から助けた。その後その女の子に残った戦士の救助を頼まれたのでこの村へ来た。えっと、疑うなって言うのも無理だし、なんて言えばいいんだ?」


「その子らは我が子が護衛しておる。早めに迎えに行くが良い」


「と言うことだ!じゃあ俺たちは戻るから」


「待て!今の話は本当か?」


おお、やっと反応が。うーん、俺だけじゃやっぱり頼りないのかな?それとも人間だからかな?俺自体が怪しいとかじゃなくて人間だからだといいな。ん、でもそうするといつまでたっても初めての人には怪しまれるのかな・・・?


「俺達があんた達をだましてもなんにもいい事はないよ」


「それも・・・そうだな。助けてくれて感謝する」


壊れた家の壁から出てきたのはかわいい犬耳にむさいおっさんをくっつけた犬の獣人だった。耳的に先ほどのお姫様のパパかな?称号に村長ってあるしね。


「それで、逃がした娘達も襲われていたと?」


「兵士に切りかかられていたよ。まあそこに行き会ったのは完全に偶然だけど」


「うん?よくは分からんが、なんにせよ助けてくれたのは事実なんだろう?感謝する」


「いーえ、それで、どうする?この村じゃ生活は・・・難しそうだけど」


「そう、だな。だが死者は葬ってやらねばならぬし、この村を捨てたところで行く当てもないしな」


「(村にでも呼ぶ?フィードとかなら反対はしなさそうだけど)」


「(うん?うーむ、お主とは立場が違うからどうであろうな?なんにしても我の一存では決められぬしなぁ)」


「(山の下は?)」


「(そこならまあ激しく反対されることもなかろう)」


「ドラゴンの住む山の下に引っ越してみる気はない?住居があるわけじゃないから作り直しにはなるけど」


「なに・・・?」


「魔物もいるから完全に安全って訳じゃないけど、人間は入って来れないと思うよ」


「む?むう・・・。確かにこのままここに再建しても先ほどの兵士達がまた攻めて来るのは間違いない・・・少し相談させてくれ」


そういって彼らは相談を始めてしまった。え、村の引越しなんてこの場ですぐに決定できるのか・・・?


彼らは聞こえないように話ているつもりなのだが、割と丸聞こえだったりする。


「(卑劣な人間族なんかに頼っては獣人族の恥。どうか、お考え直しを)」


「(だが、彼らに頼るしか道はあるまい?)」


「(いや、我らを奴隷とする罠の可能性も)」


うーむ、ゴルラドの時よりいらっとくるな。親切っていう文化は他種族間でははぐくまれなかったんだと思おう。


そのあともぼそぼそと不毛な相談を続けていた。村長さんは引越しするつもりみたいだけど、生き残った戦士たちは人間への疑いを捨てられないようだ。


「ねえ、とりあえず女の子達をここまで戻してきていいかな?」


「あ、ああ。すまぬ」


「それで、こっちもドラゴンの長老に確認取るから話を進めるのは明日でいいかな?今日は死者の弔いもあるだろうし」


「分かった。どちらにせよ、結論は出しておく」


その後ジーク達の所から村までの護衛を済ませ、俺達は家に帰った。ゴルラドはテンプレ通りお話し合いに出かけていきましたとさ。

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