65話 気分転換
今日はゴルラドの背中に乗ってジークとお出かけだ。最近毎日ドラゴンや皆の苦鳴を聞いているので、俺の気持ちがちょっと落ち込んできた。このままじゃ欝になりそうだ。そのため気分転換のお出かけだ。耐性の取得を最優先したため、ジークとの時間もあんまりとれなかったので久しぶり遊ぶのだ!
・・・
最初はアイラと出かける約束をしていたのだが、ジークが駄々をこねたためこうなった。忘れずにフォローしておかないと後が怖い・・・。
ゴルラドは一応保護者枠なのだが、イレーネさんがジークによく見張っておいて後で報告するようにと言っていたので、どちらが保護者か分かったもんじゃない。その時ゴルラドは悲しそうな顔をしていたが、余計な口出しはしなかった。こないだ折檻されたばかりだから、無難な選択だね!
しばらくゴルラドの背中に乗って景色を楽しんでいたのだが、ジークが飽きてきてしまった。目的地が決まっているわけではないのでどうしたものか。ジークは変身できないので、町に連れて行くことは出来ないし、出来たとしてもこないだの今日でそんなことをしたら恐ろしい目が待っているに決まっている。
「おお、そうだ!ここらで飛行訓練はどうだ?ジークもそろそろパパと一緒に飛びたいだろう?」
「ギュア!」
飛行訓練と聞いてジークも大喜びである。というのも、ジークは空を飛べるようになってはいるのだが、高度がかなり低いのだ。今もイレーネさんの指導の下訓練を続けてはいるのだが、過保護なイレーネさんが高い所を飛ぶ許可を出さない。いつも俺達の家の周りをぐるぐるするだけなので、早く大空を飛びたい!というのが、ジークの最近の願いだった。ちなみにどのぐらい低空飛行なのか尋ねたら、後500回ぐらいでしょうか?という意味のわからないお言葉をいただいた。子供がそんなに長期間耐えられるわけないじゃないか・・・。
「おーい、盛り上がってる所悪いけど、そんなことしてイレーネさんに怒られない?俺まで巻き添えで怒られるのは勘弁なんだけど?」
「なにを言う!ジークも喜んでおるではないか。ジーク!パパと練習したことはママには内緒だぞ?」
「ギュアギュア!」
「・・・なんて?」
「もちろん!と言っておる。さーてどうするかの?」
子共との約束なんて信じて良いんだろうか・・・。イレーネさんとしゃべっているうちにぺろっとしゃべってしまう未来しか見えないんだが。
「俺はとめたからな」
「のりの悪いやつだのぅ!大丈夫に決まっておるわ!よし、ジークよ、パパがホバリングしておるのでここから飛び立つのじゃ。もし失敗してもすぐに拾ってやるからな!」
「ギュルアアアアアアアア!!」
ジークは気合一発、大空へ飛び出した。ゴルラドの背中をかけて助走をつけ、父親の頭を蹴飛ばして飛び立ったのだ!幸い助走は足りたようでゴルラドから少し離れた所を大喜びで飛んでいる。ゴルラドも我が子が大空を飛んでいる所に感動して涙を流している。さっき思いっきり頭蹴られてたけど、それでいいんだろうか。
「なあ、感慨に浸っているところ悪いんだけど、お前が起こした風圧でジーク落ちてってるぞ?」
ジークは喜びのあまりに不用意に近づいたため、ゴルラドが起こした風に抗うことが出来ずに、姿勢を崩した。その際にぐるぐるまわってしまい、錐揉み回転しながら真っ逆さまで落ちていっている。
「なにぃ!?」
その後のゴルラドの行動は早かった。アニメかというぐらいの速度で真下に加速して、飛び込んだ。それはもう早かった。一応羽を動かして空を飛ぶ生物のはずなのに、空中でその加速はおかしいだろうと言うレベルだった。ジークが落ちたことでパニックを起こしてしまったのは分かるのだが、乗っていた俺を空中に放り出して飛び出すのはやめて欲しい。普段魔法で俺達が落ちないように配慮してくれているのだが、それをすっぱり忘れたらしい。背中から跳ね飛ばされた時に、急加速過ぎて掴んでいたゴルラドの鱗を引っぺがしてしまったが、その痛みにも気づいていないようだ。
俺が落ちながら姿勢を戻して下を見てみると、ジークがゴルラドにキャッチされたところだった。
「ジーク、すまぬ!無事」
って所までは聞こえたが、その先は俺がゴルラドを追い抜いてしまったので聞こえなかった。それと当たり前なのだが、ジークをキャッチしたゴルラドは水平飛行に移っており、俺からは縦でも横でも、離れていっている。
と、まあ冷静に状況判断をしていてなんなのだが、俺は空が飛べないし、いくら高い所とはいえどんなにがんばっても一分もたずに墜落する。ど、どうしよう。
とりあえず上空に火魔法で爆発を作ってゴルラドへの合図としたが、気づいてくれるんだろうか?体を広げて、空気抵抗を受け、なるべく時間をかけて落ちるようにはしている。だがそれも、ゴルラドが気づいてくれなければ無駄な抵抗だ。
森が、かなり近づいてきた。ああ、碌でもない死に方だったな。まあこっちに来てからは濃い人生だった。今までは想像もしなかったような色々なことが味わえた。憧れのドラゴンにも会えたし、我が人生に一片の悔い無し!
ってふざけんな後悔ありまくりだわドラゴンに会えて嬉しいけど死因がドラゴンから放り出されての墜落死とかダサすぎだろぬわあああぁぁたぁぁあああすぅうううけぇぇええてえええええええ!!
百舌鳥のハヤニエよろしく木にぶっ刺さる直前、がくんという衝撃と共にゴルラドに拾われた。
「我から飛び降りるとはなにを考えているのだ!?如何にお主と言えど無事ではすまんぞ!?」
ぷちっ
気づいたときにはゴルラドの頭に這いより、本気で殴って墜落させていた。
「ぬぉおおおお!?」
ゴルラドは水平飛行から森の中へ大きな音を立てて墜落。ジークは自分で飛んで難を逃れていた。俺はゴルラドの頭からジャンプして勢いを殺し、再度頭に着地。
「な、なにをするのだ!?如何に友といえど今のは許せん・・・ぞ?」
だらだらと汗を流し始めるゴルラド。
今の俺は覚醒+恐怖を放っている。遠くの方では余波を受けたジークが羽で顔を包み尻尾をしまってがたがた震えている。
「あ、あれ?お、怒っておるのか???」
「なあ、ゴルラド。ジークを落としたお前がてんぱるのは分かる。大事な息子だからな」
「そ、そそそうだだなな」
「だが、俺を空中に放り出した挙句、落ちたのは俺のせいだと?お前は、俺に、喧嘩でも売ってんのか?」
「す、すまなかった!謝るからそ、それをとめてくれ!!」
このおっとぼけドラゴンめ、帰ったらイレーネさんに密告してやるからな。ジークを危険に晒したことも含めてな!
ん?
ふと気づくと俺達の前には剣を振りかぶった人間族の兵士と思われる連中と、どう見ても村からそのまま逃げ出してきましたと言う感じの獣人族の女子供がいた。自分の事で頭がいっぱいだったが、どうやら人間族の侵略部隊にぶつかってしまったようだ。




