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53話 お礼

「そうですか・・・。人の子よ、我が子の命を二度も助けてくれたこと、真に感謝いたします」


説明自体にはそんなに時間がかからずにすんだ。というかゴルドラが言いづらいことをごにょにょ誤魔化そうとするとバーン!!と足を振り下ろし、


「なんですって?」とか「はっきりおっしゃってください」と言って詳細を(きょうはく)していた。


時々「今の話は本当ですか?」とか「どうしてそうしたのですか?」と俺たちにも話や意見を求めてくることもあったけど、襲い掛かってくることはなかった。

ジークが傷ついたくだりではぴくっと動いてこちらをびびらせてくれたけれど、ぐっと我慢してくれたので助かった。というかこれゴルラドのそばにいるのがまずい気がしてならない


「我が子の誕生を見れなかったことは残念ではありますが、守っていただき、一人で生きていけるようにと育ててまでいただいたあなた方には感謝しかありませぬ。また夫が早とちりして襲い掛かったこと、私からもお詫び申し上げます」


「寝起きで焦っていた所に出くわしてしまったのですから、タイミングも悪かったのでしょう。それこそジークが守ってくれたので誰も死なずにすみましたから」


「ええ、我が子ながら恩人を守る心があることを誇りに思います」


すでにジークは母親の足元におり、甘えまくっていた。母親・・・イレーネさんのほうも愛情いっぱいといった様子だ。


「うむ、ジークがいいオスに成長してよかったな!我もほk」


「あなたはあとでお話(せっきょう)があります。いいですね?」


「ハイ・・・・・・」


とりあえず俺たちに八つ当たりはなさそうでほっとした。ちなみにこの奥さんレベルが80あり、旦那より強い。また年もかなり上で4200歳である。かかあ天下って奴ですね。ドラゴンってのは長生きにもほどがあるな。


「この森に入ってきた理由は先ほど伺いましたが、あなた方のこの後のご予定は?」


「いえ、特には。ジークもお渡しできましたし、ひとまず仲間の下に帰るだけですね」


「そうですか。では私の家までちょっといらしてくださいませんか?恩人に少しでもお礼がしたいのです」


「えっと、そこまでしていただかなくても・・・」


ジークもそれはいいみたいな顔で頷いてるんだが、この奥さんの地雷が分からない以上ちょっとついていくのは怖い。


やめろジーク、その裏切られたみたいな顔は。


「それに我々ではお宅まで移動するのにも大分時間もかかってしまいますし・・・」


「いえ、それには及びません。私の背中に乗ればよいですし、帰りも送らせていただきます」


え、ドラゴンの背中に乗せてもらえる!?


「ぜひ、お願いします!」


ハッ、つい願望がもれた!!


「本当ですか?それはよかった。人間の客人も昔はいたんですが、一部の馬鹿のせいで疎遠になって久しいですからねぇ」


昔は友好的な人?もいたんだな。ちょっとその辺の話は気になる。それこそこの世界の歴史を見てきた存在だ、人間の世界では歴史に消えた興味深い話が聞けるかも?


「(ご主人様お願いですから考え直してください!ドラゴンの背中に乗るなんて、私恐れ多くて無理ですよおおおおぉぉ)」


などとアイラが泣いていたが、イレーネさん相手に一度OK出したものを撤回する勇気はなかった。なんかすごい嬉しそうにしているので、断った時の落差が怖い。



そうして俺たちはイレーネさんのお宅に招かれることになった。しかもドラゴンの背中に乗って空を飛べるというおまけつきだ。これはとっても嬉しい。これで転移してきた甲斐もあるというものだな!


「では、どうぞ」


「はい!」


ぴょーんと俺はジャンプして乗らせてもらった。靴脱いだ方がいいかとか一応聞いたけれど、そんなことは気にしないのでどうぞとのことだ。オリヴィアも遠慮しながらではあるが乗ってきた。ジークはゴルラドの上に乗っている。アイラは、


「あの、その、私は竜人族でして、その私がドラゴン様の上に乗るだなんて恐れ多くて、そのむ、無理です!」


と言ってその場から動けなくなっていた。めずらしくアイラが頑固だな。いざとなれば諦めるかと思ったんだが、それだけ竜人族にとって竜族とは特別な存在なのかもしれない。


「ふむ、竜人族の娘よ、私の命令が聞けない。そう言うのですね?」


「ヒッ、い、いえ、そそそう言う訳では!」


うん、やっぱり怒らせるべきじゃないね。


「あなた達が我々ドラゴンを特別視しているのは知っていますが、私が良いと言ったのです。気にせず乗りなさい」


これ以上は本当に怒りそうで怖い。アイラだけを置いていかれても困るし、無理やり乗せるか。


そう決めた俺はぴょんと飛び降り、アイラを抱えて再度飛び乗った。アイラはあひゃあとか変な声を出していたがスルーだ。


「乗りました!お待たせしてすみません!」


「よろしい。では飛びますよ」


そう言うとイレーネさんは助走をつけ飛び立つ。助走といっても三歩走った後に力強く地面を蹴る。ドンッと大きな音がしたが、不思議と揺れはほとんど感じなかった。


急激な加速感も、俺の苦手な浮遊感もなかった。だが数秒と経たずにかなりの高度に達していることが分かる。森が、山が小さく見える。端っこの方にかすかに人間の町も見える。


「アイラ、すごい光景だぞ!見てみろ!」


「へ?ふあああああ・・・」


俺に抱きかかえられたことに驚き、目をつぶっていたアイラが周りの景色をやっと見た。飛行機にのって上空の光景は見たことあるが、そんな俺でも感動するものだ。初めてのアイラとオリヴィアにはたまらないものだろう。二人とも驚きのあまり固まっている。アイラは驚きのあまり口をぱかっと開けたまま呆けている。オリヴィアも驚いてはいるが一応口元を押さえてる当たり育ちのよさを感じさせるな。


「ふふっ私たちからすればいつも見ている光景ですが、人ではなかなか見られないものでしょう」


俺たちが堪能できるようにとゆっくり旋回してくれている。下の方を覗いてみるとゴルラドもジークを乗せて同じようなことをしていた。ジークは喜びからか雄たけびを上げている。


「では、そろそろ行きますよ」


そう俺たちに声をかけた後に移動を再開した。やはり特に加速感などはなく不思議な物だった。風は空間魔法ではじいてるのは分かるんだけど・・・後で聞いてみよう。




飛ぶことしばし、まだまだ距離のあった山がぐんぐんと近づいてくる。やはり空の上のドラゴンは桁違いだな。


「お宅は山頂ですか?」


「いいえ、すぐそこの岩壁に横穴があるのよ。もうつくわ」


イレーネさんの言葉通り、岩壁にいくつも穴が開いている。ということは全部これドラゴンの巣?


「安心して頂戴。確かに岩壁にはたくさん竜族が住んでいるけれど、あなた達を襲わせはしないわ。」


俺の体が硬くなったのが分かったのか、そう声をかけてくる。隣では二人も身を固くしていた。だがこの量に囲まれたらどうしようと死ぬので、警戒するだけ無駄だろう。しかしこのドラゴンが俺たちをだまし討ちする道理もないはずだ。そう思ってさっさと諦めた。


「以前は人族とも交流があったとのことですが、その頃からここに?」


「いえ、以前はもっとばらばらに、この大陸のあちらこちらで気ままに暮らしていたわね。平地や、森のものもいれば今みたいに山に住んでたものもね。さ、着くわよ」


ふわり、と一つの巣穴に着地した。良くこれだけあって自分の家を間違えないものだなと思う。彼らからしたら特徴があるのかもしれないがぱっと見ただけでは同じような穴にしか見えない。

巣穴はかなり横にも、奥にも広かった。イレーネさんの隣にゴルラドが着地するだけの余裕があるのだからその大きさが分かると思う。


「ようこそ、我が家へ。歓迎するわ」


イレーネさんから降りてその後ろをついていく。ジークも俺たちと一緒だ。さてさて、ドラゴンのおうちってのはどうなってるんだろうな?

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