52話 襲来
竜の親子は俺の取ってきた獲物をペロッと食べた。というか獲物用のバックに入っていた過去の獲物も出したけどそれもペロッと食べて次は?見たいな顔をしてこちらを見ている。最初に出した奴はジークに上げるつもりだったので中型のイノシシだ。正直ジークにはちょっと大きいサイズだが、親の方は・・・一口サイズだな。なので追加で熊と牛とバジリスクを出したのだが・・・。大食い過ぎるな。
「悪いな、あなたが満足するほどは出せそうにない。ちょっとしたおやつだと思って諦めてくれ」
「ん?おお、そうだな。人間族と我では体のサイズが違いすぎるものな。いや、うまかった感謝しよう」
ちなみにジークもなぜか親用の獲物に食いついている。お前の体のサイズから言えばあきらかに食いすぎなのでは?と思ったのだが、亜空間にでも消えてるかのごとくお構いなしに食べ続けていた。人間みたいに腹が膨らんだ様子もない。食えば食っただけ体力を回復できるとでも言うのだろうか。ドラゴンって奴はやはり恐ろしい。
「で、おやつも終わったしというところで名前を教えてもらえるか?俺の名はケン、こっちの女性がアイラで、奥がオリヴィアだ。それと名前がなかったのでこの子にはジークと名付けさせてもらった。もしすでに名前が決まっていたなら申し訳ない」
「我としたことが名乗るのを忘れておったわ。我が名はゴルラド。まあお主らがジークと名付けた子の父親である。名前に関しては不問にしよう。この子も気に入っているようだし、我と対等な相手に送ってもらった名前だ。不満はない」
ちょっと安心した。最初の暴走具合から考えるとまったく話の通じない相手かと思ったが、さっきも思ったとおり力量さえ示せば意外と話しの通る相手だったようだ。まあドラゴン以外が力量を示すのはほとんど不可能に思えるがな。
「それでジークの卵はなんで盗られたんだ?人間族がっていってたけど」
「おお、それよ!!!我が妻より預かって暖めておったのだがな?うっかり昼寝をしてしまったのだ。それで起きたときには卵がなく、人間族の足跡だけが残っていたというわけだ」
「それで足跡のある方へ探しにきたって事なのか?」
「その通りだ。探し始めてすぐに見つかるとは我の運も捨てたものではないと思ったな。卵から孵っておったのには驚いたが」
ん・・・?まてよ?俺たちジークに合ってからかなりの時間経ってるぞ?具体的に言うと100日以上は間違いない。それなのに卵盗まれたことに気づいてからすぐに追ってきただと?
「もし我が子が見つからねば人間の町まで飛び込むところであったわ。一応ある程度近くまで行けば魔力で分かるんだが、それも万能ではないからのぅ。人間に負けるとは思わんがお主が使っていたような武器もあるでのう。矮小な種族とはいえ油断でき」
「なあなあ」
「ん?なんじゃ?」
「うっかり昼寝って・・・何日ぐらいだ?」
「ん?日ってのは人間の単位だったか。えーと日が昇って落ちて昇るまでが1日だったな?それでいくと・・・150日ぐらいは寝たんじゃないかの?」
うん、色々とまあスケールがおかしいな。そんだけぐーすか寝てれば卵盗むのも容易だわ。
本当にジークが無事なうちに会えてよかった。
「その長い期間の間に奥さんが様子見に着たりしなかったのか?」
「ああ、ジークが孵りそうになったら我が呼びに行く約束を・・・しまったぁぁああ!!!」
すごい爆音で叫ぶのやめて欲しい。鼓膜が破れるぞ。まじで。
「孵る瞬間を見せる約束だったのに、すでに孵ってしまってるじゃないか!あわわわ、ど、ど、ど、どうしよう!ジ、ジーク!お主卵の中に入れ!なに?どこにあるか分からんだと!?どーして殻をちゃんと持ってこないんじゃ!」
うん、すげー無茶苦茶言ってるわ。
「なあ・・・奥さん、怖いのか?」
「こ、こ、こ、怖いのかだと!?我に恐れるものなぞあるわけなかろう!」
うん、怖いんだな。そんな怖い奥さんだと俺たちがついていくのは無理かなぁ。人間にいい感情は持っていないだろうし、それこそ殺し合いになってしまいそうだ。
「じゃあジークは親元に帰したし俺たちはひとまずここまでかな?」
「ギャウ!?」
ジークがすごい驚いた顔をしているけどしょうがないじゃないか。
「え、我とジークだけであやつの相手をするのか!?卵から孵る所だけでなく名付けも終わってると説明せねばならんだと・・・?」
「やはり怖い奥さん相手だとまずいか?」
「怖くなどないと言っておろうがっ!!し、しかしだな、名づけたのは我ではないわけだし、名付け親の責任というかだな」
「だけど奥さんは人間と仲良し、とかはないでしょう?」
「まあ、そうだな。竜族は元々そこまで多くなかったのに人間族に数を減らされたからな。いい感情は持っていまい」
「では、下手に顔など出したらまた殺し合いになるでしょ?俺は誰か一人でも傷つくのは勘弁だよ?」
「ぐ、ぬう・・・」
俺とゴルラドが話している間もジークは抗議の声を上げていた。だが見かけた瞬間暴れだす可能性を考えると、とてもじゃないが一緒に行こうとは思えない。ジーク単体なら危険もないだろうが、俺たちといるだけでジークにとっても危ないしな。
しばらく問答は続いたがジークも俺たちの命に関わるということでやっと諦め、母親を説得した後に再開することを約束した。生まれたばかりと言っていいジークにとっては初めて得た味方が俺たちだ。その分大事に思ってくれているみたいだ。泣く泣くという表現がぴったりの状態だがなんとか決心してくれた。それまでにはアイラとオリヴィアに散々泣きついたのだが。
「我が子を救ってくれたこと改めて感謝する。それと我が子の為でもあるし、なるべく早く訪ねる事を約束しよう。それまで、あ・・・」
え、なに最後のあって!?
「すまん、手遅れだったようだ。妻がその・・・こっちへ猛スピードで向かっておる」
「はあ!?なんで!??」
「分からん!我が戦ったので緊急事態だと思ったのかも知れん」
「そんなこと分かるのか?遠いところに居たんだろう!?」
「ええっと、番がよっぽど傷つけば一応それは伝わるのだ!そこまでの負傷だと我は思ってなかったが、感知されたらしい」
「さっきの戦闘のせいかよ!ってことはめっちゃ戦闘モードでここに来るって事じゃないか!さっさと逃げなきゃ!後どれぐらいでくるんだ!?」
「逃げる時間はない!全員我の下に入れ!」
まじかよ!と思いながら全員でゴルラドの腹の下に入る。その直後、
「来ます!」
オリヴィアの結界に引っかかったらしく、警告の声が上がる。それを受けてオリヴィアの障壁に重ねて俺も障壁を張った。
ゴルドラも伏せて俺たちを体で覆ってくれる。俺の結界でも反応を拾えたと思ったところで、ドガーン!!とゴルラドと変わらない質量の物体がすぐそばに落ちてきた。隕石かと思わせるような衝撃と砂煙。何の準備もなしに受けたらこれだけで普通の人間なんて十分死ねるだろう。
「あなたが傷つくなんて我が子のピンチかと思い飛んできましたが、無事のようですね。それは良いとしてなんで我が子は孵っているし、あなたは人間なんかを庇ってるんです?」
うん、言い方は大人しいし怒鳴ったりはしていないが、怖い。後ろに般若が見えるとかそういう表現を漫画でしていたが、まさしくあんな感じだ。
「お、お、お、落ち着くのだイレーネ!ちゃんとせ、説明するから!あとこの人間達は我が子の命の恩人だからて、手を出すでないぞ!」
命の恩人と言ったところでイレーネさんの目がギラリと光りました。ええ、とても怖いです。
「出来るだけ、分かりやすく、順を追って、説明してください。納得がいけば襲い掛かったりしませんわ」
どう見てもそんな雰囲気じゃないが、言うことを信じるしかないな。頼むからうまく説明してくれよー。




