30話 決着
前衛が前に、後衛が後ろに展開する。盾持ちが後衛を守り他の前衛が俺たちを取り囲むように動く。一応パーティとしては動けるようだ。
マテウスが俺の正面から切りかかってくる。
「死ねっ」
カキンッ
大剣を俺の剣で受け止めようとしたが一発で切れた。
「うっそ」
危なく俺の顔面に刺さるところだったよ。
「俺の剣がああああああ!なにしてくれやがる!銀貨50枚もしたんだぞ!」
あれ?なんかぽかーんとした顔で見られた。あと他の戦闘も止まった。
「ぎ、銀貨50枚だと!?そんな武器で俺たちと戦いになると思っているのか?」
「え、うん」
「ふざけるな!俺たちの武器はアダマンタイトを基礎に竜の因子を組み込んだ滅竜武器だぞ!最低で王金貨が必要な武器だ!」
「むう。王金貨ってなんだし。装備ばっかりいいの持ちやがって!」
「あの、ご主人様そろそろ恥ずかしいんでやめてくれません?」
えーアイラに裏切られたひどい。
しょうがない打ち合うのはやめるか。
再開した戦闘では大剣を全部避ける。防具も正直役にたたなそうなので回避し続けている。
たまに後ろから弓が飛んでくるがそれも全部かわしている。たまに掴んで折ったりしてる。
「なぜ当たらない!?どうしても俺たちの攻撃を避けられるんだ!」
「遅いから?」
「なんだと!」
「散って!」
おしゃべりしていると後ろの魔法使いから声がかかる。
俺たち以外が全員ぱっと引いた。
「ファイヤーストーム!」
燃えた竜巻が突っ込んでくる。こんな狭い部屋で正気か!?酸素が!
「えーと、とりあえず結界か!?」
俺の出した空間魔法で作った結界は一瞬でちぎれた。
「悪い、だめだったわ。魔法関係の鍛錬がまだまだだなぁ」
「なに、暢気なこといってるんですか!こんなの受けたら熱いじゃないですか!」
熱いですんだら十分すごいと思うんだが。
「私が」
後ろで詠唱していたオリヴィアが俺たちの前に結界を張ってくれた。オリヴィアが張った結界にぶつかって竜巻の動きが止まる。
おおーさすがLv5は違うな。俺も早く上げたいな。単発ならいくらでも避けられるけど範囲魔法はこの狭い部屋じゃ無理だった。
さて変な魔法で負けても嫌だしさっさとけりをつけるか・・・。
俺は・・・殺すぞといいながらもなるべく殺さないですむことを願っていた。
やっぱり魔物を倒すことには慣れても人間には・・・手を下したくない自分がいる。
だがもうここまで敵対した以上しょうがないことだろう。
それにこいつらにアイラを渡せばすぐに殺され、新たな装備の素材にされてしまう。変身をといて竜人の姿をしている今のアイラはあいつらにとって金袋にしか見えないことだろう。そんなことはお断りだ。
派手に燃えている竜巻を隠れ蓑に、気配を消した俺は奴らの後ろに回りこむ。魔法の制御に気をとられ、無防備に立っている魔法使いの後ろから近づいた。
首に折れた剣の残った刃をたたきつける。彼女が死ぬと同時に魔法も消えた。どさりと倒れた音に反応し奴らが振り返る。
「な!?イゾルデ!?」
「そんな、いつの間に!」
「ひどいっ」
僧侶の女がそうつぶやいて目を逸らした。
「ひどい?人を殺しに来ておいてなにをふざけたことを。それにもう散々人を殺してきただろう?お前らは」
「人?神に選ばれた彼女と盗賊や亜人、あなたたちなんかを一緒にしないでください!」
選民思想ってのは恐ろしいものだ。一応可愛い顔した女の子何だけどなぁ。
「あっそ。まあ殺しに来たのはお前ら何だから俺は抵抗するよ?お前たちがなんて思おうと、ねっ」
一番近くにいた弓使いに向かってしゃべりながら近づく。本気で移動しているので奴らは俺の姿をほとんど追えていないようだ。一撃で弓を破壊し、そのまま本人を切り伏せる。やつらは確かに物理にも魔法にも強い装備を身につけているが、隙間を縫うことは俺たちならたやすい。基本的なスピードが違いすぎるので避けることも、受けることもできていない。
反転し俺のほうに走り出そうとした盾持ちはアイラの一撃で沈んだ。
盗賊はオリヴィアの魔法で倒れた。俺にも使ったシャドウバイトが避けられず、伸び上がった影に切られていた。ただ魔法は装備のせいで大分減衰したらしく一応まだ生きてる。ただ当たり所が悪かったらしく、血が勢いよく出ているのでそのうち死ぬだろう。
「さて、あとはお前たちだけだな」
「そんな馬鹿な馬鹿な馬鹿な!俺たちは選ばれたSランクだぞ!お前たちCランクが勝てるわけがないこんなのはなんかの間違いだ!」
「いやいや、お前らそろいも揃って装備頼りじゃん。だったら装備のないところ狙えばこんなもんでしょ?」
「くそぉおお!ティア!お前だけでも逃げるんだ。ここは俺がなんとしても止めるから!」
「そんな!マテウスを残してはいけないわ!」
あれーなんか変なドラマ始めちゃった。何で俺たちが悪役ポジションなんだ。
「いいから行け!うぉおおおおおおらぁああああああ」
俺めがけて大上段から両手剣を振り下ろしてくる。スピードの違いを生かして懐にもぐりこみ握り手を抑える。そのまま首を飛ばした。
ティアと呼ばれた女はアイラに倒されていた。あーあ、下手に名前なんて知りたくなかったわ。
「ふう・・・人殺しはきついね」
「向こうから襲ってきたんだししょうがないのでは?」
「まあそうなんだけどね。オリヴィアこいつらの死体ははダンジョンが吸収する?」
「ええ、放っておけばそうなりますけど・・・装備とかいいんですか?」
「悪いけどこんな奴らのものでも死体に手をつける気にはならないし、こいつらの装備なんてつけてたら一発でばれちゃうから放置かな」
「そうですか。わかりました」
気配を断ってた原因だけ知りたくて、装備をいろいろ鑑定してみる。
どうやらマントがその役割を担っていたようだ。魔力を通すと気配遮断の魔法がかかるらしい。これもドラゴンを素材にした装備のようだ。さぞかし儲けたんだろな。
「じゃあこのダンジョンに用もなくなったし、帰るかオリヴィアも俺たちと一緒に行かないか?同族を探すなら手伝うぞ?」
「・・・厚かましいかもしれませんが、お願いしてもいいですか?見た目はなんとか魔法でごまかしますが、正直私は魔法容量はともかくとして体力にはあまり自信がないので・・・」
魔人族の見た目はほとんど人族と変わりないが、頭に羊の角のようなものがあるのが特徴だ。これさえ隠してしまえば正直見分けはつかない。
「魔法容量って?」
「えっと一つの魔法を使ったときにその人が使える限度回数を魔法容量最大値といいます。私の場合は例えばシャドウバイト100回ほど使うともう魔法が使えなくなります。これはかなり多い数値なんですが、それでも他にも魔法容量を使うことを考えるとちょっと心もとないですね・・・」
「えっと・・・シャドウバイト一発撃ってみてくれる?」
「え、はあ。いいですけど。・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・シャドウバイト」
うーん 鑑定した見た結果MPでいうと15程度だ。やっぱり封印される前と封印された後でMPの最大値が変わってると考えるしかなさそうだ。
「えっと、コアと繋がってたからだと思うんだけど今の君の魔法容量最大値、まあ俺はMPって呼んでるんだけど、は封印される前の100倍ぐらいになってるよ」
「は?」
「シャドウバイト一発のMPが15だ。そんで君の今のMPが15万ほどある。ちなみに俺の10倍ほどだ。だから魔法が撃てなくなる心配はしなくていいんじゃないかな」
「そ、そうですか。私のMP?ですか、がそんなことに・・・」
話しているうちに奴らの死体はダンジョンに吸収された。血も装備もすべてが消えている。
改めてこの施設の恐ろしさを感じるな。完全に化け物の腹の中に等しい。
「あ、今のでまたオリハルコン作れたりしない?」
「ふふっ見てみますね」
笑われてしまった。あまりにも現金だったかな。
やつらはなかなかおいしかったようでオリハルコンの塊をもう一つ得ることができた。
ただ・・・今度の奴は神鉄・竜って書いてあったよ。ドラゴンを素材にした装備をしてたからだね!
「なあなあ、このコア本当に魔人族が作ったの?正直やばくない?これ持っていって素材食わせたら、今までにない鉱物とかいくらでも作り出せるんじゃ?」
「・・・。私も当時は魔人族の命運がかかっていたのであまり深くは考えずに使っていましたが、このコアおかしいですよね。これの中心部分は父様がどこかから持ち込んだものなのです。父様はこんなものをどこから・・・」
「まあ、もし生きてたら聞いてみよう。そのためにも魔人族を探さないとね。
さあ、行こうか」
「ありがとうございます。はい!」
さて、大丈夫だとは思うがダンジョンからワープ機能が止まる前に脱出するかね。




