29話 ダンジョンの謎
拘束されたままのオリヴィアを見るとぽかーんと口をあけて固まっていた。
「りゅ、竜人族になった?」
「おう、これが俺達が見せられる秘密だな。それで大人しく話しする気になった?」
「・・・ええ。あなたのお話は俄かには信じられませんが、ひとまず害する気がないというのは理解しました。それにこの状態で逆らっても勝てる気がしません。降伏します」
「そうか、じゃあまずオリヴィアさん?がここに封印?されてた理由からかな?」
落ち着いたようなので拘束を解除する。
「どうして私の名前を知ってるんですか・・・?」
あ、鑑定の話してなかったわ。
「あーさっき言った神様にそういうスキルを貰ったのさ。それで封印されてたのはなんで?」
「え、あ、はい。簡単に言えば人間との戦争に負けたからです。この施設は魔族の訓練施設ですが、実は人間との決戦用の施設でも有るんです。有事の際には防衛機構を起動してここへ避難する手はずでした。しかし人間の進行が思ったよりも早く、この施設の完成が間に合わなかったのです」
ふむ、つまりここは要塞だったのか。
「そのため魔王はここを足止めの施設とすることに決めました。人間は欲深いですから、いい物が手に入ると知ればこの施設に篭るだろうと。あ、失礼しました」
「いや、実際そうだから気にしないでいいよ。一攫千金を夢見てここに潜ってる人間の一人だからね」
俺が怒らなかったことが意外なのか、びっくりした顔をした後一礼してから彼女は話に戻った。人間って・・・。
「この施設はコアと呼ばれる魔道具がインプットされた指示に従って動かしています。しかし当時作られたコアではこの施設を動かすには処理能力不足でした。10層程度までしか稼動させられなかったのです」
10層とはいえこんな大規模施設を動かしてたんだからすごいよなぁ。魔物を召還する原理とかちょっと気になる。
「そこでコアの処理能力を補うために魔人族をコアに繋ぐ事にしました。私は先ほどのお話にあった力でご存知かも知れませんが、魔族の治めていた国、ファルジアの第四王女です」
うん、知ってる。
「私は姉妹の中でもいろんな魔法が使えました。また特に空間と時を操る魔法に長けていましたのでこの施設の補助者として最適だったのです」
「なるほど、つまり君は魔族でありながらこの施設の核だったと言える訳だ」
「その通りです。本当はもっといいコアを開発したらいずれ救助がくるはずだったのですが・・・人間のあなたが来たということは失敗したのでしょう。ここが人間のものになってから何年たったかご存知ですか?」
「そっちはわからないけど、封印期間は64年ってなってるよ?」
「そんなことまでお分かりになるんですか?まさに神様が与え給うた力ですね」
そう言いながら彼女は・・・泣いていた。
「やはり父様たちは失敗したようです。10年で必ず救助に来るからと、そう言ってたんですけどね」
アイラのほうをちらっと見ると、気まずそうな顔をしていた。
「魔族の王族の方は大戦でほとんどが、その・・・」
「やはりそうですか。ここに封印される時、そうならないといいなと思っていましたが・・・」
60年ぶりに目覚めたら天涯孤独とはなんとも・・・。
結局のところこのダンジョンは50層までしかないそうだ。それが彼女がコアにくっついた時の限界だったと。100層ってのはなんだったのかと聞いたら計画はそうだった、とのこと。人間が手に入れたのは企画書かなんかだったのかね。
「核から開放しちゃったけど、このダンジョンどうなるの?」
「えーっと、たぶんそのうち処理しきれなくなって機能停止すると思います。長いこと稼動してたのでコア自体も成長はしてると思いますから、しばらくは大丈夫だと思いますが、いずれ崩壊するでしょう」
「なるほど。ここへはオリハルコンが欲しくて来たんだけど、今のうちに作り出したりできない?」
「あー魔力があればできると思いますよ。ちょっと待ってください」
魔力があれば・・・?どっかの誰かさんがついこないだ大量に使った気がする。
「んん?なんかえらく少ないですね。この残量ですとそんなにたくさんは作れませんが・・・。一応作れますよ。ただ・・・」
「ただ?」
「ダンジョンの崩壊が早まります。具体的に言うとこれをやると今日中に機能が止まり、明日には崩壊が始まります」
「ふむ、別にいいんじゃない?とっといてもいい事なさそうだし。君がこのダンジョンに居続けるとかなら諦めるけど」
「いえ、もう助けも来ないでしょうしここに留まる事はありませんのでお気になさらず。では練成いたしますね」
彼女はそういうと部屋の一番奥の壁面に触れた。そこにコアがあったようだ。
壁かけ式のPCみたいだ。ぽちぽち操作してると石造りの台座の上に真っ黒な金属?の塊が出てきた。
「これがオリハルコン?墨のような・・・」
「あら?おかしいですね?オリハルコンというのは金色に近い色だったはずですが・・・」
んん?ヘルプミーゴッド!
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神鉄・闇
オリハルコンに闇属性の魔力が強く注がれたもの。闇魔法との親和性が高い。
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「・・・ということらしい。魔族の作ったコアだからかな?」
「かもしれません。聞いたことのないものですが、確かにこのコアを作る時にはいろいろな部分で闇魔法が使われているらしいですから」
「ふむ。これ貰ってもいいんだよ・・・ね?」
「ええ、私には不要なものです。このコアはもう役には立ちませんし、思い出として欲しいですけどいいですか?」
「ああ、いいよじゃあこれは俺がも!?」
急に後ろで膨れ上がった殺気に体を捻る。間一髪、背中を狙ってきた短剣をかわす。しかし、かわしきれずわき腹にかすり傷を負ってしまった。
「ちっ俺の奇襲をかわしやがるとは、つくづく癇に障るぜ」
ダガーを持った盗賊風の男が毒づく。その後ろから他の連中もいきなりその場に現れる。
あのダガー俺の血以外の液体で濡れている。毒だろうか。
「どうやってここまで来た?お前達程度じゃここに来るまでの魔物は倒せないはずだ」
盗賊風の男と入れ替わりにマテウスと名乗った男が出てくる。
「俺たちを舐めてもらっちゃ困るな。お前こそ、どうやってこのダンジョンをクリアしてたのかと思ったが、その魔族とくっついてたとはな。人間でありながら魔族や竜人族と共謀するとはくずめ」
ああ、ずるして進んでたと解釈したわけか。
「俺たちを殺してどうする気だ?俺たちがダンジョンに入ったのは目撃されてるぞ?」
「そんなものダンジョンで死んだことになるだけさ」
「そうか、それはよかった。お前らを殺しても大丈夫って訳だな」
「くっくく。おめでたい奴だぜ」
にやにやと仲間内で笑いあっている。気持ち悪いわー。
「なにがおかしい?パーな頭がさらにパーにでもなったか?」
「つくづく口の減らない野郎だ。気づいてないようだから教えてやるよ。お前がさっき受けた短剣には毒が塗ってある。5分程度で効き始め、魔物でも動けなくする奴だ。お前はもうじき動けなくなるんだよ!」
ふむ・・・自分を鑑定してみるが、特にそのような毒にかかった形跡はない。どうやら俺の耐性以下の効果だったようだ。傷も当然のように光魔法で治療済みだ。
それにしても人を殺すってのにずいぶんと嬉しそうだ。狂人もいいところだな。
喋り易いように挑発してるとはいえ、多くの人の尊敬を受けているSランクパーティの実態がこれじゃな・・・。
「それでどうするんだ?俺が動けないようになるまで待つの?なんだっけ、Sランクパーティ”雑魚”の皆さんだったかな?」
「殺す!」
本当気が短くて助かるわー。




