24話 初仕事
22階に進んでみるも21階とほぼ同じ一面の砂漠という光景が広がっていた。
これが29階までずっと続くのだろうか。これはこれで拷問だな。
この階層から出てくる新種の魔物はワームらしい。
砂中に隠れて潜み、奇襲を仕掛けてくる。
またサイズが巨大なため倒すのに苦労するとのことだ。
いつもだったら空間魔法で感知するところなのだが、今回はスキル獲得のため空間魔法を使っていない。ギルドにいた人の中に気配探知とか、隠密という便利そうなスキルを持った人がいた。
奇襲対策ができるスキルはいくつあっても困らないので早いうちに取っておきたい。
俺達二人は慎重に気配を探りながら、足だけは高速で動いていた。
「ご主人様、こんなに走ってていいんですか?気配探知を覚えるというお話では?」
「えーいつ出てくるか分からない奴をじりじり待つのとかめんどくさいよ。
こうして走ってれば向こうから来るって」
アイラがはあと呆れたようなため息をつく。
「やり方が乱暴すぎませんか?」
「やーでも奇襲で優位とるタイプには俺達のステータスなら相性いいから大丈夫だよ」
「まあ、そうですけど・・・」
そんな無駄話をしていると俺達が通り過ぎた所が少しもこっと盛り上がる。
「来た!」
ずざざーっと急ブレーキをかけて止まる。
どうやら俺達の移動速度が速すぎて目算を誤ったようだ。
通り過ぎた後に出てしまっては奇襲にならないぞ!
俺達が止まると同時にどばーんと砂をぶち上げてワームが出現する。
ヤツメウナギ?みたいな牙のたくさん生えた口をしたミミズだ。グロイ、キモイ。
このダンジョンって生理的に受け付けないのばっかりで作られてるんじゃなかろうか。
そういうのが出てきても取り乱さず冷静に戦え!ってことだろうか。いらねーよそんな親切!
口を大きく開いて覆いかぶさってくる。丸呑みするつもりのようだ。
俺が右に避けたのと同時にアイラが左に避ける。そのまま二人して突っ込み、首だか胴だかわからないがとりあえず切りつけた。奴の首?が分厚すぎて千切れることはなかったが、大量の体液を撒き散らして倒れた。
「うーん、気配分かった?」
「いえ、いまいち」
「これ繰り返していくしかないか」
22階、23階と同じことを試み、やっとのことで気配探知を取得。
それとは別に砂煙を起こさないようにそーっと高速で移動する足捌きも覚えた。
『縮地』というスキルになったので、これからは高速移動しても目立たないぞ!
ワープのある25階までその日の内にたどり着くことができた。
一番最初に暑さに困らされたぐらいで他に特に困難なところはなく、このペースなら明日はボス戦かな。
たどり着いたギルドホールには昨日と違って人もあまりいなかった。横の酒場では皆飲んでるけど。
「これ、売りたいんですけど」
早速王冠と杖を持ち込んでみる。
「はい、買取ですね。これは・・・なんですか?」
あれ?前は大金で売れてたっていうのに知らないのか?それとももう扱ってない?
「20層のボス倒して得た王冠と杖ですけど・・・」
「え!?あれは倒したら崩れちゃうって話では!?」
「杖を砕かずに浄化で倒したんですよ」
「しょ、少々お待ちください。私では判断がつきませんので」
えーめんどくさい早く売って立ち去りたいんだけど。
お姉さんが奥に引っ込んですぐに「なんだと!」という大きな声とともに、ばーんという音を立てて解体担当のおじいちゃんがすごい勢いで出てきた。
「あの王冠を持ち帰ったってのは本当か!?」
「これです」
「ううむ、生きてるうちに再びみれるとは!浄化して倒したんだな?」
「そうですよ」
受付嬢さんがすごい顔してぶつぶつ言ってる。どうやって2個もとか、普通の浄化じゃ効かない筈なのにだってさ。まるっと聞こえちゃってるぞ。
「2個あるってことは一日で2回倒したのか?あいつはタフだったろう?」
「え?ええ、まあそうですね」
一瞬で死んだとは言えない。さらには試しうちだったなんて。
「それでこれを売ってくれるってことでいいのか?」
「ええ、あとこれと(アイラの銀のインゴット)これ(昨日売り損ねた金のインゴット)、それとこれ(ミスリルのインゴット)もお願いします」
コト、ゴトン、ゴトン カラン
なかなかインゴットが重たいね。もってたの俺じゃないけど。
銀が前に出て来たときのおっちゃんの反応は特になかった。ちろっと見ただけだ。
金の時は片眉をあげていた。ミスリルで目とあごが開いた。あと俺の王冠落とした。
「あの、王冠落とさないでください」
「なっ、なっ、なっ・・・!」
あれ?一発ドロップだったからそこまで希少でもないのかと思ったんだけど。
ていうかおい、俺の王冠。落としたことに気づいてないわ。
「お前さんたち30層のボスを倒したのか!?」
「いえ、まだ20層までですよ」
「じゃあなんでミスリルのインゴットなんてものが出てくる!?そんなものがドロップした報告はないぞ!?」
ものすごい剣幕だ。つばを飛ばさないで欲しい。希少ドロップを引いたらしい。やっと俺のありあまる運が仕事したわ。
「金は10層のボス、銀とミスリルは20層からですよ」
「それは本当か!金は一度だけ報告があったからそれ以後たくさんの人間が挑戦したんだが二度目はなかった。結局眉唾ということで処理されたんだが。いやそれよりミスリルのインゴットが20層から出るなんて話は初耳だ。今までも一度もそんな報告はなかった。杖も王冠も無事だからか?昔と違って今は皆杖を砕いてしまうからな。検証のためにSランクパーティを導入するわけには行かないし、いやでもミスリルの価値を考えたらそれぐらいするべきか?これはギルドマスターを焚きつけてこないといけないな。よしこうしちゃおれん、おいギルドマスター、ギルドマスターいないのか。おいガラン!ガラーン!!」
おっちゃんは一人で怒涛のしゃべりをした後、俺のミスリルインゴットをもって去っていきましたとさ。
受付さんぽかーん。俺とアイラもぽかーん。
「あの、まだ会計してもらってないんですが・・・もってっちゃいましたけどどうすれば?」
「はっ、ど、どうしましょう。と、とりあえずここではなんなので残りを一度しまっていただいて、ギルドマスターの部屋にお願いします。話をつけてきますので。」
うへ、めんどくさい展開になってしまった。でもさっきのおっちゃんが騒いだせいで酒場のほうからの注目がすごい。ミスリルだってよ!って感じで盛り上がってしまっている。
諦めるしかないか。
「いいそうです。ご案内します」
受付さんに連れられギルドマスターの部屋へ。こういうのってだいたいなぜか2階にあるよね。
コンコン
「お連れしました」
「おう、入れ」
「失礼します」
「おう、ドーチの奴が失礼したな」
そう言って笑ったギルドマスターは筋骨隆々のおじさんだった。ステータス的には700ぐらいしかなくそんなに強いわけではないが、見た目の威圧感がすごい。
「その方ですよね?」
未だに興奮しているのかドーチさんはミスリルインゴットをハアハア言いながらジーッと見つめている。変態か。
「そうだ。名乗ってすらいなかったか。おいドーチ!いい加減現実に帰って来い」
「ギルドマスター!20階に双龍の方達を派遣してくださるんでしょうな!?」
「ああ、ああ。わかったからそのインゴットから手を離せ。エミに聞いたがまだ買い取ってないんだろう。そしてお前は仕事にもどれ」
「くっ。必ず買い取ってくださいよ!」
そう言ってドーチさんは出て行った。出て行くときもどたどたと慌しかったな。
「騒がしくてすまんかったな。あいつはスイッチが入るとうるさくてな」
「いえ、大丈夫です」
「ただあいつに乗るわけじゃないが、このギルドも財政難でな。珍しいものが出たというのは俺もうれしい」
「ギルドマスター」
書類を抱えたお局さんって感じの眼鏡をかけたお姉さんから険の篭った声がかかる。
「ん?ああ、すまん余計なこと言ったか。お前達は・・・最近この町に来たばかりなのか」
「ええ、いい装備を求めてやってきました」
「3日で20層のボス戦が終わってるとは化け物か?」
「ギルドマスター!」
「あ、わるい。それで王冠が2つと杖が2本、金、銀、ミスリルのインゴットを売ってくれるって話でいいのかな?」
「はい、かまいません」
「そうか。査定は明日には出しておく。帰りに窓口でエミに渡しておいてくれ。それと20階のボスの話何だが・・・」
11階からの浄化での経験値稼ぎも含めて情報を話した。浄化を使い慣れたほうが威力が上がるという話は納得してもらえた。他の攻撃魔法でも同じ事が起こるのでありえる話だと。
今まで試していなかった理由は、光魔法が使える人間が貴重で万が一ゾンビエリアで死にでもしようものなら割りに合わな過ぎるということらしい。これらの情報は情報料をあとで払ってくれるそうだ。いくつかのパーティに浄化を鍛えさせ、ボスアタックさせるつもりらしい。
それほどミスリルが欲しいようだ。引き換えで俺の目的である鉱物関連の話を聞かせてもらえるといいな。




