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23話 作業

結論から言うと俺は浄化を使えるようになった。

というか同じことをすでにしていた。毒や麻痺の耐性を得ようとした時に光魔法で回復していたが、それが浄化だった。自分では毒でおかしくなったところを治すというつもりだったのだが、体に入った毒物を浄化していたらしい。


練習を始めて割りとすぐそれが理解できたので、寝るまでの時間を使ってアイラにも教えた。そのためにわざわざ麻痺毒を魔法薬のお店に行って買ってきた。ちょっとした小瓶が銀貨5枚もしてびっくりだ。高いなんてもんじゃないぜ。ただ将来的にも幽霊系の魔物と出会うかもしれないことを考えたらケチるところでもなかったので払った。

新しいことをするためにはお金がかかるものだとはいえ、なかなか簡単にお金が飛んでいく。使い切れないほどのお金を得るテンプレ展開に早くお目にかかりたいものだ。


麻痺毒を薄めたものをアイラに飲ませ、自分で治させるというのを何回か繰り返しアイラも浄化が使えるようになった。最後のほうは耐性がついてしまい、麻痺毒の効きが悪くなって原液で飲んでたけど。

耐性もついて、浄化も覚えて、お得な訓練だったな!


ちなみに最初にアイラに麻痺毒を飲めと言ったら泣かれた。説明不足で勘違いさせたらしい。反省。


今日はとりあえず20階まで行き、情報収集と昼食を食べに戻ってくる予定だ。

この階層は俺達にとって強い敵は出てこないが、その代わりに厄介なものが多い。

どうせもうじき情報収集のしようもなくなるのだから、ある情報はうまく使おう。




15階から上は今まで出てきた魔物が再び出てくるのがほとんどだ。

光魔法で明かりをつけていると皆面白いように避けていく。昨日逃げ回ったことを考えると苦笑せざるを得なかった。


19階では浄化の練習もかねて明かりは消した。するとゾンビ、幽霊、スケルトン、リビングアーマー(新出)などがぞろぞろ、ぞろぞろとどこにいたのかというぐらい沸いて出てきた。光魔法に弱すぎるという点を除けばとても恐ろしいダンジョンだ。これを考えた魔族は絶対趣味が悪い。


・・・もしからしたら魔族は光魔法が使えなかったのかもしれない。そうじゃないとこんな重大な欠陥がある訓練施設はおかしい。戦いを簡単に避けれてしまったら戦闘訓練にならないからな。


戦闘というか浄化作業はスムーズに進んだ。


浄化、浄化、浄化、浄化、浄化


光魔法を使いながら歩いていくだけだ。範囲魔法としてぶちかませば、幽霊は消えるし、他の奴は糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。そしてこいつらはとてもいい光魔法のレベル上げになる。

俺はLv4、アイラもLv3まであがった。この世界の魔法の上げづらさを考えるととても有益だろう。


20階に無事ついた俺達は予定通り一度外へ。昼食を簡単に済ませてから、ギルドで攻略情報を見る。

狙い通り昼食時は空いていたのでしっかりとボスの情報を読むことができた。


「ボスはリッチで、フロアに出てきた敵を召還してくるっと。ただし、光魔法を浮かべておけば襲ってこない点は変わらないのか」


がばがばのボスだな。とりまきを召還するボスなのに取り巻きが無力とかだめだめじゃないか。


「リッチも隙を突いて杖を砕けば終わりと」


「ここまで来ると可愛そうね。このボス・・・」


「だなぁ。攻略法があるにしてもここまで無力化されちゃったらなぁ」


真面目にリッチを倒していた頃は頭についてた王冠が高値で売れたそうだ。ただ杖を砕くこの攻略法をすると王冠も一緒に砕けるため売れるものは宝箱の中身だけだということだ。杖を砕かずに倒そうとすると、闇魔法を連発してくるためなかなか大変なボスらしい。


11階からの戦闘を全部避けてきたようなパーティではまともなボス戦は厳しいだろう。なにせ10階分の経験値を丸々ロストしているのだ。レベルが10階のボスから変わらないとなれば勝てるわけもない。


21階からの攻略法をチラッと見てみたが、ここは砂漠地帯らしい。ここでの戦闘が厳しいと感じるようなら10階のボス戦を繰り返すといいらしい。レベルがいくつかは分からなくてもレベル上げのようなことをしているようだ。ボスってなんだろうな。


金銭的なことを考えてもボスの王冠と杖は壊さないでいきたい。


「とりあえず浄化魔法を試してみようと思うんだけど」


「私のならともかくご主人様のならそれだけで倒せると思いますよ」


「できればそうだといいな。問題は杖と王冠が砕けないかだよね」


「くだけたらまた再挑戦して正面から叩き潰せばいいのでは?」


「かな?雑魚葉無力化して、闇魔法はよければいいしね」


というわけで、20階に戻ってきた。さあボス戦だ!




「浄化!」


終わった。王冠と杖もちゃんと残った。お手軽だし毎日一回倒そうかな。


「一瞬で終わりましたね。ご主人様のステータスありきとは言え、ひどいものです」


「こんなんでも経験値はいるから・・・インチキだよなぁ」


「いくらで売れるか知りませんけど、お金稼ぎもばっちりですね。私も浄化を試していいですか?」


というわけで2周目。リッチはアイラの浄化に耐えた。


グゥオオオオオオオオオ


という断末魔のような声を出したものの耐え切った。

奴は反撃だ!というような感じで杖を構えたが、アイラの二発目の浄化で消え去った。


・・・


せっかくカッコいい感じで杖を構えたのに披露するチャンスはなかった。今の戦闘(笑)でアイラの浄化は4になったので次は耐えられまい。うん、可愛そうなやつだった。

明日も会いに来てやるからな!


宝箱は俺の分はミスリルのインゴットだった。ついにファンタジー鉱物をゲットしてしまった。

20階でこれが出るならオリハルコンとかも夢じゃない。これ使ったら魔法剣とかできるのかな。

ファイヤーソード!とか憧れるよなぁ。持ち手が燃えるのかが気になるぜ!


アイラのは銀のインゴット。ただ、手のひらサイズの小さい奴だった。俺との差がひどい。



俺達はその足で21階に進む。

ギルドの情報どおり砂漠だ。真っ赤な蠍や真っ黒なムカデのようなやつが日の照りつける砂漠をうろうろしている。正直、きもい。とりあえずあの嫌なにおいから開放されたのがとにかく嬉しい。


歩いてるだけで汗がだらだら出てくる。蠍を倒すために動こうものなら汗びっしょりだ。

一撃で終わるからまだいいけど、それでも暑い。


アイラは火竜人だからかぜんぜんへこたれていない。


「暑くないの?」


「ええ、特には・・・」


「くそーこれが種族の差か」


等と文句をたれていると、遠めに別のパーティが見えてきた。ローブをはおり、顔もばっちり覆っていた。俺?俺は帽子すらかぶっていない。


「ご主人様もああいう格好をしてしのがれては?」


「いや、こうしてたら耐性つかないかなーって。特に今危険があるわけじゃないから耐性取れるなら早めに欲しい」


「なるほど」


さらに10分ほどうだるような暑さの中で過ごしていると急に暑さが和らいだ。


「お?ついたついた。これでここの暑さも大丈夫だ」


このマップは遠くに階段があると思しきレンガ造り?の建物が見えている。

あそこを目指してまっすぐ進めばいいから気持ち的には楽だ。蜃気楼じゃないよな?

どこまでも開けたマップなので魔物がこちらを見つけてちょいちょい襲ってくるが、特に問題なく処理できている。蠍の尻尾は売れるとのことなので切り取って持って帰る。


「それにしても2m以上のサイズの蠍かぁ」


「ご主人様の世界ではこの大きさじゃなかったんですか?」


「20cm・・・えーと手のひらに乗るぐらいかな」


「それはまあ、ずいぶんと差がありますね」


「だよなぁ。こんなのに刺されたら毒とか以前に物理的に死にそうだ」


こんなサイズの蠍が持つ毒腺が欲しいとか、なにに使うやら。

こんなのが一匹でもいたらほとんどの生物が捕食されそうだ。


他の人間に見つからないように一応注意しながらではあるが、見えてる建物を目指して砂漠を爆走し、早々に21階を走破する俺達だった。

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